夜になると、街の中を化け物が通るらしい。それは絶対に見てはいけない、という。けれど、好奇心に負けたひとりの女が、そっと戸の隙間からのぞいてしまった。すると、それはひとつの車の輪だった。車の輪は「見たなあ」とうなりながら転がってきて、あっという間に女の幼い子供を連れ去って行ってしまう。女は悲鳴を上げながら、狂ったようにさらわれた子供を追いかけ、それはそのまま子供を追い求める長い長い旅になって行く――。
たとえば『鬼子母神』のお話しのように仏教的な教えを物語に置き換えたような、そんなムードで綴られた昔話です。たった一度の過ちを償うための長い旅。そんな人生のひとつの側面を手塚治虫は絵本の形を借りて語ります。