手塚治虫は生涯に15万ページもの原稿を描いた、といいますが、その原稿上で活躍しているキャラクターも、ものすごい数になると思います。
アトム、ブラック・ジャック、レオ…ひとりひとりが個性豊かで、なんとも魅力的。
そんな手塚キャラクターにアツい視線を浴びせているのは、ファンだけではありません。デザイナーや、クリエイターの方も同じように、キャラクターに関心を寄せています。
最近、手塚キャラクターとコラボレーションし、新たな魅力を引き出そう、という取り組みが盛んですが、今回絵本として発売された『キュービック・アトム』もそんな取り組みのひとつです。
今回の虫ん坊では、『鉄腕アトム』とのコラボレーション作品『キュービック・アトム』のキッカワケイタさんにお話を伺いました。
<Amazon:キュービックアトム>
ぼくも、「TEZUKA MEETS HAKOSHI」を使いたい、っていう気持ちはすごくあったのですが、出版社の方が、「英訳を目指しましょう」って言ってくださったんです。
英語表記でも書けて、どこに出しても分かりやすいな名前にならないか、と出版社からもいろいろ案をいただいたんですけれども、その中で、『キュービック・アトム』はシンプルですし、「アトム」という名前は世界でも通じるんじゃないか、と。—— 書籍化のお話自体は、はじめはどなたから企画されたのでしょうか。
K:出版社の方から持ってきていただいたお話です。もともと、ぼくが文芸社さんとお仕事させていただいたことがありまして、そのつながりで。
その前には、小説家の山田悠介さんの作品のキャラクターを箱氏のコラボで描いているんですけど、その関係で、ぜひ文芸社から手塚キャラの本を出せないか、っていうので話をいただきまして、即答でもちろんがんばります、と。
—— この本では、オリジナルの「鉄腕アトム」のストーリーが元になっていますね。
K:原作を使った意味としては、「鉄腕アトム」というと、キャラクターはすごく有名で、若い世代から上の世代までご存知なんですけれども、「アトムのストーリーを知っているか」というと、主に若い世代でキャラクターを知っていてもストーリーまでは知らない、っていう方が多いのではないかと。
僕自身、若い世代の方のほうにアプローチする作品を作ってきましたので、僕が頑張れるターゲット層はそこかな、と。
これで興味を持っていただいて、若い世代の方が原作をよむきっかけになればいいな、という思いで描かせていただいています。
—— 帯には「大人が泣けるアトムの本」って書いてありますが、大人といっても20代〜30代あたりがターゲット層、ということでしょうか。
K: そうですね。装丁は絵本っぽくなってますが、文章的には絵本ほど簡単ではないので、中学生ぐらいから読んでもらいたいなと思っています。
—— 一枚一枚の絵がすごく魅力的ですね。
K:一枚絵を見ただけで、ストーリーが見えてくるようなものにしようと思って、かなり張り切って描かせていただきました。
—— 何枚ぐらいの絵を書き下ろしたのでしょうか。
K:40見開きぐらいですかね。
—— 大変だったのでは?
K:よく、大変ですね、とかも言われたんですけれども、手塚プロさんにもご理解いただけまして、本当、僕はそこまでの苦労は感じてないですけど、周りがすごく心配して(笑)。僕はすごく楽しかったんで、そのへんはあんまり。
途中ちょっと、スケジュールもおしりが決まっていて、手塚プロからなかなかオッケーが出なかったときにはあせりましたけど。
—— 今回の仕事で、特によかったことはありますか?
K:僕、フリーで何年か仕事をやらせていただいているんですけれども、一人でやる仕事っていうのが多いんですね。
今回、出版社の方と相談しながら作り上げて行ったのですが、そういう進め方がはじめてだったんです。
いままでの仕事では、人に口を出されたらいらっとしたりとか、自分のものじゃなくなる、とか思ったりしたこともあったんですけれども、これを作ったときに、チーム・プレーの楽しさ、っていうのがわかりました。
やっぱり、ひとりで出てくるものって限界があって、他の人の意見を聴くことで、自分の世界も広がる、っていうのを感じることができたので、この本には感謝をしています。
—— チーム・プレーですか…。
K:文芸社さんには、製作の面でもかなり助けていただいた面も大きいんですけど、一番は、手塚プロさんからのOKがなかなかでなくて、ぜんぜん進まなくなったときがあったんです。そこで僕が、直接監修の方にお会いしたいっていうお話をしてみたんですね。そうしたらなんか、文芸社の担当の方が、そういう会を設けてくださって。場を作っていただいたことで、その後のお話がすごくスムーズにいったんですね。
やっぱり直接お会いしてお話しすると、思っていたのとずいぶん違っていまして。僕も個人でやっていると、手塚プロさんの看板に正直、びびっちゃう部分もあったりして、変な気の使い方とか、変な遠慮とかしていたんだな、と。
その会食の場で、もっと自分を出していく方向に力をいれなきゃいけなかったんだな、ということが確認できました。
そういう場を作ってくださった文芸社さんにはとても感謝しています。
—— これは次にやってみたい! という企画ありますか?
K:商品的なものでは、最初からそうなんですけど、コレクションできるようなものが作りたい、という思いがあって。
小さい、コレクションできるフィギュアとかをつくりたいな、っていうのはずっと、言ってはいるんですけれども、なかなか手を上げてくれるところがいなくて。協力してくれるライセンシーさんを募集しています。—— 他に何か、アイディアはありますか?
K:あとはやっぱり、本で第2弾・第3弾っていうのが出せたらな、っていうのはあります。
手塚キャラクターを使った僕オリジナルのストーリーで、というのは希望ですがあるんですけれども、僕にかかっている、っていうか、果たして一冊の本を作り上げることができるのか、っていうのは、自分でもすごく疑問な部分はあるんですよね。あんまり中途半端なことはやりたくないと思って。これだ、って思うものができたときにぜひご提案させていただきたいな、と思っています。——最後に、キッカワさんの中での手塚先生への思いっていうのを、お話いただけますでしょうか。
K:僕は、1975年生まれで、リアルタイム年代じゃないんですよ。ですから、コアなファンの方々には、どこまで行っても受け入れてもらえないんじゃないか、っていう不安もあります。でも、せっかくこういう仕事をしているので、若い世代とコアなファンとの橋渡しができたら良いんじゃないか、と。
いろいろ厳しいご意見もあるとは思いますが、受け入れるところは受け入れつつ、若い世代のファンを引っ張っていけたら、と思っています。キッカワケイタさんのサイト: キッカワケイタ HP
今回、インタビューに答えていただいたキッカワケイタさんによる「キュービック・アトム」を、虫ん坊読者の方5名へプレゼントします!
応募方法:
tezukaosamu-net-guide@tezuka.co.jp あてに、メールにてご応募ください!
なお、その際、「件名」の部分に【虫ん坊2010年1月 キュービック・アトムプレゼント係】とお書き添えください。
当選発表:
ご応募の方から抽選後、いただいたメール宛に当選した旨をメールでお知らせいたします。
応募締め切り: 2010年1月31日(日)