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虫ん坊 2012年02月号 特集1:舞台『陽だまりの樹』記者会見のもよう

「ブラック・ジャック FINAL」ジャケット

左から、ゼネラルプロデューサー前田三郎さん、伊武谷万二郎役吉川晃司さん、手塚良庵役上川隆也さん、演出・脚本樫田正剛さん。

  手塚治虫が自らの曽祖父を主人公に、江戸末期を描いた長編漫画『陽だまりの樹』。歴史上の著名人や有名な事件なども織り交ぜつつ、自らの「ルーツ」に迫るこの作品が、2012年4月、舞台化されることになりました!
 主演は、2006年NHK大河ドラマ『功名ヶ辻』の主演、山内一豊役が記憶に新しい、テレビでもおなじみの実力派舞台俳優、上川隆也と、ロック歌手として活躍し、近年ではミュージカルにも挑戦した吉川晃司のダブル主演。個性の強いお二人の演技が楽しみな作品となりそうです!
 公演は今年4月13日からの東京・サンシャイン劇場を皮切りに、大阪・名古屋での講演が予定されています。今月の虫ん坊では、東京・六本木で行われた本作の制作発表記者会見のもようをレポートします。

 関連情報

舞台『陽だまりの樹』 公式サイト
上川隆也 公式サイト
吉川晃司 公式サイト
樫田正剛 オフィシャルブログ
舞台『陽だまりの樹』記者発表が開かれました。



◎良庵・万二郎のW主演! 主演の御二人からのコメント

『陽だまりの樹』といえば、やはりこの二人の主人公のキャストが気になるところ。
報道発表などですでにたくさんの方がご存知でしょうが、主役は手塚良庵を上川隆也さん、伊武谷万二郎を吉川晃司さんが演じられます。


ブラック・ジャック カルテ11 ゆりえ

上川隆也さん。手塚治虫の曽祖父にして、女好きで“軟派”な町医者・手塚良庵を演じます。ちなみに、吉川さんと上川さんは同い年。今回の記者会見が初対面!だそう。

手塚良庵役 上川隆也さん

●手塚良庵というキャラクターについて

良庵のような、女好きな、軟らかいタイプの役柄を振っていただくことはあまりなかったので、新鮮な気持ちで受けました。楽しみです。今回は殺陣もありませんし、体力的な心配はありませんので、より、良庵の人となりに踏み込んだ演技が出来ればと思っています。


●吉川晃司さんとは初共演となりますが。

何よりまず、うれしかったのは、吉川さんと僕が同い年だ、ということでした。

 同世代として、舞台の上以外のところでのコミュニケーションが楽しみです。それは、まちがいなく舞台の上にも影響してくることでしょうし、吉川さんがどのように万次郎と相対するのか、というのを間近に拝見できることが、とても楽しみです。

 音楽の世界でキャリアを積んできた吉川さんと、舞台一本でやってきた僕との異文化交流という意味でも、御互いにいい影響を与え合えることができればうれしいです。

 

●どんな方に舞台を見てほしいか

どんな方にご覧になっていただくかは、吉川さんと一緒です。エンターテイメントですから、いろんな方に来ていただきたい、と思います。

 手塚治虫さんは、一つの週刊誌に書く際に、必ず3つのお話を作る、というエピソードをある本で読み、腰が抜けるほどたまげたんです。それだけの努力をした方だからこそ、末永く愛される作品を書けたんじゃないか、と。『陽だまりの樹』もそんな作品だと思いますし、そういう作品に僕らがどのように向き合っていくか、を出発点としていきたいです。もちろん、楽しんでいただくことが一番ですけれども。


ブラック・ジャック カルテ11 ピノコ

無骨者の武士・伊武谷万二郎を演じる吉川晃司さん。ストレートプレイ(ミュージカルなどとは違う、純粋な演劇のこと)は初めての出演です。

伊武谷万二郎役 吉川晃司さん
●伊武谷万二郎というキャラクターについて

世の中の矛盾とか、それに対する憤りを溜め込んで、自分でまわしているあいだに、己の遠心力で、どっちにとんでいくかわからなくなる、というような感じがでるといいな、と。

 僕は、ストレートな御芝居は初挑戦なので、あまり偉そうなことはいえないですが。ひたすら謙虚にいきたいです。上川さんが知力面を担当して、ぼくは体力面担当、みたいなかんじで。


● 初挑戦となる、ストレートプレイについて

ミュージカルはやらせていただいたことがありますので、そこで覚えた感覚は使えるのかもしれません。コンサートも、お客さんとのやりとりで構築していくものですが、そこはおなじことではないか、と思います。

 あとは…なるだけセリフが少ないほうがいいかな、と(笑)。

とにかく、余計なものを持ち込むとよくないと思うんですよね。ですから、無心で、真っ白いキャンバスになったような気持ちで挑みたいです。

 

●どんな方に舞台を見てほしいか

 それはもう、老若男女問わず、見てほしいと思っています。

 今、日本はとても不安定な状態で、社会に対する憤りを抱えている方も多くいらっしゃると思います。演劇のようなエンターテイメントは、社会に対するメッセージを伝えるには良いものだと思っています。さまざまなメッセージや、エネルギーを、どうやってエンターテイメントに生かしていけるかですよね。

 


ブラック・ジャック カルテ11 高尾

 

質疑応答のコーナーでは、報道陣からのいろいろな質問がありました。

Q:(吉川さんに)舞台の稽古は長丁場になると思いますが、気をつけたいことはありますか?

吉川:まずは、セリフを覚えないと…(笑)。ミュージカルの時にこうやって行けば覚えられるんだな、という感覚はわかるようになったと思います。あとは、筋トレでしょうか。

 ライブなどでは、キャリアも長いですので、緊張していてもその緊張感と戯れる感覚が身についてきましたが、舞台は初めてですので、まだそのあたりの感覚がわからないですから、かなりこっけいなことになるんじゃないか、と思いますよ。

 でも、そこで初恋の気分というか、自分が驚くような自分に合える、という経験ができるということは、人生にとってはとてもいいことだな、と思います。

そういう風に考えないと、ほんとうにこちこちになっちゃいますからね。

 

Q:(上川さんに)舞台の先輩として、吉川さんにアドバイスなどはありますか?

上川:アドバイスなんて、おこがましいですよ…。むしろ、吉川さんがなにをなさるのかが、僕の楽しみになっています。皆さん、他の役者さんも、吉川さんから刺激を受けると思います。何をインスパイアしてくださるのかが、楽しみでしょうがないです。


Q:(お二人に)好きな手塚作品はありますか?

上川:『ブッダ』などの長編で、崇高な作品も好きなのですが、いつまでも忘れられないのが、『タイガーブックス』というシリーズの「タイガーランド」という短編です。孤島にすむ姉弟の下に、虎の子どもが海から流れ着いてくる、という作品です。

吉川:あまりたくさんは読んでいないので…。『アドルフに告ぐ』とかでしょうか。



◎脚本・演出、ゼネラルプロデューサーからのコメント

脚本・演出を手がける、2000年の舞台『七色インコ』でも手塚作品を手がけた樫田正剛さんからは、作品内容について、また、本公演の企画を手がけるゼネラルプロデューサー前田三郎さんからは、この公演の目指すメッセージについて、コメントがありました。

ブラック・ジャック カルテ12 L

脚本・演出を担当される樫田正剛さん。手塚作品の舞台化は2000年『七色インコ』も手がけていらっしゃいます。

脚本・演出 樫田正剛さん

 

 タイトルの『陽だまりの樹』というのは、樹齢300年の桜の老木が、陽だまりの中でぬくぬくと立っているように見えて、中身がだんだんと腐ってきている、という姿をさしています。これは実は、当時の徳川幕府をそんな老木の姿になぞらえているんですよね。でも、それはもしかしたら、今の日本にも似た姿のかもしれない、と思います。

 過去にも、手塚作品の舞台化を手がけましたが、手塚先生の作品に共通することは、怒りのメッセージだと思っています。何に対する怒りか、といえば、政治に対する怒りだったりすんですね。今回の作品では、それに僕は非常に共感を覚えまして、その部分をうちだして行きたい、と考えています。

 手塚作品には、読んだ一瞬が楽しいというより、100年先を見据えたメッセージを訴えているところがあると思います。そのメッセージは強くて、読めば読むほどよく味わえるようになってくるし、今から100年後でも通用するメッセージだとも思います。

吉川さんや上川さんが演じる主人公たちが、手塚先生のメッセージの代弁者として大いに吼えてほしいな、と。

 


本作品のプロデューサー、前田三郎さん。「震災後、日本のエンターテイメントを危ぶんだが、まだまだいけるんじゃないか、と思っている」と語りました。

ゼネラルプロデューサー 前田三郎さん


 震災が起きた後、3月17日に仙台に訪れた際、駅前にギターを一本持った男性が歌を歌いだしたのを、あっというまに200人ぐらいの方が集まって、聞いていらっしゃったのを見ました。震災後、日本のエンターテイメントはお客が来なくなって、終わってしまうのではないか、と本当に心配しましたが、彼の歌をを聞きながら、「まだまだ大丈夫だ」と思ったのです。被災された方々がエンターテイメントを楽しんで、心の糧にされている様子を見ていますと、われわれができることはまだいっぱいあるな、と感じています。

 この舞台の企画は約2年ほど前から立てていました。どちらかというと男くさい御芝居になると思います。手塚先生がおっしゃっていた、「それぞれの時代に生きている人は、それぞれの役割を持っています。その役割を全うするために精一杯、一生懸命生き抜いてほしい」という手塚先生の言葉そのままを舞台にぶつけたい、と考えて制作いたします。

この舞台を見て、お客様に元気になっていただき、明日の日本が、活力のある国になるように、良い御芝居をとどけたいと思っています。

 

 舞台は今年の4月13日から! どうぞお楽しみに!!




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