今月、6月号の虫ん坊は、7月30日からWOWOWにてドラマ放送が決定した『人間昆虫記』をご紹介いたします!
ちょっと大人向けな内容のこの作品、一人の女性、
ドラマ放送前にぜひ原作を読んでみてください!
解説:
(以下手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『人間昆虫記』あとがきより)
この物語をかいたのは、新左翼とよばれるセクト同士の反目とか、無差別テロとか、泥沼化したベトナム、そして中国では文化大革命など、さまざまな暗いニュースが新聞、テレビなどを賑わしていた頃です。その一方で、日本の高度成長は、まっしぐらにGNP世界第一位を目ざしてつっ走っていた時代です。
その陰と陽の不条理な時代に、マキャベリアンとしてたくましく生きていく一人の女をえがいてみたいと思ったのです。これをかく以前に、プレイコミックには「空気の底」という短編を載せていましたが、思い切って長編を試みました。
登場人物の名前は、どれにも昆虫をもじってつけてあります。これをかきながら、ぼくはカレル・チャペックの「虫の生活」を思い浮かべていました。
昆虫の世界は、人間社会のカリカチュアだと思います。
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この作品の魅力は、なんといっても主役の十村十枝子のバイタリティ
常識やモラルが通用しない十枝子に、周囲の人間は振り回され、運命を狂わされ続けますが、十枝子は本当に愛する男性・水野さえも出世に利用したことで、空虚な心を抱き続ける事になります。果たして手塚治虫は、十枝子の生き方を肯定しているのか? それとも否定しているのか? それは実際に作品を読んでいただいた上で判断をお任せしたいと思いますが、わがままで子供っぽく、しかし抜け目のない十枝子に、どの程度共感をおぼえるかが、読者の評価をわけるところでしょう。