今月の「虫ん坊」インタビューにご登場いただいたのは、キャラクラーデザイナーのキッカワ ケイタさん。
オリジナルキャラクターの「箱氏」と、手塚キャラクターをコラボさせた「TEZUKA MEETS HAKOSHI」の生みの親です。
大胆なデフォルメデザインの「TEZUKA MEETS HAKOSHI」は、とにかくインパクトが強烈!さて、どんなお話が聞けるでしょうか?

―今回「TEZUKA MEETS HAKOSHI」をデザインすることになったのはなぜですか?
キッカワ: もともと私の方で他のキャラクターとコラボしたいという企画があって、そんな中で、手塚先生が生誕80周年で盛り上がっていることと、他のデザイナーと積極的にコラボされているということで、やらせてもらうことになったんです。

―キッカワさんは1975年のお生まれということで、連載中の手塚作品をリアルタイムに読まれていた世代ではないと思いますが、そんな中での「手塚体験」というと、どのようなものがありますか?
キッカワ:小学生の時に、夕方の4時〜5時の枠でアニメの再放送をやっていたので観ていました。マンガの方は大人になるまで読まなかったので、アニメから入った感じですね。

―印象に残っている作品はありますか?
キッカワ:実はあまり覚えていないのですが、『ユニコ』が好きだったみたいで、描いた絵がまだ家に残ってるんですよ。

―では、マンガでの最初の「手塚体験」というと?
キッカワ:僕が高校生の時に、姉が買ってきた『ブラック・ジャック』を「面白いから」ってすすめられたのが最初ですね。その後、自分で意識して最初に買ったのは『どろろ』です。

―なぜ『どろろ』だったんですか?
キッカワ:これはきっかけとしてはちょっと変な話になってしまうんですが(笑)、僕は小さい頃から水木しげる先生のファンだったんです。で、手塚先生が水木先生に「俺も描けるぞ」ってライバル心を起こして描いたのが『どろろ』だと知って、それで興味を持って読んでみたんです。そしたらストーリーの組み立て方が水木作品とは違っていて、すごく面白かったのが印象に残ってますね。その後はマンガ自体を読まなくなっていたんですが、最近『新宝島』を読みました。

―デザイナーの方から見て、手塚作品の「絵」というのは、どのような印象ですか?
キッカワ:まず、線の綺麗さはダントツだと思いますね。今回コラボさせていただいた中に、シチュエーションを想定しながら作っていったイラストもあって、マンガを読みながら作業していたんですが、コマ割りとか構図とか、デザインをする人間から見ると勉強になります。

―「箱氏」についてもおうかがいしたいんですが、そもそも「箱氏」というのはどのような発想から生まれたんでしょうか?
キッカワ:「箱氏」というのは、見た目が同じようなキャラクターが、ものすごくたくさんいるんですね。で、1つで見た時には個性があるのに、大勢いると埋もれてしまって皆一緒に見えてしまう。でも本当はそうじゃないんだよ、という発想で作ったのがこのキャラクターなんです。

―それでは、このシンプルな形は「型にはめられた人間」というイメージでしょうか?
キッカワ:そうですね、極力個性をそぎ落としていったのが、この形だったんですけども。それに顔や手足など、人間の要素を足したっていう感じですね。

―手塚キャラクターは、もともと丸から発想してデザインされているんですが、「箱氏」は正反対ですよね。実際にコラボしてみて、いかがでしたか?
キッカワ:キャラクターによるんですけど、ハマるやつはすごくハマりましたね。アトムなんかはすごくハマってるな、って自分では思うんですけど(笑)。
今までにコラボされた作品を拝見していると、やはり丸っこいものが多くて、自分が同じようなものを出しても意味がない、と思ったんですね。どうせなら、手塚先生に見せた時に「こんなものダメだよ」って怒られるぐらいのものを出してみたいな、と思って、自分がこれまで描いたキャラクターの中から、一番難しそうな「箱氏」を選んだんです。

―今回デザインされた手塚キャラクターを選ばれた基準は?
キッカワ:まず、自分が触れたことのあるキャラクターでないと、と思ったんですね。
で、それをベースに、自分の好きなものからやっていきました。

―このヒョウタンツギもすごいですね。あんな曲線でしか表現されていないキャラクターを…(笑)。
キッカワ:僕もやる前は無理だと思ってたんです。でも色んなところに出てくるキャラクターじゃないですか。だから「これは作っておかないとダメかな」と勝手に思っちゃったんです。

―どろろや百鬼丸のような、特殊な髪型のキャラクターはやりにくかったのでは?
キッカワ:これはすごく悩みました。たとえば右を向いた時と左を向いた時とではどうなるのか、とか…。立体っぽく描いているんで、いずれ立体物になればいいなと思ってるんですけど、実際に作る人は大変でしょうね。

―私は『新宝島』を選ばれているのが意外だったんですけど、これを選ばれたきっかけは?
キッカワ:『新宝島』は、手塚先生が「自分の完全なオリジナル作品ではないので、全集に入れたくない」とおっしゃっていたと聞いて、逆に読みたくなってしまったんですね(笑)。で、読んでみたら面白いし、キャラクターもこれまでのコラボレーションに出てきてないようなので、「じゃあ僕が」と思ったんです。

―これから新しいキャラクターを増やす予定はありますか?
キッカワ:そうですね。今回はまず第一弾として出させていただいたんですけど、僕自身やり足りない部分があるので、ちょっとずつ増やしていきたいです。次の段階で進めたいのは、今取り上げている作品に登場する他のキャラクターで、バリエーションを増やすことですね。

―最後に、手塚ファンにメッセージをいただけますか。
キッカワ:ファンの中には「嫌だな」と思う方もいるかもしれませんが、何かかわいいな、とか思っていただけたら、それだけでも嬉しいです(笑)。

―どうもありがとうございました。

キッカワ ケイタさんのHP:http://www.keitymouse.com/