とっても弱虫のらびちゃんは、いつも森の中で意地悪キツネにいじめられていました。そんならびちゃんのもとにある時人間がやってきて「らびちゃん、ロケットに乗って月に行ってくれないか? 」と誘うのです。らびちゃんは「こわいから、ヤだ!」と断るのですが、結局ロケットに乗せられてしまいます。ロケットの中でも泣いていたらびちゃんは、運転手のロボットうさちゃんに励まされ、月世界に到着。月の重力は地球の6分の一だから、らびちゃん大きな岩でも片手で持ち上げられるようになります。「きみは本当は強いんだよ」ロボットうさちゃんに囁かれ、らびちゃんはすっかり自信を持って地球へ戻ってくるのです。
手塚治虫は子供の頃、いじめられっ子でした。だから彼のマンガは基本的に「いじめられっ子がいかにして自信を回復させて行くか」というテーマで描かれています。ロボットだからといじめられるアトム、人間の言葉を喋るせいで、動物たちから仲間外れにされるレオ、「本当は女だろう!」と執拗に追い回されるサファイヤ姫、顔に傷があるせいで薄気味悪がられているブラック・ジャック・・・。主人公はいつもいじめられっ子です。らびちゃんも同じです。いじめられっ子が「自分は本当は弱くなんかないんだ! いじめられっ子だって強くなれる」と信じられるようになる。これは手塚治虫がすべての子供たちに送りつづけたメッセージです。