アニメーションとはそもそもどういうものなのか、という基本的なところから、アニメーションの魅力と、何故、それに自分がのめりこんで行ったのか、ということについて書き綴られた文章が集められています。中でもディズニーについて語り、名作『白雪姫』について大いに不満点を述べているところなど、とても興味深いでしょう。ディズニーが大好きで初期の頃のミッキーマウスやドナルド・ダッグに見られた残酷なまでのスラップスティック性が、いつのまにかディズニー=ヒューマニズムとすり代わってしまったことを手塚治虫は嘆いています。その姿はそのまま手塚治虫自身に対する一般評価と一致します。手塚作品も初期の頃からずっと人間不信に彩られたシニカルな作品が主流だったのに、いつのまにか手塚治虫=ヒューマニズムという評価一色になってしまった。そんな自分自身の世評に対するジレンマをディズニーのジレンマに重ね合わせ、ディズニーと自分も共に開拓者であり、自分の創造性を信じるクリエーターなのだと納得する。そんな手塚治虫の胸のうちがよく伝わってくるエッセイです。
(本書は、大和書房より刊行された『手塚治虫ランド』(1977年)、『手塚治虫ランド2』(1978年)、マガジンハウスより刊行された『手塚治虫大全2』(1993年)をもとに再編纂されたものです)