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虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

 男? 女? “第三の性”誕生?!
 手塚治虫流ナンセンス風刺マンガの傑作である『人間ども集まれ!』。
 約50年前に描かれたとは思えないほど今現在の状況を映し出しているこちらの作品が、2016年10月、まつもと市民芸術館にて舞台化されます。
 手掛けるのは、松本を拠点に活動している劇団「TCアルプ」と脚本・演出を担当する木内宏昌氏。その他、個性的な俳優陣を迎え、様々なワークショップを重ねながら、いまここでしかできない『人間ども集まれ!』を作り上げていきます。
 今回の虫ん坊では、2015年に舞台『アドルフに告ぐ』の脚本も手掛けた木内氏を迎え、新たな作品の魅力や見どころをお届けしたいと思います!


 関連情報


まつもと市民芸術館 公演情報: http://www.mpac.jp/event/drama/16445.html
「人間ども集まれ!」舞台化!: http://tezukaosamu.net/jp/news/i_403.html

オススメデゴンス! 「人間ども集まれ!」: http://tezukaosamu.net/jp/mushi/201607/intro.html


 プロフィール


写真:片山貴博

脚本・演出:木内宏昌
劇作家・翻訳家・演出家/上智大学文学部卒。2002年からtptに参加し、海外戯曲の翻訳、演出に取り組む。ハイナー・ミュラー作『カルテット』、マヤコフスキー作『ミステリア・ブッフ』、マヌエル・プイグ作『薔薇の花束の秘密』、ミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』などの演出、ユージン・オニール作『楡の木陰の欲望』、『夜への長い旅路』などの翻訳台本、ホメロス原作『イリアス』、高橋克彦原作『炎立つ』、手塚治虫原作『アドルフに告ぐ』などの脚本がある。2014年にニーナ・レイン作『Tribes トライブス』、ジャン・コクトー作 『おそるべき親たち』で第7回小田島雄志・翻訳戯曲賞。2014年10月、串田和美演出の『K.テンペスト』では演出助手を、2016年3月、エドワード・オルビー作『海の風景』では串田と共同演出を務める。



虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー


――

かねてから『人間ども集まれ!』の舞台化を構想していたそうですね。


木内宏昌さん:
(以下、木内)

『火の鳥』や『ブッダ』など、代表作品の舞台化はたくさんありますが、手塚治虫さんはこういうのも描いていますよと伝えたい作品として『人間ども集まれ!』の舞台化をずっと考えていました。
数多くある手塚作品の中でも『人間ども集まれ!』は、あまり知られていないし、意外性もある。だって、タイトルがすでに面白い。こんなに力のあるタイトルってなかなかないですよね。


――

確かにインパクトもすごいし、あきらかに人間ではない何者かが人間に対して発していますよね。
今回、なぜ、まつもと市民芸術館(長野県)での公演となったのでしょうか。


木内:

まず、まつもと市民芸術館から、TCアルプ公演の演出をやりませんかと声を掛けていただきまして。そこで具体的に何をやろうかという話になったときに、出演者であるTCアルプのメンバーと好きな作品を持ち寄ってプレゼンテーションをしあう会をすることになったんです。そのときにそれぞれ、4・5作品ずつ提案しあったんですけど、『人間ども集まれ!』はあえて紹介するのをやめたんです。


――

えっ! なぜですか。


木内:

その会には持っていってはいたのですが初めてTCアルプ公演の演出を手掛けるにあたって、実験的な作品が良いのか王道が良いのか、彼らに一番合ったものが良いのかと色々な可能性を考えていた段階だったので……。
その時には作品が決まらず、再び集まったときにはじめて『人間ども集まれ!』のお話をしました。
まつもと市民芸術館の芸術監督の串田和美さんとプロデューサーも面白がってくださり、串田さんからは、この作品は1年くらいの間で完成させなくても、長い時間をかけて育てていけるような、そんな作品との付き合い方ができる題材じゃないかと言ってもらえて。
早速、取り掛かかりますという流れではじまりました。


――

まつもと市民芸術館の関係者の方々もこれは面白そうとなったんですね。


木内:

手塚先生のあの作品かとすぐに思いあたる感じではないし、原作をご存じなかったというところでまたインパクトがあったんじゃないでしょうか。


――

最近、松本市は街ぐるみで演劇を盛り上げていると聞きましたが、実際に行ってみてどうでしたか?


木内:

松本はものすごいですよ。人口24万人の都市としては特例的だと思いますね。
例えば、芸術館で歌舞伎を公演すると、関わっている方が、市民の方々やボランティアの皆さんの参加人数を合わせて、数百人単位になるわけですよ。歌舞伎以外にも、2000人以上の人が集まる演目(隔年で開催される演劇・音楽・サーカスが融合した『空中キャバレー』(串田和美構成・演出))があります。人口の約1%は足を運んでいることになる。東京で1%といったら、十万単位になるわけで、それって、本当すごいことだと思うんです。
喫茶店やお店に入ると、演劇のチラシやポスターが貼ってあるのは当たり前だし、県外から来たと知ると、芸術館に来ていらっしゃるんですか? と聞かれたり……。
それはたぶん、串田さんをはじめ、芸術館を中心に活動してきた方々やTCアルプのみんなの積み重ねだと思うんですけど、すごく地元に浸透しているというか、大きな存在となっていますよね。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー


――

手塚治虫作品の中で一番好きな作品はなんですか?


木内:

すごく迷いますね。『リボンの騎士』や『鉄腕アトム』は子どもの頃からテレビアニメーションとして観ていたし、『ブラック・ジャック』を読むためにチャンピオンを買っていたりしたので。でも、いまはやっぱりどうしても『人間ども集まれ!』になっちゃいますね。一昨年、『アドルフに告ぐ』に携わっていたときは、ずっとアドルフを読んでいたし、そのときそのときでイチ押しが変わっていく感じですね。
しかも、僕、以前に舞台『アドルフに告ぐ』の脚本をやらせていただいたときに、手塚プロダクションの方が稽古場にいらして、その時に、『人間ども集まれ!』が好きなんですと直接お伝えしたら、キワモノが好きなんですか? って聞かれて(笑)。


――

笑。
舞台『アドルフに告ぐ』のパンフレットでも『人間ども集まれ!』について触れていましたね。


木内:

そうなんです。テーマに戦争を扱っているというものありましたしね。 天下太平みたいな主人公って、まず子ども向けのアニメになるような原作の主人公とは違うじゃないですか。そこもいいですよね。


――

確かに子どもにとってのヒーロー像にはあてはまらないですね。


木内:

どうしてこういうキャラクターになったのか、意図は分からないけど、いかにも“昭和のおっちゃん”という感じですよね。


――

『人間ども集まれ!』の中で一番好きなのはどのキャラクターですか?


木内:

ミンミンですね。ミンミンは面白いです。役者目線だと、木座神かな。彼は多分、メフィストフェレスなんじゃないのかな。
メインで出てくるキャラクターは本当に面白いし、とにかくチャーミングですよね。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー


――

前回の『アドルフに告ぐ』も今回の『人間ども集まれ!』もそうですが、マンガ原作を舞台化するにあたって、作品と向き合う時に大切にされていることってありますか。


木内:

いま、マンガが原作の演劇・舞台化ってすごく盛んですよね。
実際に舞台化する際に僕が考えているのは、マンガの味わいのまま、2次元のものを2.5次元化する方法もきっとあるだろうと思う一方で、この作品はマンガでしか出来ないことをやったから面白いのであって、演劇でしかできないやり方で表現しなければ、作品の本質には近づけないんじゃないのかなって。
時間の表現であったり、コマ割りの仕方であったり、絵と言葉のバランスであったりというのは、どうしてもマンガでしか出来ないことですよね。つまり、俗に名作と呼ばれているものは、おそらくその媒体・メディアの本質に即した表現をしているからなんだろうと思っていて。
マンガはめくり直せるし、一晩中ずっと読んでいられるけど、舞台はめくり直しが出来ないメディアなんですよね。


――

現実は時間が進んだら戻せないし、生身の人間ですもんね。


木内:

『アドルフに告ぐ』の脚本を手掛けたときは、最初、原稿用紙で350枚を書き上げました。演出家の栗山民也さんにそのまま渡したら、これ、このまま演じたら6時間掛かるよって言われて(笑)。
その後のやりとりのなかで、物語として全体を追うのではなく、一コマ一コマ、シーンを読むようにしました。一コマを切り口とした入り方をしていくなかで、この一コマをやりたいんだっていうのを選べたときから、選んだコマとコマを繋げていくような感じで自然に筆が動いていったような気がします。


――

『アドルフに告ぐ』は作品のスケールもありましたものね。やりたい一コマというのはどのシーンだったのでしょうか。


木内:

アドルフ・ヒットラー・学校シューレに通っているヒットラー・ユーゲントの子どもたちが整列して行進をしているときの、「ザッザッザッザッ」という足音をみたときに、これだ! って感じました。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

手塚治虫漫画全集『アドルフに告ぐ』3巻より


この音が欲しい、この音は舞台で表現したら面白いなと。足音って他のマンガではあまり表現されていない気がするんです。
この「ザッザッザッザッ」という足音は『アドルフに告ぐ』の舞台のオープニングに使わせていただきました。
手塚先生がマンガを描いていたときって、今の少年マンガの過剰さよりは、ちょっと抑えめだったじゃないですか。その時代に、『新宝島』で見開きを使って、車がビュンっと走ってくるシーンを描くというのが昔はもう事件だった訳です。この見開き一コマのすごみというのを舞台で表現できたらと思います。


――

『アドルフに告ぐ』と『人間ども集まれ!』は特にどういうところに違いがあると思いますか?


木内:

『アドルフに告ぐ』の話の場合は、時代であったり登場人物であったり、史実を元に描かかれたものだけに観客と共有できる要素がすごくたくさんありますよね。
特に意識して、演出家ともよく話し合っていたし、稽古場で役者にも伝えていたことなのですが、演劇には、“歴史を記録し再現していく”という役割があると思っていて。それって、人間だからこそできるひとつの芸術なんですよね。
今回の『人間ども集まれ!』の場合は、手塚先生がだれも見たこともないものをみんなにみせようとしているところから始まっていると思うんです。見たことのないその世界というのは、作り手の頭のなかで生みだされたもの、提示されたものなわけだけど、それが、未来を予測していただとか先見性があるとかいう単純なことではなく、描かれているのは普遍的なものなんです。
例えば、どうして戦争をするの? という疑問がありますよね。これに対して、作品では最初から戦争で人が死ぬのは嫌だよねって、悪い奴らもみんな言っているわけです。でも、人のかわりになるものが戦って死んでくれればいい訳で、戦争はやりたいと。じゃあ、人のかわりになるものを作って武器として売ればいい、みんな分かるでしょ、儲かることで国が強くなるでしょって、こんなにさらっと人間がなぜ戦争をするのかを最初の第1章で描いちゃっているんですよ。
人間とは別の存在の、第三の性をもった「無性人間」たちの創世記のような感じがしました。
大河ドラマだし、スターウォーズですよね、これは。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー


――

『人間ども集まれ!』を読んで気になったシーンはどこですか?


木内:

まあ、変な箇所なんですけど、最後の方で天下太平がお坊さんに会うシーンがありますよね。いかだでシンガポールに向かうんだけど、途中、川だと思っていた湖をぐるぐるとまわり続けて……。だけどこれ、冷静に考えるとずっと何か月もまわっていた訳ですよね。この作品の時間の使い方は、こういう感覚なんだなあと思いました。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

手塚治虫漫画全集『人間ども集まれ!』2巻より


――

3ヶ月ですね。そこ、サラって読んでしまいましたけど、実は3ヶ月もまわっている訳ですもんね。そういう時間間隔が確かに恐ろしいというか……。


木内:

進路変更して別の方向からいけば違うところに抜けられるかも知れないという選択をせず、ずっと同じ場所をグルグルしているだけなんですよ。
ここは実はものすごく怖いシーンで、時間の流れというのは、たいてい気付かぬうちにずっと同じ毎日を送っていて、気付いたときには長い時間が経過しているものなんだよっていわれている感じがしたんです。ね? 怖いでしょう(笑)。


――

別のインタビュー記事の中で「無性人間の叫びは現在の自分たちに向けられている気がする」と語っていましたが、そのあたりを詳しくお聞かせ下さい。


木内:

いつもどっち側に立ってるんだろうって考えるんです。善悪もそうですし、抑圧している側なのか搾取している側なのか、富を得ている側なのか奪われている側なのか……。作品が描かれた1967年の時点で、「無性人間」という人間に使われている側の叫びを描いているのはすごいなと思いました。
こういう声は実際にあるんだろうなと思っていて、子どもたちは自分たちを作った側の大人たちに対して「怒り」をもっているというのをどこかで感じるんです。つまり、子どもたちって大人が作っているんだよっていう感覚を表現している気がするんですよ。
自分が子どものときは、父親たちの給料がどんどん上がっていたと聞いているし、時給も着実に上がっていたし、うなぎ昇りで良くなってきていたわけだけど、僕が世の中に出てからはアルバイトの時給は全く変わらないで止まってしまっていて。以前は、圧倒的優位の立場で父親の世代は子どもの世代に接していたけれども、いまは違うし、明るい未来は描けなくなっていますよね。
親の世代って、得体の知れない世代に対して、常に名前を付けているでしょ。ゆとり世代とか悟り世代とか、僕らのときには新人類とかね。それがこの物語ではたまたま「無性人間」という名前をつけただけで、何も変わらないですよね。
作家が未来というものを思い描いたときに、都市にチューブが通っていて、そこを車ではない車が走っているというような、手塚治虫が描いた未来都市・メトロポリスはいまの作家は描かないじゃないですか。でも、ディストピアは描けるんです。
そう考えたときにこの作品を読むと、子どもたちが大人たちを糾弾して裁判に掛けているようにも見えて、これがね、ゾクっとしますよね。


――

無性人間たちは反旗をひるがえしていますもんね。


木内:

無性人間たちは、人間たちから同じ権利をあげるよって言われたときに、同じ権利なんかいらないから、かわりに人間を去勢してっていうわけでしょ。マンガだけど、本当にすごいし、真実の声だと思うんです。今までの、自分たちが世界を作っているという我がもの顔な意識に対して、新しい社会の在り方のような、全く違うことを持ち込んで来ている。これは面白くもあるけど、とても怖くてゾクっとするんですよね。それをどうやって演劇で面白くしようか考えています。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー


――

今回はTCアルプのメンバーをはじめ、他の出演者ともワークショップを重ねて舞台を作りあげるという試みをされていますが、ワークショップでの様子を教えて下さい。


木内:

これまでに2回、6日間ずつ開催したんですが、1回目に関しては、みんなで集まって共有した時間の半分くらいはディスカッションをしていました。


――

その時にはみなさんは原作を読まれていた状態で来られていたんですか?


木内:

もちろん。それぞれ感想を言い合ったりしました。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

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ディスカッションの様子
(クリックで拡大)


――

みなさん、どんな反応だったのでしょうか。


木内:

性がないなんて、俳優もなかなか経験しないですよね。猫とか犬とか、動物の役っていうのは来るんですよ、たまに。でも、性ってなかなか超えないんですよ。ホモセクシャルであったり、バイセクシャルであったり、そういうのはありますけど、男の人にはだいたい男の役が来るし、女の人には女の役が来るというのが95%くらいです。性がない、「無性人間」という役がきた場合、どうする? というところからみんなで考えました。
メンバーのひとりが、はじめ、無性人間のことを「むしょうにんげん」って読んでいたらしく、つまり、無性になにかしたくなるほうの無性と思っていたと。

虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

この人たちは無性に何かがしたくなる人たちなんじゃないかって。おもしろいでしょ? 決して、エネルギーが無いわけではなくて、ロボットとは全然違う、とても感情がはっきりあるし、この世の中で一生懸命生きていこうとしているし、ものすごくたくましいですよね。
大伴博士がいいますよね。無性人間たちは、集団行動を取るとか絶対服従をするとか、命令に従うことが気持ちいいからそうしているんだって。それはいまの若者たちは……というような、大人側からみたときの彼らの見え方なんだろうなと。無性人間側からしたら、違うんです。母親との繋がりは実はとても強いし、お父ちゃんのためになんでもしてあげたいって言っている。


――

そのために人まで殺せますからね。

木内:

そんな感じで無性人間ってそもそもなんだっていうところから、ずっと話し合っていて。性がないって、どういうことなんだろうねって。
それから、原作に描かれているシーンを選んで、エチュード(即興演劇)を作るということをやっていったんですよ。原作に描かれていることも、原作に描かれていないこともやってみよう、とかね。想像を膨らませて試行錯誤を重ねていきました。

――

どのようなエチュードを作られたんでしょうか。


木内:

もし、自分の家にたくさん無性人間がいたら……とか、無性人間って具体的に一体いくらするんだろうとか、買った無性人間を自分の家に置いて一緒に生活することをやってみるとか、ある一コマを切り取って提案した役者もいたりして、数十本エチュードを作りました。
原作に、初めての無性人間である未来が学校に入るとき、保護者会と先生がどういう風に扱えばよいのか話し合う場面があって、そこをもとに、保護者会はどんな風に無性人間の子どもたちを迎え入れるかというのをエチュードで演っていたチームがあって。無性人間も、だんだん時代によって変わっていくはずじゃないですか。最初のひとりが入ってきたときと、無性人間が世の中に広まっていって、市民権を得るようになってきたときとは全然ちがうでしょう。それを何年間かにわたる保護者会での会話として演じているの。ストレンジャーが社会に入ってきたときの社会側に立っている人たちの様子がすごくリアルで。それがすごく面白かった。
あとは、どうやって、プシューーーッって、おっぱいから空気が抜けていくのをやるのか試したり(笑)。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

手塚治虫漫画全集『人間ども集まれ!』2巻より


――

笑。
同じ顔が何人も出できたりしますしね。


木内:

正直、『人間ども集まれ!』の登場人物を演じるのは難しいと思います。『アドルフに告ぐ』の方が、まだちょっとやりようがありますよね。人間像としてとらえやすいというか。でも、今回はキャラクターだけがあるみたいなものでしょ。これを演じるのには勇気と知性がすごくないと、そう簡単にはできないんじゃないかな。
でも、松本のTCアルプのメンバーなら、これが出来ると思ったんですよね。普通のカンパニーだったら、ちょっと、持っていきにくい(笑)。
あと、ちょっとね、顔が本人たちに似ているんですよ。たいたい、アルプのメンバーみんなね、登場人物のだれかに当てはまる顔をしているんですよ。
僕が持っているのは当時の別冊コミックの『人間ども集まれ!』で、天下太平がドカンと中央に座っている表紙なんですけど、それがね、特に似ているんです。でも、手塚治虫さんのマンガのキャラクターに似ているって言われたことある人って意外に多いみたいで。


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

木内さんが実際に所有する『人間ども集まれ!』の初版版とTCアルプの佐藤卓さん
(クリックで拡大)


――

最後に舞台を楽しみにしている虫ん坊読者にひとことお願い致します!


木内:

手塚ファンの方やそうではない方でも、足を運んで観ていただけたら本当にありがたいです。手塚さんが伝えようとしたことを一生懸命読んで感じて演劇として表現したいと思っていますし、結果、ああ、『人間ども集まれ!』だったなって思ってもらえたら嬉しいですね。
この作品の中には他の手塚作品にも通じるものがあるんですよ。そういう要素がたくさん入って凝縮されている、それが『人間ども集まれ!』な気がします。舞台化することで、原作にも興味を持ってもらえたらと思います。


――

また、手塚作品を手掛ける機会があるとしたら、今度はどの作品を演劇にしてみたいですか?


木内:

え〜〜〜〜っ、また、だいそれたことを(笑)。
そうですね、10月に公演される『人間ども集まれ!』を、ここで完結させるのではなく、この先も僕たちに育てさせて欲しいです。
だって、とても1回で扱いきれるテーマではありませんから。是非、『スターウォーズ化計画』を実行したいです。
エピソード7くらいまで(笑)。


――

是非、シリーズ化をお願いします!!!



 イベント情報


虫ん坊 2016年9月号 特集1:舞台『人間ども集まれ!』 脚本・演出 木内宏昌さんインタビュー

TCアルププロジェクト
『人間ども集まれ!』

公演期間:10月20日(木)19:00/21日(金)14:00/22日(土)13:00
会場:まつもと市民芸術館 小ホール 〒390-0221松本市深志3-10-1
    http://www.mpac.jp/access

原作:手塚治虫
脚本・演出:木内宏昌
監修:串田和美
出演:TCアルプ(近藤 隼 佐藤 卓 細川貴司 下地尚子)
   池田有希子 内田亜希子 幸地キーシャンドゥ真希 佐藤 友
   久松信美 深貝大輔


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