虫ん坊2004年4月号(月刊)
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新作アニメーション『火の鳥』高橋良輔監督インタビュー
高橋良輔監督

 話題の新作アニメーション『火の鳥』の高橋良輔監督は、虫プロ出身のベテラン演出家ながら、現在もアニメ界の第一線で活躍中です。若いアニメファンには、「太陽の牙ダグラム」「装甲騎兵ボトムズ」などのオリジナルロボットアニメの監督としてもおなじみではないでしょうか。
 今回「虫ん坊」編集部は、都内の録音スタジオにてアフレコ作業に大忙しの高橋監督を訪ね、『火の鳥』の制作裏話から、虫プロ時代のエピソードまで、色々なお話をうかがってきました。
【高橋良輔監督略歴】
 演出家・作家・脚本家。1943年1月11日、東京都足立区生まれ。
 '64年に虫プロに入社し、「W3」「悟空の大冒険」「リボンの騎士」「どろろ」など、数多くの手塚アニメの演出を担当する。虫プロ退社後はフリーの演出家として'73年「0テスター」で初監督。'76年5月には創作集団「スタジオあかばんてん」を設立。「太陽の牙ダグラム」「装甲騎兵ボトムズ」など、リアルロボットアニメの監督・原作者としても高い評価を得ている。

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■高橋監督が手塚作品にかかわるのは「どろろ」('69年)以来ということですが、今回、「手塚治虫原作」ということは特に意識されていますか?

(C)Tezuka Productions高橋:僕は、マンガ原作を監督するのって意外と少ないんです。今までもTVシリーズは石ノ森さんの「サイボーグ009」だけなんですよ。ですから、他の作品と比べて意識するってことはないんですけど、虫プロで手塚先生と一緒に仕事していて、そこから離れてずいぶん経ちますからね。そういう意味ではやっぱり意識しますよね、どこか。
今仕事してみると、「先生が生きていたらどういう風に言ってくれるのかな」とか、先生のチェックがないということがね、あらためて「先生が亡くなっちゃったんだなあ」と。そういう意識の仕方ですね。




(C)Tezuka Productions■なぜマンガ原作の監督作品が少ないのですか?
高橋:いや、本当のことを言っていいものかどうか……。演出がね、下手なんですよ(笑)。
 虫プロ時代に、演出家の人と自分の力というものをつい比べて、「(自分は)演出が下手だなあ」という思いがありましてね。なるべくやらないようにしてきたんですよね。でも虫プロにはもともと演出部員として入りましたから、「下手だからやらない」って言うと、アニメーションをやめなきゃいけないんですよ。だけど、アニメ界の周辺でゴロゴロしていたもんですから…そんな時に、TVオリジナルの仕事が開かれたんです。そうすると、演出の前に"物語を作っていく"っていう作業がありますよね。そこで、自分としては「オリジナル作品の方が自分に向いている」と思ったんですね。そういう判断があって、マンガ原作の演出が少ないんです。
 でもまあ、この仕事に入ったのは、手塚先生に憧れて虫プロに入った、ということがありますから、原点に戻ったみたいな気持ちがありますね。
(C)Tezuka Productions

■「火の鳥」の原作は、監督が虫プロで仕事をされていた頃から連載されていましたが、当時から読まれていましたか?
高橋:もちろん「COM」に連載されていた頃から読んでましたね。その後「COM」が終わって連載も色んな雑誌に移りましたけど、「火の鳥」はずっと読ませてもらってました。
■原作についてはどんな印象を持たれていますか?
高橋:人気マンガと「火の鳥」というのを少しわけていたんじゃないかな、って気がしますね。手塚先生は、マンガに対しては色んな考え方をしていたと思うんですよ。でもやはりマンガ家ですから、人気をすごく気にしていたと思うんです。ですから、他の商業誌ではなく、「COM」で連載としたということは「人気に左右されない作品作りをしたい」と考えたんじゃないかな、と僕は思ってるんですけど。手塚先生はエンターテイメントをはずしたことはないと思うんですけど、自分の思想というか、一番切実に考えているようなことを、より色濃く、素直に乗せられるものとして描いていたんじゃないかと思いますね。
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(C)TEZUKA PRODUCTIONS・NHK・NEP21
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