マンガマンガ

小学館 週刊少年サンデー 扉絵 1967年

ストーリー

体の48箇所を魔物に奪われた百鬼丸が、魔物退治の旅を続ける怪奇マンガです。

戦国武将に仕える醍醐景光は、天下を取るという野望をかなえるために、生まれて来るわが子の体を、48匹の魔物に与えてしまいました。そうして生まれた子供は、体の48ヵ所の部分が足りず、川に流され捨てられてしまいました。

時は流れ、戦(いくさ)の世を旅する少年・百鬼丸。実は彼こそが、魔物に体を奪われた赤ん坊の、成長した姿だったのです。百鬼丸は、体を奪った妖怪を1匹倒すごとに、失った体の部分を1ヵ所取り戻すことができるのです。

百鬼丸は、どろろという名のドロボウ少年と知り合い、一緒に旅をするようになります。しかし、どろろと百鬼丸の行くところ、妖怪や死霊が、次々と襲いかかって来るのでした。(未完)

解説

1967/08/27-1968/07/21 「週刊少年サンデー」(小学館)連載
1969/05-1969/10 「冒険王」(秋田書店) 連載

テレビアニメや映画、ゲームにもなった、手塚治虫の時代劇作品の中でも特に著名な作品です。「どろろ」以前から、「冒険狂時代」(1951年)「新選組」(1963年)、「スーパー太平記」(1958年)「風之進がんばる」(1955年)といった時代劇が描かれており、それもひとつひとつ、趣向が凝らされた、一風変わった時代劇なのですが、「どろろ」のユニークさと馴染みやすさは中でも突出しています。

手塚治虫自身も惚れ込んだという百鬼丸とどろろのキャラクター性はさることながら、次々と敵として登場する妖怪たちのフォルムや性格の面白さも、読者の心をつかむ力を持っています。

さらには、「宝探し」「股旅物」「親探し」「復讐」...、ストーリーにも古来普遍的な要素が織り込まれており、いつの時代に読んでも面白い作品となっています。

日本の戦国時代を舞台として、東洋の伝説や説話に出てくるような妖怪が次々と登場してきますが、これらの妖怪は、すべて手塚治虫の考えたオリジナルです。

連載当時は、ちょうど水木しげるの描く妖怪マンガがブームだったため、それとくらべて語られることが多かったのですが、『どろろ』は、むしろ妖怪マンガというよりは貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)と見ることができます。貴種流離譚というのは、身分の高い主人公が幼くして故郷を離れ、数々の苦難をのりこえて英雄になるという、昔からある物語の一類型のことです。

この「週刊少年サンデー」の連載は未完のまま中断しましたが、その後、テレビアニメの放映に合わせて、月刊漫画雑誌「冒険王」に第2部が連載され、一応の完結を見ることになります。

主な登場人物

百鬼丸

百鬼丸

父・醍醐景光の天下統一の野望のために、生まれながらに妖怪たちに身体の四十八カ所を奪われた少年。足りない箇所は義体で補っている。常に怪物たちに狙われ、戦いが絶えない半生を過ごしてきたため、剣の腕がたつ。自分の身体を持っている妖怪を倒すと、体の一部を取り戻すことができる。
>キャラクター/百鬼丸

百鬼丸

どろろ

どろろ

自称大泥棒の浮浪児。旅の途中の百鬼丸と出会い、行動を共にする。野盗夫婦の間に生まれ、幼いころから苦労が絶えなかったせいか、ちょっとやそっとのことではへこたれないたくましさと明るさを持っている。
>キャラクター/どろろ

どろろ

醍醐景光

寿海

醍醐景光

百鬼丸の父親。天下統一の野望をもつ侍。富樫家につかえている。地獄堂で悪魔たちに願をかけ、息子の身体を捧げものにした。

寿海

百鬼丸を拾い、育てた医者。百鬼丸の身体の不足分を補う義体を作った。

琵琶丸

多宝丸

琵琶丸

正体不明の盲目の琵琶法師。たびたび百鬼丸の前に現れ、導く。琵琶の中にしこみ刀を持っており、武芸の達人。
>キャラクター/琵琶丸

多宝丸

醍醐景光の息子。士官を断った百鬼丸に反感を持ち、決闘を挑む。

手塚治虫が語る「どろろ」

まいまいおんば

ぬえ

あちこちにかいたことですが、ぼくは人一倍負けん気が強く、たとえば漫画でも、ある作家が一つのユニークなヒットをとばすと、おれだっておれなりにかけるんだぞ、という気持ちで同じジャンルのものに手を出す、おかしなくせがあります。
というわけで、「どろろ」は水木しげる氏の一連の妖怪もののヒットと、それに続く妖怪ものブームにあやかって(?)作り上げた、いうなれば、きわものです。

しかし、最初の十回ばかりは、ぼくも本心からこの作品にのってしまったのです。珍しく時代もの、それも中世を舞台にした因果応報もの、ということが意欲をかき立てました。主人公の二人に自分ながら惚れぬいたのも、めったにないことでした。六、七回めのあたりには折りこみ口絵もはいり、それには水木氏ばりに、登場妖怪たちをずらりとならべたりしました。

しかし、この物語も回を追うにしたがってムードが暗くなりました。悲惨な戦国の世の被搾取階級のドラマが、やりきれない暗さを露呈しました。そのうえ、「まいまいおんばの巻」あたりから、生ぐささが加わりました。少年週刊誌の漫画としては、マイナスの要素が多くなってきました。
そして、まずいことに「ノーマン」の新連載が始まったせいもあって、「どろろ」への意欲も半減して、編集部の要請で、大急ぎで大団円にしなければなりませんでした。

本当は、百鬼丸が四十八体の魔物とたたかうエピソードを残らず出したかったのですが、滑稽にも、残った魔物を全部いっしょくたにいた"ぬえ"などという怪獣を出したりして、あっさりかたづけてしまったのです。
(後略)

(講談社刊 手塚治虫漫画全集『どろろ』4巻 あとがきより抜粋)

まいまいおんば

ぬえ

秋田書店 別冊冒険王夏季号 「無情岬の巻」扉絵 1969年

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