虫ん坊8月号の「オススメデゴンス」は、新しく始まった「夏休みまんが学校」にちなんで、手塚先生の元祖! 漫画の描き方の秘訣を描く異色漫画、「漫画大学」をご紹介します。
いまや、ノウハウを漫画にして分かりやすく解説をする本はたくさんありますが、「例作」としていくつもの中篇漫画を併録した漫画の描き方の本は、手塚先生ならでは! ちょっと昔風のところもありますが、今にも通じる漫画製作全般に関する基本の心得がぎっしりつまった作品です!
コレを読んで、あなたも手塚治虫を目指せ!
(講談社手塚治虫漫画全集「漫画大学」あとがきより)
昭和二十四年といえば、終戦の廃墟からやっとたちなおった出版社が、粗末な本ながらどんどん単行本を出しはじめ、少年少女雑誌も古顔(「少年クラブ」など)、新顔(「少年」など)が出揃って、どうやら書店がにぎわいだした頃です。
東京では、「漫画少年」という、漫画家養成のための絶好の雑誌が創刊されました。
ぼくは、うかつにもこの本のことを知りませんでした。それで、漫画をかいている少年たちのために、ちょっと毛色のかわった指導書のようなものをだしたいと思いました。
でも、活字による指導書なんて、大阪の赤本出版社では、まずとりあげてくれるけはいはありません。
そこで、漫画の形をかりて、書いてみたのです。
もちろん表面上は漫画の単行本ですから、しぜん漫画の分量は多くなります。結局、指導解説は、つけたしのようなものになりました。
それが、この「漫画大学」です。
…後略…
<Amazon:漫画大学 (手塚治虫漫画全集 (39)) >
昔も今も、指導書や入門書、HOW TO本の人気は根強く、英会話から株式投資まで、さまざまなテーマのアドバイス集がたくさん、出版されています。その人気たるや、どこの本屋にいってもかならずこの類の本が並んだコーナーがあるほど。
今から約55年前の昭和24年、漫画を描きたい少年たちはかなりの数いたらしく、そうなると漫画の描きかたに関する指導書が出てほしいと思うところ。ちょうどその頃発表されたこの『漫画大学』は、手塚治虫がまさにその「漫画の描きかた」についてのアドバイスを漫画で紹介した異色の作品です。
具体的にはどんな事が描いてあるのかと言えば、使用する画材や、絵を描くときに気を付ける事、アイディアの出し方や出版社の選び方などで、当時の手塚治虫がどんな生活をして、どんな事を考えて創作をしていたのかがよく分かります。お手本として載っている短編漫画は西部劇、少女漫画風名作劇、推理ものに4コマ漫画(あとこれに本来は時代劇が加わっていたそうですが、ページの都合上、割愛されているということ、これが後に「ピストルをあたまにのせた人びと」として発表されることになります)と盛りだくさんで、どんなジャンルでもお任せあれの手塚治虫らしい
現在の漫画業界で、この本のアドバイスがどこまで通用するかはさておいて、アイディアの組みたて方や題材の選び方などには、なるほどこんな風にしてあの膨大な手塚作品が生まれたのか、と思うと、なんだか感慨深いものがあります。