以前の制作発表でも取り上げた、わらび座ミュージカル『火の鳥 ―鳳凰編―』。 その稽古始めが新年1月4日から始まるという話を聞いて、小雪舞い散る秋田県の角館にあるわらび座のホームタウンに行って参りました。
茜丸・速魚・ブチ役の役者さんへインタビュー。
また演出の栗山さんと役者全員が顔を揃える初日とあって所々緊張感もある中、全体的には新年の和やかさと和気あいあいとした雰囲気の初稽古をレポート。

まずは稽古始め前の忙しい時間の中、主要キャスト方々にインタビューさせてもらいました。

●茜丸役

戎本 みろさん:
手塚先生の漫画には、どの漫画にも先生から人類に向けてのメッセージが込められていると思うんですけれど、私自身この火の鳥という作品だけに留まらず、手塚先生の想いというものを自分自身の想いにしてお客様にそして手塚先生のファンの方に届けていきたいなと思っています。よろしくお願いします。

●ブチ役(ダブルキャスト)

田郷 真友さん:
鳳凰編を読んだ時からブチをやりたかったので、今回出来ることになって本当にうれしかったです。作品の印象は大仏建立の時代も今の時代も同じように人々は不安に満ち溢れていたというコマが非常に印象的で、その中でもブチは自分の正しいと思っているをずっと信じ続けている女性だと思ったので、そういう女性を演じることが出来ることを凄く幸せに思っていますし、皆さんに楽しんで頂けたらと思います。
すごく楽しい面白い物にするよう頑張りますので是非見に来て下さい。
今泉 由香さん:
ブチは、とても心の傷が深い子だと思います。必死に生きていて、火の鳥に出てくる人は皆そうなのですが、皆が必死に生きている。 それが、とても素敵だと思います。いまの乾いた世の中に、とても大事なことを言っている作品だと思っています。 手塚先生の生涯をかけたメッセージの込められた作品を、舞台で一瞬一瞬生きられたらと思っています。
私たちが、ミュージカルでお届けする「火の鳥」を、共感していただけたら幸せです。ぜひ、観にいらしてください。

●速魚役

碓井 涼子さん:
大作なので今までにも増して緊張しているんですけれど、速魚は人間でも虫でもない、一つの命だと思います。
どこまでも限りのない愛情や包容力を大事にして存在したいと思っております。
火の鳥の世界をこのミュージカルでも感じて頂けるように精いっぱい頑張ります。

――初稽古の模様――

稽古前は、皆さんストレッチや発声、台本の確認など思い思いに時間を使って準備していました。

13:50 演出の栗山さんが稽古場に見えられ、いよいよ始まるという雰囲気が漂ってきます。
14:00 スタッフ紹介に続いて演出の栗山さんから挨拶がありました。

栗山さん:「今日から4日間まずは皆の事も知りたいので、今日明日位はワークショップみたいな事もやったりしながらちょっと遊びましょう。」

この一言で場がちょっと和みます。
実は、主要キャスト以外はまだ正式に役が決まっていないとの事だったので、初日に参加された役者さんの大部分がこれから配役されるという事だったようです。

栗山さん:「『火の鳥』は昔やったことがあって、その時には最後までこの作品の正体がつかめなかったんですね。今回の鳳凰編っていうのは火の鳥の中でも一番完成された話という事なんだけれども、これもまだ一向に正体がつかめない。正体がつかめないことを永遠に追い続ける巨大なドラマっていう感じがするんです。」

「ですから、ここに書かれているセリフ、音楽をそのままやればいいというモノじゃない。これで終わりと思わず、見えないところにあるもの、セリフの裏にあるものを見つけるって言う事が僕たちのこれからの作業になってくると思います。
何回も何回もセリフを言ったり、あるいは動いたりすることによって何かが見つかってくる。 相手役とその場で出会った、その瞬間の新鮮さを忘れないようにしてください。そうしないと、この作品の本質みたいなものが見えてこないと思います。毎回ステージで演じながらこの奥の深い、謎に包まれた、あるいは正体不明なこのドラマを探求していくと何か見つかるんじゃないかなーという気がするんですね。」

――全員真剣に聞き入っています。

栗山さん:「それと、いつも思う事は、芝居でもミュージカルでも僕の中ではいつも主役はいません。
ですから8人で歌う時でもその中の自分が歌っている瞬間は自分の世界だと思って歌ってください。一言しかセリフが無くてもその一言をしゃべる時に全ての人がその人を見ていて、 その瞬間主役になる訳で、そうしないと舞台というものは掛け算になっていかない。各自がそれを自覚する事によって2倍にも3倍にもなっていく。 求めている作品自体がそういうものなので、その瞬間にぶつかり合う力を自分の中で、舞台と言う場所で見つけて行ってください。」
14:20 各自の自己紹介が行われました。

そこでも数人の方が、この作品は奥が深くて、なかなか本質を見つけることが難しいという事を言ってらっしゃいました。 手塚先生がライフワークとし、一生をかけて描き続けた作品がどのようにミュージカル化されて行くのか、作り手も演じ手もこれから作り込んでいくという雰囲気がひしひしと伝わってきました。


その後、演出の栗山さん、振付の田井中さんらスタッフが見つめる中、ダンスのワークショップがあったり、 課題のモノローグを各自演じたり、最後には女性陣のみソロでの歌を歌うなど、和気あいあいとした雰囲気も緊張した場面もありとあっと言う間の4時間の初日稽古でした。
さて余談ではありますが、開始まで多少時間があったので、ホームタウンのたざわこ芸術村を探索!
当日の秋田は小雪まじりとは言え思ったほど雪が積もっていないという印象でした。 やはり温暖化の影響があるのでしょうか? 迎えてくれたスタッフの方も、今の所は例年よりちょっと少なめというお話でした。


(左):一人芝居やライブ・アットホームなミュージカルなど限定で公開される小劇場。
(中央):700人収容のわらび劇場は1/3までで千秋楽を終え取材当日からしばらく休館だそうです。
(右):温泉や地ビールの工場に工芸館など多岐に渡って色んなものが楽しめるようになっていました。

スタッフの方の話では、近くには渓谷もあり秋には紅葉がすばらしいそうで、こんな環境で芝居が出来るのも、見ることが出来るのもうらやましい限りです。

そんな環境のなか、どんなミュージカルが出来上がってくるのか、今後も目が離せません。
期待して本番を待つことにしましょう。

●最新情報やチケット発売情報などは下記をご覧下さい。
わらび座 ミュージカル「火の鳥」
http://www.warabi.jp/hinotori/index.html

●前回の特集 虫ん坊2007年12月号
わらび座 ミュージカル「火の鳥」鳳凰編 制作発表レポート!