特集2でご紹介した『火の鳥 絆編』をプラネタリウムで見た後はやっぱり、原作の『火の鳥』を読んでいただきたいですね! ということで、今月は『火の鳥 未来編』をご紹介します!
まさに、「生命の誕生から消滅まで」を描く、あまりのスケールの大きさに読み終わった後はしばらく呆然としてしまうほどの衝撃的なこの作品、第1作「黎明編」とは変わって遠い未来が舞台です。
『火の鳥』世界の巨大な時の円環の衝撃をぜひ味わってみてください!
「火の鳥 未来編」は、雑誌「COM」1967年12月号~1968年9月号に、「火の鳥 第二部」として連載された(第一部は黎明編)。西暦3404年の未来を舞台に、人類の滅亡と、その後の新人類の誕生と進化を、何十億年にもおよぶ時間の流れとともに描いた、壮大なSF作品。
西暦3404年、人類は荒廃した地上の世界を捨て、地下に築いた5つの大都市で、電子頭脳の命令を受けながら生活をしていました。エリートの宇宙飛行士・山之辺マサトは、恋人である不定形生物ムーピー・タマミの射殺命令を受け、地上のドームに逃亡中でしたが、その時5つの大都市は全面戦争に突入、全て消滅してしまいます。その後、マサトは火の鳥から「地球の復活」を託されると同時に不死の体を与えられ、生命の誕生から消滅までの営みを、何十億年ものあいだ見続ける事となるのですが…
手塚ファンには今更説明の必要もないとは思いますが、「火の鳥」の中でも特に人気の高いエピソードがこの「未来編」です。主人公のマサトをはじめ、強烈な悪役を演じるロック、不定形生物ムーピーのタマミ、地上のドームに住む世捨て人の猿田博士とその助手ロビタなど、登場人物達がそろって魅力的であるのはもちろんですが、「宇宙生命」という明確な生命観、そして作品全体を覆う終末感と再生への希望が、あたかも重厚で質の高いSF映画を観ているかの様な充実感を読者に与えてくれます。特に作品後半の、気の遠くなるような時間経過の描写は、たとえあなたが数多くの漫画作品を読んできたマニアだとしても、めったに味わう事のできない壮大なスケールの漫画体験を与えてくれるでしょう。
なお、ロビタはこの「未来編」がデビュー。復活編での圧倒的な存在感に比べると、まだまだ脇役扱いですが、主人の猿田博士を強い調子でたしなめるなど、すでに「人間臭いロボット」というキャラクターは確立しています。