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虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

「一夜だけの舞踏会」©Tezuka Productions ・ designed by Kayo Horaguchi


 2016年11月に誕生40周年を迎えた『ユニコ』。その40周年を記念して2014年にスタートしたコラボレーションブランド「UNICO by Kayo Horaguchi」。
 ユニコが色鮮やかな目を惹くグラフィックとして生まれ変わり、スマートフォンケース、水着といった商品が販売されました。
 今月の虫ん坊では、イラストを担当したホラグチカヨさんが登場。ライセンス事業を担当する手塚プロ社員・深沢も同席し、一緒にユニコとのコラボレーションを振り返ります。



 プロフィール


ホラグチカヨ
アパレルデザイナーとして洋服、テキスタイル、ファッションイラスト、広告等の経験を経て、06’よりフリーのイラストレーター、グラフィックデザイナーとしての活動を開始。 広告、パッケージ、装丁等のデザインのほか、小物、インテリア、ステーショナリー、アパレル等の分野でも様々な企業とコラボレーションし自身のグラフィックを用いたグッズを商品化している。

WEBサイト:http://www.kayomaru.com/




●ユニコとのコラボレーションを振り返る

虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

   手塚プロダクション MDライセンス担当 深沢友里子                    ホラグチカヨさん



――

『ユニコ』とホラグチさんのコラボレーションのきっかけを教えてください。


深沢 :

 展示会で見たときに、色彩のセンスや作品全体の密度に一目惚れしてしまって。ぜひ、いつか一緒に何か生み出せないかなとチャンスを狙っていました。
 ユニコ誕生40周年記念の企画で、原作のクラシックなスタイルとは別に今の若い世代にも受けるユニコを展開しようと考えていた時に、ホラグチさんはどうかとピンときました。グラフィカルで現代的ながらも、温かみを感じることのできるこのテイストならば、原作のテーマに沿いつつも全く新しいユニコが出来上がるではないかと。メルヘンな世界観、動物や自然のモチーフが得意というところもぴったりですよね。


ホラグチカヨさん :
(以下、ホラグチ)

 ありがとうございます。コンセプトのみ提示されて描く広告などのお仕事とは違い、すでにキャラクターがしっかりと確立されているので、いかに『ユニコ』の世界観を受け取って、自分なりの解釈を加えて表現できるかを重要視したので、そういう意味では、普段のお仕事とは少し違う感覚で取り組むことができました。 『ユニコ』にはひとつひとつのお話にそれぞれテーマが隠されているので、まずはじっくり原作を読むことから始めました。


深沢 :

 原作を初めて読んだときの印象はどうでしたか?


ホラグチ :

 とにかく切なくて苦しくて、でも読み終えた後はとても優しい気持ちになれました。
 ユニコは、優しさを受けとめるとどんどん愛の力をもって人々を幸せにする健気な姿をみせますが、ユニコからパワーを与えられるキャラクターたちは、それを当たり前だと思ってしまうところがある。そんな彼らの弱さやずるさを見ると、人からの優しさや愛にどれだけ自分が鈍感だったのか、気づかされました。
 あとは、全体の色遣いが素晴らしいですよね。水彩であんなに綺麗な色が出せるうえ、配色のバランス感覚も、さすが手塚先生。私も最近はアナログに挑戦したいと思っていたので、勉強になります。



――

『ユニコ』のエピソードをモチーフとした描きおろし作品は、原作をどのように解釈しデザインへ落とし込んだのでしょうか。


ホラグチ :

「黒い雨と白い羽」は、小さな女の子チコをみんなで守り助けるストーリーの中に、環境破壊や自然保護といった大きなテーマが隠されているように思いました。
 人間と動物、妖精がいる森や、工場をメインとした機械といった異なる種別のそれぞれの世界にある愛のかたちや生きる力が混ざり合って、助け合い、思いあい、共存していくことでこの世界が形成されているのだなと改めて考えされられました。
 みんなの優しさと愛が繋がったとき、青空が広がって、たくさんのお花がぶわっと咲いたシーンがとても素晴らしく感動的でしたので、ここを中心にデザインに落とし込みました。


虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

「黒い雨と白い羽」©Tezuka Productions ・ designed by Kayo Horaguchi


ホラグチ :

「アゼンスの牙の物語」は、スフィンクスの子供であるピロが成長していく物語の中に、母の強い愛情、オーベロンとチターニアという些細なことでケンカをしながらも愛し合う夫婦など、いろんな愛の要素が出てくる賑やかなお話ですよね。シェイクスピアの要素が入っていたり。


――

読み応えのあるお話ですよね。


ホラグチ :

「強くなるために修行をするピロがつい楽な道に進んでしまおうとする幼さや、チターニアのわがままなど、自分にも当てはまる弱い部分がたくさん描かれていて、心をチクチクと痛ませながら読みました。でも、登場キャラクターのそういう弱い部分も面白おかしく描かれているので、困難にも立ち向かい乗り越えるピロの姿を見ていると自分の弱い部分も強くなるための糧にできるのだと思えました。
 最後のシーンで、ピロが小さな母親の像を作りながら言った「苦労をしたりつらいめにあうと おとなになれんだね」というセリフがとても印象的でしたので、このシーンを汲み取って、ユニコと出会うことで少し大人になれたピロと、過去の経験や思い出をひとつの画面に描きました。


虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

「アゼンスの牙の物語」©Tezuka Productions ・ designed by Kayo Horaguchi


深沢 :

 この「アゼンスの牙の物語」は、まさにホラグチさんの作風がバッチリと決まっているなと思いました。カラフルな中に黒を差し色で入れているから、画面が引き締まるし、メルヘンで楽しいだけではなくすこし哀愁も感じる。


――

ユニコとのコラボレーションを経て、印象に残った、または好きなエピソードはありますか。


ホラグチ :

「描いてはいないのですが、一番好きなエピソードは、「ふるさとをたずねて」なんです。まず、このお話に出てくるゼリーと子供たちがすごく可愛くて。


深沢 :

 ユニコーンの主食である、食べてもなくならないゼリーですよね。


ホラグチ :

 そうです。あのゼリーの強いマゼンタがすごく綺麗で、目にパッと入ってきますよね。お話全体がカラフルで美しく楽しそうなんですけど、実はとても切ない内容なんですよね。
 特に、お母さんとの会話シーン。このユニコの言葉でハッと気づかされ、幸せとは何なのか、ぐるぐると考えてしまいました。


虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

「ふるさとをたずねて」より


ホラグチ :

 いつも一人ぼっちのユニコが、この日だけ家族に会ってとても幸せなひと時を過ごしたのに、故郷から帰らなければいけないときの「どうせここのことはまた忘れちゃうんだから」という諦めきってしまったかのようなユニコの言葉に、寂しさ、強さ、決意のようなものを感じました。本当に、ユニコ苦労してるなぁ……。



――

子供のときに読んでたいら、きっと意味がわからなくて読み過ごしてしまうのではないかというポイントが結構出てきます。


ホラグチ :

『ユニコ』は少女漫画で連載していましたけど、結構大人向けな作品なのではないでしょうか。


深沢 :

 大人になってから読むからこそ引っかかる何かがありますよね。


ホラグチ :

次はぜひ、このお話を描いてみたいと思います。



●アパレルデザイナーから、独立へ

虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー


――

ホラグチさんのデザイナーキャリアについてお聞きしたいと思います。アパレルデザイナーを経て現在はフリーとなり、イラストやグラフッィクと幅広くデザイン業を出掛けていますが、最初にデザインに興味を持ったのはいつでしたか?


ホラグチ :

 子供の時から絵を描くのがすごく好きだったということもあり、その頃から漠然と将来は絵に携わる仕事に就きたいなあと思っていました。
 とにかく、洋服を描くのが好きだったんです。自分でデザインした服を女の子に着せた絵をよく描いていました。



――

物心ついたときから服のデザインをしていたのですね。


ホラグチ :

 そうですね。子供のころからやりたいことは変わらず、服飾の専門学校に通いました。学校では、ファッションイラストレーションを専攻していました。洋服を作る勉強ももちろんしていましたが、やはり絵を描くことにこだわり、最終的に専攻したのがファッションイラストでした。学生時代のことなので授業の記憶は曖昧なのですが……(笑)。



――

卒業後はアパレルデザイン会社へ進みましたが、その後フリーになる転機はいつだったのでしょうか。


ホラグチ :

 アパレルデザインの仕事を続けていくうちに、自分でイラストを描き、それをTシャツの柄やテキスタイルに使うという業務を担当することになったんです。それでイラストを描く楽しさに改めて気づき、仕事とは別でどんどん描くようになりました。
 趣味の作品でも描いたからには作品を見てもらいたいという思いがあり、グループ展に参加することも増えていきました。


深沢 :

 その行動が独立への道だったのですね。


ホラグチ :

 アパレルの仕事を辞め、1年だけと決めて趣味での展示や販売を中心に、本格的に活動をはじめました。展示への参加を続けていたら、少しずつお仕事をいただけるようになり、そのまま、現在に至ります。


深沢 :

 うーん、やっぱり自分の作品を世にアピールするのって大事なんですね。



――

今までご自身が手掛けた作品・お仕事で、印象に残っている作品はありますか?


ホラグチ :

「日本を楽しむ旅に出よう」という作品です。今まで西洋の風景や自然をテーマにしたものが多かったのですが、先方から日本旅行をテーマに描いてほしいと言われて、自分なりに日本文化を噛み砕いて描きおろしました。


虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

   「日本を楽しむ旅に出よう」 エポック社にて、ジグソーパズルが発売中



――

メルヘンな世界観を作風とするホラグチさんには、“日本”というテーマは珍しいのではないでしょうか。


ホラグチ :

「和」をテーマに描いたのはとても珍しいです。普段は描かないような、日本を象徴するものをたくさん描き、日本モチーフの面白さなど新しい発見になりました。最近は、大仏を描くのにハマっています。
 今後は、メルヘンだけではなく幅広い世界観の作品作りができるようになりたいと思う良いきっかけになりました。


深沢 :

「和」といえば、「黒い雨と白い羽」と「アゼンスの牙の物語」は、手塚治虫×キモノラボの振袖の柄に使用されました。



――

この2つのイラストが起用されたのはなぜですか?


ホラグチ :

 キモノラボさんからお話をいただいた時、生地の候補として何点かデザインのご提案をいただきました。どれも素晴らしくとても迷ったのですが、私自身もかなりお気に入りのイラストということもあり、私から「黒い雨と白い羽」と「アゼンスの牙の物語」を選ばせていただき、最終的にこの2点に決まりました。


虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー


虫ん坊 2017年2月号 特集1:UNICO by Kayo Horaguchi ホラグチカヨさんインタビュー

手塚治虫×キモノラボのコラボ振袖


深沢 :

「UNICO by Kayo Horaguchi」の振袖は、キモノラボにて販売、レンタル受付中です。華やかな色合いで、これからの卒業シーズンなどにぴったりだと思います。



キモノラボHP:手塚治虫×コラボキモノ振袖


――

最後に、コラボレーションを振り返っての一言をお願いします。


ホラグチ :

 ユニコの存在は知っていたのですが、メルヘンでピンクとブルーのコントラストがかわくて……というぼんやりとしたイメージしか持っていませんでした。今回、コラボのお話をいただいたことが読むきっかけになり、今やすっかりユニコファンです。
『ユニコ』は深く読ませるお話が多く、繰りかえし読むことで感じ方や気づくことが違ってくる作品だと思いましたので、この先も長く読み続けたいと思います。素敵な作品とご一緒させていただき、本当にありがとうございました。


深沢 :

『ユニコ』誕生40周年アニバーサリーは2017年10月末まで続きます。「UNICO by Kayo Horaguchi」もまだまだ展開をしていく予定です!



――

ユニコ推しのみなさん、続報をお楽しみに!


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©Tezuka Productions ・ designed by Kayo Horaguchi



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