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虫ん坊 2011年9月号 特集2:高田馬場の新銘菓! 「くりまんアトム」の秘密!

虫ん坊 2011年9月号 特集2:高田馬場の新銘菓! 「くりまんアトム」の秘密!

この季節は涼しげな竹の飾りが目印。また、入り口にはアトムのディスプレイがお出迎え! くりまんアトムの販売に力を入れてくださっているのが分かります。

 高田馬場地元の方なら、もしかしたらすでにご存知かもしれませんが、毎年4月に限定販売で登場していた和菓子司青柳の「くりまんアトム」。なんと今年からこの銘菓が通年で販売されることになりました!
 そこで、虫ん坊では、この「くりまんアトム」を取材、2代目社長の飯田幹夫さんに取材し、お話をうかがいました!
 さらにはお店の工房にも潜入! 普段なら見られない「くりまんアトム」の出来るまでを特別にご紹介しちゃいます!

虫ん坊 2011年9月号 特集2:高田馬場の新銘菓! 「くりまんアトム」の秘密!


関連情報:

□■商品情報■□ アトムのお饅頭 (8月5日追加情報!)



◎御菓子司「青柳」誕生秘話

虫ん坊 2011年9月号 特集2:高田馬場の新銘菓! 「くりまんアトム」の秘密!

インタビューにお答えいただいた、株式会社青柳の取締役社長、飯田幹夫さん。

——青柳というお店について、おしえてください。

飯田: このお店は、大正14年に、同じこの高田馬場の場所に創業しました。私で2代目になります。
 青柳、という名前の由来は、もともと名古屋に「ういろう」というお菓子がありますでしょ。あれで有名な「青柳」というお店がありますが、それに習って東京にも「青柳」という名前のお菓子所が、明治時代にたくさん出来たんです。
 明治時代に出来た「青柳」から、銀座、三田、青山にあった大きな3店舗から暖簾分けしたお店が多く、私の父が創業したこの「青柳」は青山の青柳から暖簾分けしてもらったお店なんです。
 その後、昭和25年の終戦直後、物資不足で原材料の調達なども困難になった際、小豆などの原材料を共同で購入するべく、都内48店舗の「青柳」で、「青柳のれん会」という組織をつくりました。こののれん会は、三田の青柳さんが初代会長を務めましたが、父も副会長を務めたんですよ。



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青柳の創業当時から同じレシピで作り続けているという伝統的なお菓子。


 三田の青柳さんは、25年前に和菓子屋さんをやめてしまって、その後は私どもが会長を務めさせていただいております。
 和菓子屋さんは、どこも後継者不足に悩んでいます。都内の「青柳のれん会」も14店舗となってしまいました。もっとも、「青柳」各店舗から暖簾分けしたり、たまたまご自分の姓が「青柳」だったり、ということで、のれん会に入っていなくても「青柳」と号しているお店も何軒かあります。


◎御菓子司「青柳」誕生秘話

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 これが、手塚先生が好きでよく店舗まで食べにきていた、というお菓子、更級! お立ち寄りの際には、くりまんアトムと一緒にこちらもどうぞ! 先生になった気分で召し上がれ!

——手塚治虫とも縁が深いお店と伺っていますが。

飯田: 虫プロダクションが廃業になったころ、手塚先生がたまたまこの早稲田通りをタクシーで移動していたときに、建築したてのセブンビルに「テナント募集」の看板が出ているのを見つけて、手塚プロダクションの事務所を開いたそうですが、私どものお店はそのセブンビルのすぐお向かいなものですから、そんなご縁でよくお菓子を買いに来てくださっていました。原稿執筆の合間に、一休みするためにいらしては、お店でおまんじゅうを食べていかれたんですよ。


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 こちらも、青柳創業当時から同じレシピで作り続けているお菓子、大栗まんじゅう。看板商品でもあり、東京で青柳といえば栗まんじゅうのお店、ということです。くりまんアトムはこれを原型に、アトム型にしたものです。くりまんアトムのお兄さんにあたる、というわけ。


 実は柳月ビル(当社ビル)に、私と友人とで共同経営していた洋食屋もありまして、そちらにも先生はよくいらっしゃっていたようです。先生は気取らない性格の方で、気さくにいろいろなお話をしてくださったことを覚えています。私が商店街の青年部長をしていた頃に、子供祭りの行灯に貼る為に、セル画を何枚かいただけないか、というお願いにも快く答えてくださいました。他にも、商店街主催の夏祭りに映写機とフィルムを貸し出してくださり、映画上映をしたり、子供たちのためにセル画塗りの体験コーナーを開いてくれたりもしましたよ。


◎くりまんアトム、誕生!

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くりまんアトムと大栗まんじゅうをならべてみました。

——「くりまんアトム」を作ったきっかけは?

飯田: そもそもの発端は、平成6年に、この高田馬場商店街のアーケードが取り外されて、オープンモール式になったとき、新宿区の商店街診断の方に診ていただいたのですが、「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるさんの生まれ故郷である境港市の商店街の事例を取って、高田馬場も鉄腕アトムで町おこしをしたらどうか? というアドバイスをいただいたんです。
 昔のご縁もありましたし、手塚プロダクションにご相談に伺ったところ、OKをいただき、町おこしに着手したのですが、その頃は高田馬場の駅も今ほどきれいではなくって。
 まず、駅前をきれいにして、駅から小滝橋方面に伸びる歩道も広げたりしまして、商店街に来ていただきやすい道を作りました。2001年にはJRにもご協力いただき、ガード下に手塚プロダクション制作の壁画をかけ、さらに広げた歩道の舗装をタイル張りにして、街灯にキャラクターの看板を取り付けました。今のJR高田馬場駅の発車音は、「鉄腕アトム」の主題歌ですが、この音源も商店街でお金をだして作りました。
 そんな風にして、町おこしを進めていたところ、2003年4月7日がアトムの誕生日なのでその日に合わせて何か特別な、アトムにちなんだ名物を作りたいな、ということになり、「くりまんアトム」を企画したんです。


◎くりまんアトムの試行錯誤

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——開発にあたって、なにかご苦労はありましたか?

飯田:  「アトムの栗まんじゅうを」といっても、焼印を入れるだけでは面白くありませんから、ぜひ、アトムの顔の形をしたおまんじゅうを作ろう、と思ったのですが、初めは抜き型もなく、職人が一つ一つ手で形を作っていました。しかし、これには出来不出来があり、初めはネコみたいな顔になってしまっていました。手間もずいぶんかかりましたしね。
 誕生日の4月7日から発売したのですが、その前にNHKが取材に来てくださいまして、発売日にはお店の前に行列ができましたよ! そのとき来てくださった中の数名は、毎年ご注文をいただいています。北は北海道から、南は大分まで、遠方から来てくれた方もいらっしゃいました。
初めの年は、4月のみの1ヶ月限定商品として売り出したのですが、一月で三、四千個売れました。それで、毎年4月限定で売り出すことになり、抜き型も作らせていただきました。型をつくってからは、品質も安定したものを作れるようになりました。


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——今年、年間を通じて買うことが出来るようになりましたね。

飯田:今年、手塚プロダクションから、「うちのお土産としてもぜひ使わせていただきたいので、通年で作ってはいかがでしょうか?」といううれしいお話をいただき、一年を通して作ることになりました。それまでは4月のみの発売ということで、お客様も一度にたくさん買っていかれたもので、そのため毎年4月はほぼ、「くりまんアトム」ばかりを作っておりましたが、今後はスタンダード商品として、一日いくつずつ作ればよいかを探りながら、ローテーションが組めるようになるので、大変ありがたいですね。

 現在では、お店での売れ行きが、1日に10折(セット)くらいですね。ご来店のお客さんは、午前中がやはり多いです。会社にご挨拶に行かれる際に、高田馬場のお菓子として、ご購入いただくお客様が多いみたいです。
 午前中の2時間に、一日の半分の売上になり、あと2時から6時で残り半分を売上げます。2時以降にご購入のお客様は大体、お土産用とか、ご自宅のおやつ用に買っていかれるみたいですね。
 あと、企業様や小売店などへの「おさめ」という、まとめてのご納品先が何件かあります。手塚プロダクションからも、イベントやお店などでの取り扱いを依頼されたこともありました。最近では、インターネットショッピングも対応するようにしていますので、遠方でご来店いただけない方もぜひ、買っていただきたいです。

くりまんアトムは、以下のサイトより購入することができます! ぜひご覧ください。

株式会社青柳 商品紹介ページ


くりまんアトムの出来るまで!


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ここは和菓子処 青柳さんの工房です。これから「くりまんアトム」を作っていただける、ということで、お邪魔しています。
 現在、工房で和菓子をつくっていらっしゃるのは、三代目店長の飯田さんと、職人の落合さんのお二人。広い調理台の上には、「くりまんアトム」の元らしきお団子が整然と並んでいます。
 以下、写真とともに順にご紹介していきます!


まるいおまんじゅうのもと

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 こちらがくりまんアトムになる前の姿。国内産白手亡豆(しろてぼうまめ)からとった白餡に、粗く刻んだ茨城県産の栗を使った餡が入った、黄色い丸いお団子です。
「今日のは手づくりですが、これを作れる機械もあります。それを使うと1時間に1000個できますが、アトムの形に作るのは手仕事です」とのこと。隠し味としてバニラエッセンスが入っているので、焼くとあまーい香りがします。

型。

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 合羽橋で特注で制作した、という一点物の抜き型。元となるフィギュアを参考に、アトムの顔を立体で現しています。壊れると二度と同じものは作れないので、壊れる前に発注しなくてはいけません。
 型が出来る前は、職人さんが一つ一つ顔を手作りしていたそうで、初めのバージョンはまるでネコみたいなアトム!? だったとか。
 型で抜けるようになっても、お饅頭は焼くと形がすこし膨らむので、一つ一つ違った表情になります。


やじるし


型抜き1

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型とおまんじゅうのもと、両方に粉をふり……

型抜き2

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型におまんじゅうのもとを詰め込みます。

型抜き3

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 あまった粉を刷毛で払った後……


型抜き4

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 型をくるり、とひっくり返して、カン! と打ち付けると、おまんじゅうが抜け出てきます。
 このあたりは早業です!

型抜き5

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 とがっている角の部分をちょいと指で直して、できあがり。


やじるし


型抜き6

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 きちんと並べた後、丁寧に刷毛をかけて、あまった粉をおとします。

型抜き7

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 並んだおまんじゅうたち。アトム型ですがまだ「画竜点睛を欠く」というかんじ。

アルコール

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 表面をしっとりさせるために、アルコールを吹きつけます。


やじるし


塗り1

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 塗るのに使うのは、和三盆蜜と卵とみりんをまぜたもの。元祖の栗まんじゅうの、栗の皮の部分にも使われる材料ですが、アトムの場合はかわいさを出すために、少し色を薄めに調合しているそうです。
 絵画などで使う筆をつかって、丁寧にアトムの頭と口のところを塗っていきます。
 塗ったところは焼きあがったときにほんのり照りのある感じになります。


やじるし


塗っているところ2

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 筆は絵を描く筆を文房具屋で買ってきて使います。和菓子屋さんはけっこう筆を使うそうです。
「材料の乾燥を防ぐために水をさっと塗ったり、飾りを描いたり。けっこう活躍しますよ」

塗っているところ3

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  口を塗る筆は頭の筆より細いものを使います。これも文房具屋さんで仕入れた絵筆の毛を少し抜いて、細くしたもの。
「たくさん作っていると、口を塗り忘れてしまうのが出来ることも。口なしでもかわいいですが、忘れないように気をつけています」。

塗っているところ4

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 さあ、塗り終わりました。これから焼きます。


やじるし


焼き1

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 オーブンでこんがり焼きます。焼く時間はおおよそ20分ぐらい。
 焼いている間も5分おきぐらいにオーブンのフタをあけて、トレイの位置を細かく調整します。
「機械によって癖がありますので、場所を変えて均等に焼けるように調整します。初めは下の段で焼いて、具合を見て後半は上の段で焼きます。こうすることで、中にも火が充分とおり、顔にも焼き色がこんがりついたアトムになります。」

焼き2

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途中で開けているところ。


やじるし


焼き3

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 徐々に良いにおいがしてきました!

焼き4

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 こんがり焼けたところ。ほっぺたや鼻などの凸部分がが良い感じにほんのり茶色くなって、真っ赤なほっぺにみえるところがみそです。


やじるし


眼1

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 眼は、焼き上がり後に焼印でいれます。焼印はこんな形。木型とともに、原型のフィギュアを参考に作られました。

眼2

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 バーナーでよく熱して……


眼3

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 手際よく一つずつ押していきます。「焼きあがった直後に入れてしまうと、焦げやすいし、時間が経ちすぎると生地が割れてしまったりします。程よいタイミングで焼印をつけるのがポイントです」
 眼も、離れすぎるとかわいくないし、よりすぎるとコバルトになってしまう、とのこと。木型で出した段階では、眼のあるところにぽっこり、ふくらみがありましたが、焼くことでそれが目立たなくなってしまいます。「一つ一つ手作業なので、表情が全部違いますよ」。


やじるし


眼4

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 眼がついたくりまんアトム。あとは一つ一つ包装され、お店に並ぶだけ!「こげなどがついた場合は、針で丁寧に取り除きます。ほくろみたいに、塗った和三盆糖が熱ではじけて、ほっぺたなどにつくことがあるんです」

できあがり

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 微妙にみんな表情が違います。右側は口をあけて笑ってる!? 「一日に平均で600個くらい作ります」とのこと。出来立てはほかほかで香ばしいですが、出来た後1日後ぐらいのほうが味がなじんで、おいしいそうです。


やじるし


召し上がれ!

虫ん坊 2011年9月号 特集2:高田馬場の新銘菓! 「くりまんアトム」の秘密!

 包装されて箱に入れれば、完成! 商品は5個入り1,300円、10個入り2,700円の箱でどうぞ。店頭では一個(252円)ずつでも買えますヨ!


 高田馬場の新銘菓「くりまんアトム」、高田馬場にお越しの際は、ぜひ買ってみてください!

 飯田さん、青柳の皆さん、お忙しい中、ありがとうございました!







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