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ストーリー

幕末の京都、父一人子一人の貧乏武士の家に手負いの男が逃げ込みます。事情は分からないながらも武士の情けでかくまった父は、追手の土佐藩士に切り殺されてしまいました。
 下手人の男・庄内半蔵を、息子――深草丘十郎は「父の仇」とし、剣の腕を磨き、いつか仇討ちを果たすため、「新選組」に入隊します。

 入隊試験の際に知り合った、同じ年ごろの少年・鎌切大作は若いながらに桂小五郎を思わせる神道無念流の使い手です。入隊志望のならず者と斬りあいをしたあと、涼しい顔でまんじゅうを食べる得体のしれない少年ですが、年の近い丘十郎とは気が合い、二人は親友になります。

 敵討ちを目的に新選組に入隊した深草丘十郎ですが、局長の命令で人を斬ったり、敵討ちを果たすうちに、人を殺めることのむなしさに気づき、苦悩するようになります。一方、新選組局長の芹沢鴨は、徐々に権勢をかさに着て、横暴を働くようになり……

 架空の少年隊士二人を主人公にし、実在の歴史上の人物たちと入り乱れて展開する手塚治虫流「新選組」物語です。

解説

1963/01-10 「少年ブック」(集英社) 連載

江戸末期に「尊王攘夷」を掲げ、維新勢力の要人の暗殺などに暗躍した新選組については、現代では時代劇の人気のテーマの一つですが、この手塚治虫の「新選組」の時代には隊士たちのキャラクターも固定したイメージもなく、今ほど人気もありませんでした。

とはいえまったく見向きもされなかったわけではなく、古くは1928年の子母澤寛の小説「新選組始末記」で再評価され、この漫画「新選組」とほぼ同時期には司馬遼太郎による「新選組血風録」と「燃えよ剣」が連載され、現代のマンガや小説での隊士たちのイメージの多くは、このふたつの小説に影響を受けているといわれます。

 大人の間では小説や映画(市川雷蔵が主演を務め、山崎烝を演じた「新選組始末記」などはまさに1963年公開の映画です)などで、先に新選組のブームはあったのですが、子供漫画の世界にはまだ影響を与えていなかったのかもしれません。

手塚治虫は手塚治虫漫画全集「新選組」のあとがきのなかで、「まだ新選組や沖田総司が、現在ほどブームになる以前、まだ勤王の志士から見れば悪役然としていたころ」と回想しています。実際本作はあまり人気が良くなかったようで、本当は五稜郭までを描く構想があったにも関わらず、池田屋事件で終わっています。

 近藤勇や土方歳三、名字だけのわき役風の登場ではありますが、斎藤一、永倉新八、山崎烝らの隊士たち、また坂本龍馬や桂小五郎などの「維新派」の重要人物など、実在の人物の名前も端々に登場し、力士たちと隊士とのけんかや、桝屋喜右衛門の拷問のくだりなどは、他資料にも登場する有名なエピソードです。

 先に引用したあとがきでも手塚は「いたってフィクショナル」「異次元の世界の新選組物語」と述懐していますが、時代考証的な硬いことは考えなくとも、幕末の二人の少年の出会いと別れのドラマとして、多くのファンを引き付ける作品です。

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  • 新選組

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