■今月は、4月に発売となる新しい アトム・トリビュート盤『鉄腕アトム  21st century ver. 』の音楽プロデューサー・大川正義さんにインタビューを行いました!

 このトリビュート盤は、 「鉄腕アトム」の主題歌と「ロボットマーチ」の2曲がさまざまなアレンジで演奏されるもので、 東京電力のCM(メガネの少年役)でおなじみの子役・ 佐藤和也君がボーカルをとるのも聴きどころのひとつとなっています。
 大川さんは、映画『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』のサントラ盤にエンジニアとして参加されたほか、94年発売の モスクワ・モス・フィルム・オーケストラ演奏による オマージュ・アルバム『 手塚治虫メモリアル・シンフォニー』にもプロデューサーとして関わられました。また現在は音楽プロデューサーとして『千と千尋の神隠し』、『あらしのよるに』といったアニメ作品に参加されています。


『鉄腕アトム 21st century ver.』
発売日:2007年4月11日
定価:2,100円
レーベル:ティームエンタテインメント

 

【収録曲】
1・鉄腕アトム(21st century ver.)
 唄:佐藤和也とひばり児童合唱団 編曲:寺田志保
2・ロボットマーチ(21st century ver.)
 唄:佐藤和也とひばり児童合唱団 編曲:寺田志保
3・鉄腕アトム(orchestra ver.)
 唄:佐藤和也とひばり児童合唱団 編曲:篠原敬介
4・鉄腕アトム(Heartful ver.)〜 Astro Boy 〜
 唄: Frances Maya  編曲:日比野則彦
5・鉄腕アトム(Dr.Knob Remix)
 編曲: Dr.Knob
6・鉄腕アトム(21st century ver. instrumental)
 編曲:寺田志保
7・ロボットマーチ(21st century ver. instrumental)
 編曲:寺田志保
8・鉄腕アトム(Heartful ver.)〜 Astro Boy 〜 instrumental
 編曲:寺田志保


■大川正義さんINTERVIEW (聞き手、構成:濱田高志)

――今回の企画はどのように立ち上がったのですか。
大川:そもそもは、今回、共同プロデュースという形で関わって頂いている手塚プロクリエイティブ部の石渡さんとの雑談から始まったんです。
 彼と話している時に、最近進めている企画のひとつにアトムのキャラクターをパステル調で描いた“ Heartful ver. ”のイラストがあって、それを見せてもらった時に、突然、イマジネーションを掻き立てられたんです。石渡さんにしても、それを絵(キャラクター画)の世界だけで終わらせずに、何らかの形で展開していきたいという意向でしたので、それならイラストをもとに音楽で何か表現出来ないかと考えたのがきっかけです。

――今回ジャケットに採用されているイラストですね。
大川:そうです。非常にヒューマンな絵柄で、僕には、それがかえって21世紀的な印象を受けたんです。手書きで“やさしさ”が表現されているんですね。
――アルバムのコンセプトは何でしょう。
大川:コンセプトは“感動”です。これはこの作品に限らず、僕の最近のテーマでもあります。
 当然、ベースにこの『鉄腕アトム』という作品の世界観があるんですが、それ以前に“あの時代”を再現したくて、音の作りでいえば、ディズニー映画っぽい、ハリウッド調のファンタジックなアレンジにしたいなと思ったんですね。


 主題歌は、とてもしっかりとした力強いメロディが特長で、アニメの主題歌という枠にとどまらず、どこかポップスにも通じるきれいなメロディラインが魅力なので、まったく古さを感じないんです。ですから「 orchestra ver. 」は、オリジナルに忠実な仕上がりで、全て生音で演奏しています。
 以前、フル編成で『 手塚治虫メモリアル・シンフォニー』というアルバムを モスクワ・フィルハーモニーで録音したんですけど、あれもやはりシンフォニックなもので、本作は、それ次ぐ第二弾というイメージです。ですから、このあとも色々やっていきたいんですね。
 今なんとなく考えているのは『海のトリトン』で、あの作品にはアオイスタジオにミキサーとして勤めていた時に、ダビングで関わった思い出があるんです。


↑アルバムのレコーディング風景(撮影 木村 亮介)

――では、今回収録された「ロボットマーチ」はいかがでしょうか。
大川:当初、アルバム制作にあたって、新しい曲への創作意欲も湧いたんですが、ここはやはり主題歌とこの「ロボットマーチ」をきっちり作ろうと。特に「ロボットマーチ」は意外と隠れた名曲というか、もっと世の中に知らしめるべき曲だと思ったんですね。何しろ谷川俊太郎さんの歌詞が素晴らしいんです。

――主題歌を歌っている佐藤和也とひばり児童合唱団とは?
大川:佐藤君のことはテレビで何度も見て知っていたんですけど、このアルバムを制作するにあたって、“アトムと仲良くなる子供のイメージって誰だろう”という話をしていた時に、彼がピッタリはまるなと思ったんです。ただ、子供は成長が早いので、レコーディングのタイミングが変声期の直前ということで大変でした。
 ひばり児童合唱団は、65周年の歴史のある日本の児童合唱団の草分けで、今回はそこから15人の児童合唱と、さらにザ☆カインズという男性コーラスとアップル・パイという女性コーラスが参加しています。


↑佐藤和也君

――アレンジャーの選択はどのように?
大川:企画が立ち上がってから、著名なアレンジャーの方にも発注したんですけど、なかなか良いのが上がってこなくて、最終的に今回のメンバーになりました。
「21st century ver.」を編曲した寺田志保さんは、NHKの音楽などを手掛けている方で、とても柔軟に対応出来るミュージシャンですし、「orchestra ver.」の篠原敬介さんは 『あらしのよるに』でもご一緒しました。
 そして、 日比野則彦さんはサックス・プレイヤーで、ゲーム音楽の分野でも活躍される巨匠です。
 ほかにDr.Knobさんによるリミックス・ヴァージョンや、Frances Mayaというヴォーカリストが歌う素晴らしい英語ヴァージョンもあります。アトムのキャラクターは、団塊の世代だけでなく国民のアイドルなので、このアルバムは、全世代に向けて発信していきたいですね。

(2007年3月12日 代々木 ワンダーステーションにて取材)