現代科学の行く末、超特急、宇宙開発に月面着陸、さらには万国博や産業用ロボットにいたるまで、手塚治虫がぐるりと世界を見まわし、現代社会の進み行く先を見つめたエッセイが収められてしまいます。アトムを生み出した男であり、同時に医学博士でもある彼がバイオテクノロジーをはじめとする科学の暴走に対して大いなる危機感を持っていたことが非常によく伝わってくるエッセイがおさめられています。『ちいさな地球の上で』と題されたシリーズ・エッセイは破滅への道をひた走る現代科学に対する警鐘といえるでしょう。また同時収録されている『ぼくの旅日記』という紀行エッセイは手塚治虫が旅先で見つめているのはいつも風景や珍味だけではなく「人間と地球とのかかわり方」であり、「人間というものの営み」だったのだと教えられます。
(本書は大和書房より刊行された『手塚治虫ランド』(1977年)、『手塚治虫ランド2』、マガジンハウスより刊行された『手塚治虫大全1』(1993年)『手塚治虫大全2』(1993年)をもとに再編纂されたものです)