『ぼくの孫悟空』の映画化ですが、キャラクターは映画用のオリジナル。子供の頃からアニメーションを作りたいと夢見て、あれやこれやと試行錯誤していた手塚治虫が、はじめて本格的にアニメーション映画の世界に足を踏み入れた記念碑的な作品。とはいってもこの作品では原作と構成のみを担当しているだけで、じっさいの絵作りにはまだ関わっていません。物語のラストを孫悟空の恋人の死、という悲劇的なものにしたいと彼は考えていました。これは「大切なものの死を乗り越えて、人は次なる成長をみつめなければならない」という手塚漫画が最後まで内包していたテーマをアニメーションでも表現しようとしていたことの現れでしょう。手塚治虫はこういうエンディングによって、子供たちに「生」と「死」をともに大切に考えられる人間になってほしいと願ったのかもしれません。しかし制作した東映動画の考えていたのは、あくまでも「子供たちを楽しませるため」の「ハッピーエンド」でした。映画はハッピーエンドとして完成し、そのことがここからはじまる手塚治虫の「アニメ作家」としての人生に「自分が表現したいことを表現するためには、自分の金で作らなければ駄目だ」という教訓を与えたのかもしれません。
(C)東映アニメーション
東映系封切/88分/カラー・東映スコープ
東映動画/1960年8月14日
ヴェネチア国際児童映画祭特別大賞
孫悟空・・・・・・小宮山清
リンリン(憐憐)・・・・・・新道乃里子
猪八戒・・・・・・木下秀雄
沙悟浄・・・・・・篠田節夫
三蔵法師・・・・・・関根信昭
釈迦如来・・・・・・武田国久
観世音・・・・・・尾崎勝子
小竜・・・・・・白坂道子
牛魔王・・・・・・巌金四郎
ラセツ女・・・・・・加藤玉枝
金角・・・・・・川久保潔
銀角・・・・・・風祭修一
製作:大川博
企画:高橋秀行、渾大坊五郎
原案構成:手塚治虫
脚本:植草圭之助
演出:藪下泰司、手塚治虫、白川大作
作画監督:大工原章、森やすじ
原画:手塚治虫、森やすじ、熊川正雄、大工原章、古沢日出夫、大塚康生
動画:紺野修司、喜多真佐武、楠部大吉郎、奥山玲子、寺千賀雄、吉田迪彦、中村和子、長沢詢、杉山卓、太宰真知子、長沼寿美子、堀川豊平、杉井儀三郎、石井元明、勝田稔男、松隅玉枝、堰川昇、中谷恭子、生野徹太、吉田茂承、小田克也、生形昌代、大田朱美、鈴木みどり、酒井一美、石野桂子、加藤洋子、関口正子、菊地貞雄、竹尾修子、竹内留吉、笠井晴子、彦根範夫、相磯嘉雄、児玉喬夫、斉藤智、福島信行、高尾研三、渡辺保三郎、窪田勝子、石沢真砂子、山田みよ、中山敦子、飯田一、花田玲子、高木厚、斉藤賢、小林和子、本谷治子、林重行、斉藤瑛子、富永勤、菊地勝子、小田部羊一、月岡貞夫、長尾雅子、田村真也、梅田英俊、香西隆男、篠正美、平田敏夫、上口照人、森英樹、山岡勝司、赤堀幹治、黒沢隆夫、松原明徳、二宮毅、尾崎重雄、酒井喜代志、柴田圭子
トレース:進藤みつ子、本橋文枝、宮崎正子、吉田信子
彩色:島純子、林富喜江、岡迫常弘
仕上検査:新納三郎
美術:矢野雅章
背景:杉本英子、小沢和子、斎藤君子、浦田又治、横井三郎
色彩設定:前場孝一
動画監修:山本早苗
撮影:宮本信太郎、井草寛次郎
考証:邸永漢
記録:島木綿子
制作進行:茂呂清一
音楽:服部良一
作詞:西沢爽
歌:山東昭子、佐藤しげみ、ダークダックス
協力:コロムビアレコード