ある貧しい少女が蜘蛛の巣にひっかかっていた一匹の小鳥を助けます。小鳥はそのまま少女と暮らしはじめ、少女と小鳥は仲良く暮らしていました。少女が口笛を吹けば小鳥はどこからでも飛んで帰ってきて、美しい歌を歌い続けます。ある時、公園で催された『鳥よせ大会』で少女は一等賞になり、公園の『鳥たちの国』の管理を任されるようになります。少女ははじめて目にするような美しい鳥たちにうっとりとなりました。そして仲良しだった小鳥のことを忘れてしまいました。少女に忘れられ、他の美しい鳥たちからも馬鹿にされて、小鳥はどこかへ飛んでいってしまいます。少女は自分のそばから友達の小鳥がいなくなってしまったことにも気づきません。鳥たちの世話をしていた少女は病気になり、口笛も吹けなくなりました。そのときになって、ようやく少女は本当の友達だった小鳥のことを思い出すのですが・・・
ちょっと『幸福の王子』という有名童話を思い出させる雰囲気を持った作品です。貧しい少女と小鳥との友情の美しさ、美しいもの、新しいものにすぐ心を奪われてしまい、本当に大切なものを見失ってしまう人間の愚かさ、そして裏切られても傷つけられても、その人の本当の心の美しさを信じることが出来る、そんな信頼の大切さ。それらを語りながら、さながらアンデルセンのような(そして『幸福の王子』のような)悲劇的なエンディングへと手塚治虫は筆を進めて行きます。