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秋田書店 週刊少年チャンピオン「修禅寺物語」扉絵 1981年

ストーリー

代役専門の天才役者にして泥棒という異色のキャラクターを主人公にした犯罪活劇です。

七色いんこは、代役専門の天才役者で実は泥棒です。観客から盗みを働くのを劇場と劇団が見逃すことを条件に、どんな代役でも引き受けて見事に演じのけるのです。

そんな彼に恋心を抱きつつも、彼を捕えようとしつこく追い回すのが、女刑事の千里万里子でした。そこに、いんこにも劣らぬ演技力を持つ犬の玉サブローが絡んで、世界を舞台に、数々の演劇を下敷きにしたストーリーが展開します。

解説

1981/03/20-1982/05/28 「週刊少年チャンピオン」(秋田書店) 連載

「ブラック・ジャック」と同じ「週刊少年チャンピオン」に連載された作品ですが、打って変わってギャグテイストの軽快な作品です。

主人公はどんな役柄にもメーキャップで寄せてくる天才役者。青年役だけではなく、老人、老婆、果ては女性にまで化けられます。

「ブラック・ジャック」も正統派ヒーローというにはひねくれているところがありますが、いんこもまた、アウトローヒーロー、泥棒、つまり怪盗です。とても「良い子」とは言えません。

第1話「ハムレット」

演劇通の手塚治虫ならではの作品で、シェークスピアから歌舞伎まで、様々な演劇をかいつまんで紹介しながら物語が展開します。

手塚治虫は演劇通であると共に大の映画ファンでもあるため、取り上げられる演劇は映画化されているものも多く、第1話「ハムレット」に出てくるローレンス・オリビエとかジョン・ギルグッドといった名前も、シェークスピアの戯曲を原作としたの映画の名優として知られています。

第1話「ハムレット」

主な登場人物

七色いんこ

七色いんこ

まったくのしろうとで役者ではないが、高い演技力をもっており、代役専門に引き受けることを生業とする舞台俳優。新宿区の私書箱宛ての手紙で連絡が可能。出演料はとらない代わりに、当日観客席から金目のものを盗む泥棒。
>キャラクター/七色いんこ

七色いんこ

千里万里子

玉サブロー

千里万里子

スポーツ万能、特に射撃の腕は天下一品の女性刑事。VIPのSPにあこがれていたが、七色いんこの事件の担当に指名される。まっすぐな性格と度胸で、「女性版ジェームズ・ボンド」として外国のセレブにファンもいる。
>キャラクター/千里万里子

玉サブロー

ある夜いんこのもとに突然現れた子犬。長い睫がトレードマーク。さる演劇界の名演出家の飼い犬だったが、演出家が死亡したことで、いんこに託された。
>キャラクター/玉サブロー

手塚治虫が語る「七色いんこ」

火の鳥(羽衣編) 1971年

七色いんこ「シラノ・ド・ベルジュラック」

ぼくは漫画家になったとはいうものの、その前にいろんな職業にたずさわってきました。大阪の劇団にも3年ほどいたことがあります。今でも大阪のNHKに行くと、その時のぼくと同期の人が何人もいます。昭和22年頃でしょうか、舞台の上でずっと芝居をしていたわけです。たいがい三枚目の役でしたけれどね(笑)。そのせいか、ぼくは舞台の上に上がると度胸がつくんです。

それで、芝居に関するぼくのイメージとか、ぼくが芝居を好きだからこそこうした漫画を描いているんだ、とういことをわかっていただくために始めたのが「七色いんこ」なのです。今までぼくの漫画には、芝居というものを直接描いたものは、ほとんどありませんでした。最近では「火の鳥」の羽衣編が芝居を直接描いたものです。ああいうふうに芝居というのは、舞台の上で右から出てきて、左へ出てしまう。後ろには書き割りがあって、幕が下がっているというふうです。考えてみますと、昔の漫画「のらくろ」やなんかは、かえってこういう形の話でしたね。

「七色いんこ」というのは、今までのぼくの作品系列からいといったいどれにあたるかわからないほど変わった作品なので、「ブラック・ジャック」や「ドン・ドラキュラ」を見慣れた人にはとっつきにくいとよくいわれます。題名にしても、なぜ「七色いんこ」というのかわからないというんです。たまたま家でインコを飼っていたので「七色いんこ」ってつけたんですがね、ただそれだけのことです(笑)。

だからそういう意味ではとりとめのない話ですが、ここに出てくるいろんな芝居、これはぼくにとってとてもなつかしい芝居ばかりです。もしみなさんの中に芝居をやっている人や、興味のある人がいましたら、ぜひ声援を送っていただきたいと思います。実際に出版社の方への反響や手ごたえは悪くないのですが、ぼく個人のところへくる手紙には、これに関する意見というのがそれこそまったくない。本当にこれだけこない漫画というのもめずらしいですね。こんなことははじめてです。よっぽど無視されているか、演劇というものに興味がないのか、それともなにがなんだかわからない話だと思われているのか、そのへんはみなさんにうかがってみたいですね。
(後略)

(1981年8月2日 第4回手塚治虫ファン大会講演 より抜粋)

火の鳥(羽衣編) 1971年

七色いんこ「シラノ・ド・ベルジュラック」

秋田書店 週刊少年チャンピオン 「ピグマリオン」扉絵 1981年

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  • 七色いんこ (1)
  • 七色いんこ (2)
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  • 七色いんこ (4)
  • 七色いんこ (5)
  • 七色いんこ (6)
  • 七色いんこ (7)

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