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ストーリー

愛を知らずに育った少年が、愛を求めてさまざまな時代をさすらうSF青春マンガです。不良少年・近石昭吾は、母親のふしだらな性癖から、人を愛することを激しく軽蔑していました。警察からその昭吾を託された医師・榎は、昭吾に電撃療法を与えることを試みました。そのショックによって、昭吾はしだいに夢の世界へと入っていき、そこで愛の女神と出会います。女神は昭吾に、永久に続く愛の試練を受けることを命じました。そして昭吾は、さまざまな時代のさまざまな状況で、人を愛しかけては、辛い別れを味わうことになったのです。ナチスドイツの支配する第2次世界大戦当時のヨーロッパ、動物たちがお互いに助けあいながら暮らす無人島……。やがて昭吾が最後にたどり着いた先は、2030年の未来でした。そこはクローン培養技術によって生まれた合成人間が支配する世界で、人間は過去の生物として山奥へ追いやられていたのです。愛というものを知らない合成人間の女王シグマは、昭吾に、自分の目の前で愛を見せてみろと迫ります。

解説

1970/04/26-1970/11/22 「週刊少年キング」(少年画報社) 連載

1960年代末まで、日本には、子どもに向けて性を語ることをタブーとする風潮が根強くありました。ところがそれが1970年ごろから、急に解放される方向へ向かったのです。それにはさまざまな要因が考えられますが、特にマンガにおいて、そうした風潮の先がけとなったのは、1968年に発表された永井豪のマンガ「ハレンチ学園」でした。当時としては過激な性描写と裸が登場する「ハレンチ学園」の登場で、それ以後、少年雑誌には、性をあつかったマンガが次々と発表されるようになったのです。そうした中で描かれたのがこの『アポロの歌』でした。愛を求めてさまざまな時代をさすらう主人公・近石昭吾を軸として、愛と性の本質を描こうとするこの作品の主題は、『火の鳥』や『ブッダ』にも通じるものです。けれども、当時の日本の、大学紛争や学生の内ゲバ事件などが相次ぐ暗い世相を反映して、性格の暗い、かげのある主人公になってしまったと、手塚治虫は後に語っています。

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  • アポロの歌 (1)
  • アポロの歌 (2)
  • アポロの歌 (3)

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