少年画報社 少年画報付録 表紙用イラスト 1966年
地球の創造主アースによって造られたロケット人間マグマ大使と、地球侵略をたくらむ宇宙人ゴアとの戦いを描いたSF活劇です。
新聞記者村上厚の一家が、ある朝目覚めると、家の外は恐竜が歩き回る2億年前の世界になっていました。それは、実はゴアと名乗る宇宙人が、自分の力を示すために彼らを過去へとタイムスリップさせたのでした。ゴアは、地球を乗っ取ると宣言し、新聞でそのことを宣伝しろと言うのです。
現代へ戻った村上記者の息子のまもる少年は、マグマという巨人に火山島の地中につれていかれ、そこでアースという地球の造り主と会います。アースはゴアの野望を打ちくだくために、マグマ、モル、ガムという3人のロケット人間をつくりました。
まもるは、マグマからこまった時にマグマたちを呼べる笛をもらい、彼らとともにゴアと戦います。 しかしゴアは、人間モドキという人間にそっくりに化けられる生物をひそかに地球へ送り込み、すでに地球侵略を開始していたのでした。
1965/05-1967/08 「少年画報」(少年画報社) 連載
異星人が地球に侵略してくるというテーマは、SFとしては古典的なテーマかもしれませんが、時代を超え、趣向を変えて、繰り返し描かれる普遍的なテーマです。
この、マグマ大使の世界ではたった一人の宇宙人・ゴアがあの手この手を駆使して地球を作った創造主から、地球を譲渡してもらおうとしますが、あくまで表面上は穏便に譲渡を迫るところが、なんだか不動産を買い付ける地上げ屋のようです。ゴアのみかけも豊かな巻き毛にすらりとしたスーツ姿。ちょっと人間のやくざにも見えます。
あくまで地球を守るために戦うアースやマグマたちも、純粋に正義ではないのではないか、という問題提起があり、特に人間モドキと人間でありながら姉妹のように暮らしていた少女の挿話「ふたりのゆき枝」では人間モドキのほうのゆき枝に同情を寄せる読者も多いのではないでしょうか。
手塚治虫がもっとも多くの連載をかかえていた時期の作品です。あまりに多忙だったために、井上智、福元一義のふたりのマンガ家が作画を手伝い、後半のエピソード「サイクロップス編」は、ほとんど手塚治虫自身の絵ではなくなってしまったために単行本には収録されませんでした。
1966年にPプロダクションの製作で実写特撮番組としてテレビドラマ化されましたが、当時の怪獣ブームにあわせて、原作マンガには登場しない怪獣が多数登場しています。しかしそのテレビ版も完成度は高く、雑誌連載と共に人気を呼びました。
マグマ
アースが作ったロケット人。ゴアの写真を撮ったまもる少年の前に現れた。ロケットに変身して飛ぶことができ、頭のツノのような器官(実は耳)は熱線砲となり、腕のひとふりでジェット気流を巻き起こすことができる。また、胸の中に武器を格納している。地球を守るためにまもる少年らとともに奮闘する。まもる少年の持つ笛を3回吹くと呼ぶことができる。
>キャラクター/マグマ
マグマ
モル
ガム
マグマの妻。美しい女性の姿をしたロケット人。マグマと同じように耳から熱線砲が出せ、ロケットに変身することができる。まもる少年の持つ笛を2回吹くと呼ぶことができる。
マグマの希望で、マグマとモルの息子としてアースにつくられた少年ロケット人。まもる少年をモデルにつくられた。笛を1回吹くと呼ぶことができる。
村上まもる
村上厚
新聞記者・村上厚氏の一人息子。宇宙人・ゴアのたくらみで両親とともに恐竜時代に飛ばされ、事件に巻き込まれる。アースからマグマ・モル・ガムらロケット人を呼び出すことができる笛を預かる。
毎回新聞社の新聞記者。ゴアの地球制服のたくらみをメディアに紹介しようと奮闘するが、ゴアの妨害にあう。長野に実家がある。
アース
ゴア
地球を作った存在。髪とヒゲの長い老人の姿をしている。マグマたちを作って、ゴアの地球侵略から地球を守ろうとする。
宇宙のさまざまな星を創造主から貰い受けることを趣味としている宇宙人。地球を狙っている。人間の紳士のような姿をしているが、正体はトカゲ型。
本文 原稿より
「マグマ大使」は、「鉄腕アトム」のテレビが軌道にのったころ、徹底したエンターティンメントを、という「少年画報」の依頼ではじめました。
「W3」「ビッグX」「ロップくん」「リボンの騎士」----この時期は、ぼくのスタミナが絶好調にあるころで、虫プロの雑件を走りまわって処理しながら、それでも長編大作をどんどんかきとばしていました。でも、さすがに「マグマ大使」がはじまったときはオーバーワークとなり、井上智さんと福元一義さんに絵を手伝ってもらうはめになってしまいました。それも、とうとうおしまいには、お二人の代筆みたいなものになってしまい、今回の全集でも、やむをえず、この「ブラック・ガロン編」で打ち切りました。このあとの連載は、厳密にいえばぼくの絵ではないからです。
(後略)
(講談社刊 手塚治虫漫画全集『マグマ大使』3巻 あとがきより抜粋)
本文 原稿より
少年画報社 少年画報付録 表紙用イラスト 1967年