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虫ん坊 2012年04月号 オススメデゴンス!:『冒険狂時代』

  4月の『オススメデゴンス』では、『陽だまりの樹』のドラマ化記念! ということで、『冒険狂時代』をご紹介します!
  ……どこがつながりがあるのか分からない? 実は、この『冒険狂時代』世界の各国を舞台に、幕末の開国派のサムライ、嵐タコの助が暴れまわる、という内容なんです。少年少女向けのギャグマンガで、荒唐無稽なところもありますが、タコの助の義に熱い性格は、どこか万二郎にも通じるところがあったり…… というのはコジツケでしょうか??
  『陽だまりの樹』は当欄で以前ご紹介しましたので、「もう読んじゃったよ」という方は、ちょっとテイストの違うこんな作品も読んでみてはいかがでしょうか。

解説:

(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『冒険狂時代』あとがき より)

 この支離滅裂な漫画の原案は、じつはぼくが中学生のときかいた一千ページ近くにおよぶ習作です。
 題名を『おやじの宝島』というこの習作は、主人公の少年武士のかわりに、例のヒゲオヤジが役をつとめていたのです(もちろん現代の服装でした)。そしてこのガムシャラな私立探偵と、フランスのガニマール警部とシャーロッ ク・ホームズが、宝島の地図をめぐって、怪盗アルセーヌ・ルパンとあらそうという大筋だったのです。
…(中略)…
 ところが『おやじの宝島』は、どちらかというと劇画にちかいリアルな物語 の上、恋愛までからんでいたので、かなり大幅に内容を変えないわけにはいき ませんでした。
 そして、なぜか主人公を西部へむかう日本の少年武士にしてしまったのです。
 その名も、嵐風之助という、かっこいい名にきめました。ところが秋田書店の人が、これもなぜか“風”という字を“凧(タコ)”にまちがえて活字を組んでしまったのです。仕方なく、とんだまちがいのまま、嵐タコの助でとおすことにしました。
…(後略)…


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読みどころ:

虫ん坊 2012年04月号 オススメデゴンス!:『冒険狂時代』


虫ん坊 2012年04月号 オススメデゴンス!:『冒険狂時代』

 1940年代のハリウッド映画的世界を舞台に、日本の少年武士が暴れ回る、手塚治虫式奇想天外冒険物語です。舞台をめまぐるしくカリブ海、アメリカ西部、モロッコと変えて縦横無尽に活躍する主人公はなんと日本人。名を嵐タコの助という少年武士です。奇しくもこの少年もまた、幕末日本の開国派幕臣の息子なのですが、二つに破れたナポレオンの宝の地図をめぐり、世界狭しと大冒険します。


虫ん坊 2012年04月号 オススメデゴンス!:『冒険狂時代』

 カリブ海の気まぐれな竜巻に運ばれた先のアメリカ西部ではカウボーイになって馬慣らしの特訓、モロッコを訪れ、外人部隊に入隊し、と思えば再び船上で海賊ブラッドと剣をまじえと、ハリウッド華やかなりし頃の映画の心躍る場面の数々を、おもちゃ箱をひっくり返したようにちりばめたハチャメチャさですが、このハチャメチャさが言ってみればこの作品の魅力です。さらにしつこくもあくどく宝の地図を狙い続ける悪役をハムエッグが演じ、最後までタコの助を追い詰めます。


虫ん坊 2012年04月号 オススメデゴンス!:『冒険狂時代』


虫ん坊 2012年04月号 オススメデゴンス!:『冒険狂時代』

 1930〜40年代の外国映画に通じていればなおいっそう楽しめるかもしれません。冒頭の海賊との戦いのシーンでカッコつけるジョン・ウェインとか、魔法使いヤシム博士が唱えた魔法「コリデエフ ニーリエフ カーシデ オリトッピ」云々などのちょっとしたお遊び。他の作品にも、映画の影響が少なからず見られる手塚治虫ですが、これほどに映画ネタをふんだんにちりばめた作品もありません。

 作者自らの元ネタ解説も作品中についておりますので、古い映画がお好きな方なら、お読みになって確かめて、ほくそえむのもまたひとつの楽しみ方かも知れません。





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