アトムマニア必見!のグッズを集めた「アトムBOOK」が、11月に講談社より発売されます!この「アトムBOOK」は、有名なアトム・コレクターである井澤豊さん所有のコレクションをもとに編集されたものです。
 今回の「虫ん坊」インタビューでは、その井澤さんから、本の内容からグッズ集めの裏話まで、色々なお話をうかがいました。

懐かしくてレアな鉄腕アトムグッズが約300アイテム、CDサイズの可愛い写真集になりました!

講談社より11月中旬発売予定
「アトムBOOK」予価1500円+税
「限定版オリジナルフィギュア付き アトムBOOK」予価3000円+税
*フィギュア製作はビリケン商会

編集者(以下 編):今回の出版企画が立ち上がった経緯を教えてください。
井澤さん(以下敬称略):たまたま、今回の本のアートディレクターが、僕の昔からの知り合いだったんです。去年の秋、彼が「ペコちゃんBOOK」っていう本をアートディレクションしていたんですが、「僕の知り合いにアトムのコレクターがいる。第2弾にアトムをやったらどうか」と推薦してくれて。それで決まった企画なんです。
「ペコちゃんBOOK」は不二家さんのお店でしか買えなかったんですけど、それが大変好評だったので、「CDタイプの本でフィギュア付き」という、ひとつのシリーズとして成立させようというアイデアが講談社の方からも出てきまして。そうすると、ペコちゃんのように強いキャラクターで、ペコちゃんが女の子だったら、次は男の子で…それならアトムしかないなということで、今回「アトムBOOK」ということになりました。第一弾も力を入れて作ったんですが、今回は書店販売ができるということで、ひときわ力が入っています。やっぱりコレクターとしては、こうやって自分のコレクションが一つの形になるということは、本当にありがたく思っています。

編:この中に収録されているコレクションの数はどのくらいあるんですか?
井澤:192ページで、1ページに1点以上載っていますので、小さいものも含めるとだいたい300点くらいのアイテムが載っていると思います。おもちゃから、生活用品から…生活用品の中では食器があったり、文房具があったり、本当にいろんなものを載せていますので、すごく見応えのあるものになっています。

編:それは全ページ完全カラーですか?
井澤:そうです。

編:それは楽しみですね。ちなみに年代的にいうと、いつ頃のものから集めているんですか?
井澤:僕は初期のアトムのものだけと限定しています。だから、70年代までですね。当時アトムは本当に国民的ヒーローでしたからね。僕は昭和30年生まれで、63年から64年くらいにかけては小学生で、テレビの放映を夢中になって観ていました。我々の年代って、だいたい漫画なんですけども、うちは漫画を買ってもらえなくて。

編:その時代に小学生ですと、おもちゃなんかは欲しくてもそんなに買えませんよね。本格的に集めだしたのはいつ頃からですか?
井澤:もう30年くらい前になるんですが、きっかけはほんとに些細なことでね。実家に帰って勉強机を久々に開けたら、昔集めていた切手のストックブックが出てきたんですよ。その中に、明治マーブルチョコレートのシールが未使用のまま入っていて、「あぁ、懐かしいな」と思って。 それで、近所のおもちゃ屋にふらっと行ってみたんですよね。昔のおもちゃが何かないかなーって。そしたら、たまたま昔のアトムがあったんですよ。それで、懐かしいっていうのと、昔の手作り感のあるレトロな感じがインパクトがあったんで、それがきっかけで集めるようになったんです。
当時はコレクターが少なかったので、楽しかったですよ。それがきっかけで、色々なおもちゃ屋さんに行くわけですよ。それも、おじいさん、おばあさんが一人でやっているようなお店を見つけては「アトムないですか?」って聞きに行くんです。まずは近郊から行ったんですけど、だんだん地方にも行くようになって。 もうお宝ハンターみたいな。しかも店によっては「こんな古いものお金取れない」って言われて、ただでもらうのは悪いからお菓子持っていったりとかね。
古い商品ってお店には置いてなくて、だいたい倉庫とかに在庫として残ってるんですが、お店の人もわからなくなっているので、当然ないって言われるんですね。 でも僕が倉庫の中を見ると、あるんですよ。だから必ず倉庫に入れてもらえるように交渉はするんですけども、倉庫ってプライベートなものも入ってるんで、見られたくない訳ですよ。その交渉が大変でね。でも、当時は入ると絶対にありましたね。もう、ほこりまみれで鼻の穴真っ黒になっても、夢中でした。

編:じゃあ、コレクションのために地方遠征とかもされたんですか?
井澤:してましたね。サラリーマンをしていた時は、出張のたびに前乗りして、電話ボックスの電話帳でおもちゃ屋さんを調べて片っ端から連絡して。で、宿の近郊を回るんですけれども、当然出てくるんですよね。それが楽しみになってきまして。だから、アトムが好きなのか、探すのが好きなのかっていう(笑)。

編:でもコレクターって探すこと自体が楽しみになりますよね。
井澤:そうですよね。でもやっぱり、子供の頃一番好きなキャラクターだったので、集めたものを形にしたくなるんですよ。そんな時、手塚先生のイベントでもグッズを貸し出すことができて。それが一番嬉しかったですね。先生ともご挨拶したくらいで、そのうちいつかゆっくりお話できるかなと思っているうちに、お亡くなりになって…それだけが心残りですけどね。

編:集めている過程で、やった!とか、がっかりしたとか、一番印象に残っていることってありますか?
井澤:そうですね…。あるおもちゃ屋さんで、お母さんと娘さんが店番しているところがあったんですが、お母さんがすごくうるさい人で、やっぱり倉庫に入れてもらえないんですよ。でも、アトム以外の古いおもちゃがお店の奥にあったりして、「あ、これは絶対あるな」と確信があったんです。それで何度か通っているうち、たまたま娘さんしかいない日があって、ついに倉庫に入れてもらうことができたんですよ。そしたら、案の定あるんですね。
そこで一生懸命選んでいたら、突然娘さんが走ってきて、「お母さんが戻ってくる!」って言うんです。それで慌てて出ようとしたんですが、量が多くて入れるものがないんですよ。「何か入れるものはないですか」って聞いたら、娘さんが真っ黒なでっかいゴミ袋を持ってきて(笑)。で、「お金、いくら払えばいいですか?」って聞いたんですけど、「お金はいいからとにかく早く逃げて!」って言われて。でも悪いから五千円くらい置いてきたのかなあ。それが一番印象が強いですかね。
あと、「なんでも鑑定団」でウォンテッドしたときに、すごくレアもののおもちゃを譲っていただいきました。それは、当時通販でしか買えないおもちゃだったんですよ。それを買うってことはかなりのアトムファンだったと思うんですよね。その方から譲り受けたものって言うのは、譲り受けたものの中でも特に大切にしたいなぁ、と。その人の気持ちも入ってる訳ですからね。

編:おもちゃ以外にも色々と集めてらっしゃるそうですが…
井澤:そうですね、やっぱり全部集めてやろうかって気になるんです。当時の時代の風景みたいなものも見えてくるし、面白いんですよ。当時おもちゃを作った人に話を聞くと、アトムをプリントしただけで本当に物が売れるっていう時代で、ハンカチ屋さんがそれだけでビルを建てたっていうんですから。それぐらいすごいキャラクターだったので、いろんな物が出てるんですね。だから、集めがいはありますよね。

編:それだけたくさんのものを見ていると、中にはどう見てもニセモノ、っていうようなグッズもありますよね。
井澤:ありますね。でも、それもまたかわいいんで買っちゃうんですよね(笑)。要するに無版権のものなんですが、そういうのは数が集まると面白いんですよ。いろんなアトムがいて、ツノが三つあったりとか。そういうのがたくさんあると、それだけで一つの世界ができるんで、今回の本でも何点か紹介してますけどね。

編:総コレクションを広げるとすごいことになりそうですね。
井澤:今回撮影するにあたって、デザイナーの人に全貌を見てもらおうと思って、虫干しも兼ねて講談社の一番広いスタジオに広げたんですけど、それの半分くらいがぎっちり埋まりました。80坪くらいスタジオだったんですけど。自分でも全部を一度に集めて見たことがなかったんですよ。

編:ちなみに、この本に掲載したグッズの中で一番貴重なグッズは何ですか?
井澤:光文社の通販用の人形ですね。それは、頭が鉛で体がセルロイドで出来ている人形で、見開きで紹介しています。それは北海道の人から譲り受けたんですが、コンディションいいですね。鉛にペインティングされてるんで、絵の具が剥がれて顔がぼろぼろになっちゃうことが多いんですが、北海道は湿気がないのか、涼しかったのか、すごく綺麗なんですよ。たぶんそれが最初にできたアトムのフィギュアだと思うんですけど。

編:まだ狙っているグッズはあるんでしょうか?
井澤:ありますね。それは、光文社が広告用に作ったアトムの首振り人形です。非売品で店頭用なので、大きさが120センチくらいあるんですよ。それは、不二家のペコちゃんみたいなもので、アルミニウムで出来てるんです。要するに、大型の書店に置いてあったものだと思うんですけども、当時の雑誌広告とか資料では残っているんですが、実物を見たことがないし、持っている人も聞いたことがないんです。広告には実物の写真が出ていて、なぜか機関銃を持っているという。…それでしょうね。一番欲しいのは。でも、僕意外にも欲しい人もいるでしょうから、ネットオークションに出されたらどうなっちゃうんだろう。

編:光文社の方には残ってないんでしょうか?
井澤:もちろん、光文社に行って当時の担当者に話を聞いたんですけど、「いやあ、わからないなあ」と。でも実際に写真で掲載されてるんで、1体はあると思うんです。それで出たら大発見ですよね。買ってくれって言われるのが怖いので、また一生懸命アトム貯蓄しないと…。
あと、子供服のメーカーが作ったマネキンというのがあって、それは朝日ソノラマから出ていたソノシートの広告に出ています。写真では、その洋服屋さんのセーターか何かを着させてるんですが、それも実物を見たことがないんですよね。写真撮影用の一点ものという可能性もありますが。
それと、当時宝塚にアトムの遊園地というのがあって、昔の「鉄腕アトムクラブ」というファンクラブ誌で紹介されていたんですね。そこは遊園地がアトムだらけだったらしくて、色々と調べたんですが、なかなか情報がなくて。だから今回、そういった情報の呼びかけもしたいなと。当時のアトムグッズに囲まれた写真があれば、是非教えていただいて、よければ今回の本に掲載させていただければと思っています。これをきっかけにして、当時のおもちゃの資料を集めていきたいんです。だんだんとなくなってしまうものですし。

編:本の話に戻りますが、今回限定版につくおまけのフィギュアというのは、原寸サイズで復刻されたんですか?

井澤:はい、そうです。本の中でも紹介していますけど、子供が引っ張ると舞台が回るようになっていて、アトムとウランちゃんとラビちゃんっていうウサギのキャラクターがくるくる回るというおもちゃなんですが、それについていたアトムなんです。これが可愛いんですよ。
編:オールドファン向きの商品ですね。
井澤:80年代に新アトムのアニメが始まって、その後さらに2003年バージョンがありますが、僕はどうしても現体験というか、子供の頃に観たアトムが好きですね。その中でもさらに初期のアトムがひょろっとしていて好きです。 だんだんこう、可愛らしくというかずんぐりなってくるんですよ。なんだかその方が子供受けするみたいで。ミッキーもそうですよね、ミッキーも最初はネズミらしくて、だんだん可愛らしくなってくるんですけれども。でも、普遍的というか、本当にすごいキャラクターですよね。

編:(編集担当の岡本さんに)編集時のエピソードなどありますか?
岡本さん(以下敬称略):撮影の時、井澤さんがアトムの洋服にアイロンかけたりとかして、本当に両手で抱えるような丁寧な扱いをしていて。アトムへの愛をすごく感じましたね。大事にされているというか。置き方も、少しでも可愛くなるように置いたりとか。
撮影は3日で、撮り直しも含めると計4日間あったんですが、そのうち半日くらいかけて「これは入れたい」とか皆でチョイスしていったんです。子供の食器から衣類から色んなものが出てきて、とても内容が濃いものになっています。井澤さん自身も広げてみて、こんなものもあったのかというものも結構ありまして。さっきの話と重なるんですけれども、当時の子供の生活がわかるようなものがあるんですよね。あと、版権はどこなんだというくらい“モドキ”っぽいチープな感じのアトムも並びましたし。おもちゃというのは、当時の日本の主たる産業だったんですよね。ですから、輸出向けも兼ねているのか、商品名が英表記のアトムがあったり。
井澤:パッケージのデザインがね、やっぱりむこう向けに作られているんですよ。だから、全部英表記なんですよ。
岡本:それをたどって、当時の町田とか日暮里の元おもちゃ工場の人とかに、何人かお会いしたんですけれども、すでに当時の記憶がなかったりして。希望としては、当時アトムのおもちゃを作ってらした人のコメントがとりたかったんですよ。
今後、アトムをきっかけに、日本のおもちゃ文化をまとめてみたいと思ったんですが、本当に急がなければ当時の工場関係者もいなくなってしまうというのが、実感としてこの本を編集してよくわかりました。ものは残っても、作られた方のコメントがとれないんですよね。職人さんだから、語らず逝ってしまった方もいますし。
井澤:それは是非記録として残したいですね。
岡本:今、おもちゃは中国とかで作らせていますが、こんな昔にメイドインジャパンのキャラクターで、なおかつ日本の町工場でこれだけのものができていたんだというのが驚きでしたね。本当にこの本から、アトムのキャラクターの強さと、その当時の日本の技術の強さ、もの作りのすごさというものも感じていただけるのではないかと思います。

編:どうもありがとうございました。

●「思い出の鉄腕アトムの写真募集のお知らせ」
本誌編集部において、1960年代〜70年代の鉄腕アトムとの思い出が刻まれた、懐かしい写真を募集しています。
おもちゃ、生活雑貨等々、鉄腕アトムと共に過ごした懐かしい写真をお持ちの方は是非、画像を添付データにてお送り下さい。写真が掲載となりました場合は、本誌を贈呈致します。

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