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ストーリー

村の駐在所の息子雄作少年は、浜辺で幼い女の子ネリと出会い仲良くなる。だが彼女には恐ろしい秘密があった。クモを「好き」と言えばクモが、トカゲを「好き」と言えばトカゲが、彼女と一体化し吸収されてしまうのだ。

解説

1981/09 「月刊少年ジャンプ」(集英社) 掲載

『グロテスクへの招待』は、その奇妙なタイトルから受ける印象そのままに、異様な雰囲気を持った短編作品です。あえてジャンルに分けると「ホラーSF」ということにでもなりそうですが、かといってエイリアンのような怪物がでてきて、人間を襲う…といったたぐいの作品ではありません。 舞台は、海に面した小さな村。登場するのは、主人公の少年・雄作と、両親のいない少女・ネリ。人の少ない村で、友達のいない二人が偶然出会い、仲良くなるのはすぐでした。しかし、雄作はやがてネリが普通の少女ではないことに気づきます。なんとネリは、動物、植物、そして無生物にいたるまで、好きなものを身体の中に取り込んで同化してしまう力を持っていたのです。ネリは同化後しばらく、取り込んだものと人間の中間のような姿になるため(たとえばネコを取り込むと、ネコ女のようになる)、タイトルの「グロテスク」とはその姿について付けられた言葉でしょう。 この能力も、ネリの生まれた世界(地球以外の星を連想させる描写がありますが、明らかにはされません)では普通だったのですが、雄作たち人間の世界では恐怖以外のなにものでもなく、そこに悲劇が生まれます。この「グロテスクへの招待」は、無邪気な少女でありながら、生まれ持った力のために「怪物」の運命を背負った、哀しいネリの物語なのです。 美しい自然に囲まれた小さな村の中で展開する淡い交際。やがて訪れる雄作とネリの別れ。そしてネリが見せた最後の同化とは? 手塚治虫の柔らかなタッチと、たくみなストーリー構成、そして救いの無い運命をかろうじてハッピーエンドに昇華するクライマックスの展開によって、「グロテスク」な雰囲気を漂わせながらも、独特の悲哀と読後の満足感とを併せ持つ、上質なSF短編として仕上がっています。

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