■今月下旬、ジェネオン エンタテインメントより「ぼくのそんごくう」オールカラー版が 3,000 部の完全限定で発売予定です。

雑誌『漫画王』で 1952 年に初出掲載されて以来、オールカラー版では初めての単行本化となるこの本は、最新デジタル技術でのリマスタリングにより、雑誌掲載時の鮮やかな色彩をできる限り忠実に再現したまさに限定版。ファンならば必ず手に入れたいこの本について、担当プロデューサー・森さんにお話をうかがいました。

――ジェネオンが出版レーベルを立ち上げたのはいつごろからですか?
森:ジェネオンはもともと映像メーカーで、 DVD を中心に映像商品を扱っていますが、 2002 年に新しく出版レーベルを立ち上げました。立ち上げ第 1 弾として、石ノ森章太郎先生の画集を、次に手塚治虫先生の「手塚治虫美女画集  Romanesque 」を出版しました。

――これまでに出た手塚作品の画集を教えてください。
森:「手塚治虫美女画集  Romanesque 」を第 1 弾に、「手塚治虫 SF ヒーロー画集」、それから「手塚治虫美女画集」のソフトカバー版などを出しています。 いずれも、本自体のつくりに凝った愛蔵版というかたちで、そういったアイテムをコレクションしている方にも喜ばれるような商品作りを目ざしてきたつもりです。
ジェネオンは数ある出版社の中でも新参組なので、老舗の出版社がしているようなたくさんの本を作って売ることはできず、独自の路線を立てる必要がありました。そこで、数とターゲットを絞ってでも、装丁や印刷にこだわった商品を出していこう、という方針を立てています。

あとは、手塚先生は非常に長い間、漫画をお描きになっていたこともあり、古いカラー原稿などには退色や傷みなども見られますし、作品によっては印刷物しか残っていない場合もあります。こういった原画は、ほうっておけばどんどん傷んでしまいますので、それらをデジタルデータとしてアーカイブ化してゆく、という二次的な目的もあります。一回誰かがそのような作業をやっておけば、今後様々な形で、アーカイブ素材を活用していただくこともできますので。

――先ほどは画集のお話が出ましたが、漫画の出版は今回の「ぼくのそんごくう」で何冊目になるのでしょうか?
森: 3 冊目になります。第 1 弾が「リボンの騎士 少女クラブ カラー完全版( 2004 年 9 月発行)」、第 2 弾は「手塚治虫カラー秘蔵作品集( 2005 年 8 月発行)」です。


↑ 連載当時、賞品として使われた絵はがきより。


――第3弾として「ぼくのそんごくう」を選ばれたのはなぜですか? やはり初期作品から、というねらいがあるのでしょうか?
森:そういったねらいは特にありません。「ぼくのそんごくう」は最近映画にもなりましたが、それにあわせた、ということでもありません。以前、ユーザーアンケートを取った際に、もっともリクエストが多かったのが「ぼくのそんごくう」だったのです。前からやりたかった作品でもありましたが、なにぶんページ数が膨大で、とても高い本になることは目に見えていたので、すぐに、というわけにはいかなかったのですが。 価格は税込で 6,825 円で、結構お値段のはる本なので、リスクは高いのですが、現在の予約状況は良く、喜んでいます。

――デジタルで画像を補正されたということですが、苦労した点はどんなところでしたか?
森:元の原稿が当時の雑誌のそのものでしたので、スキャンデータを見てみると、激しく茶色くなってしまっていました。リマスタリングを担当した大日本印刷さんも、相当めげたようです。デジタルリマスタリングといったって、ボタンひとつのオートで、というわけには行きません。すべてが手作業なわけです。かといってオリジナルに手を加えるわけには行きませんので、手塚プロの森さんと私で細かくチェックしながら、という作業になりました。 印刷する紙についても、きれいにカラーが出ることはもちろんですが、当時の古風な雰囲気を壊さない紙を選んでいます。

――魅力的な商品ですが、限定 3000 部、とされたのはなぜなのでしょうか?
森:高額商品で限定発売、というのは、別に付加価値を高めるわけではなくて、初回で刷り切ってしまわないと、コストが高すぎて増刷が不可能である、というところに理由があります。 100 部とか 200 部とかという単位での増刷は維持ができないのです。だから、初回売り切りにせざるを得ない、というところがあります。 もっとペーパーバックのような、コストの安い装丁にして作る、という方法もあるかもしれませんが、作品の内容から言って、あまりそういうことはしたくないです。

――今回の本のイチオシの部分は?
森:「ぼくのそんごくう」は部分的な単色のページを抜いて、ほぼ全編オールカラーで連載された作品です。月刊誌で足掛け 8 年、しかも毎回オールカラーというのはすごいことだと思います。カラーの筆のタッチや、絢爛と言ってもいいぐらいの色彩などは、ぜひともオールカラーで見ていただきたいです。モノクロで見ているのとはまったく違う作品、といえると思います。

↑ タイトル文字、悟空のカットなどは、全集版(右)では省かれています。
オールカラー版(左)では、連載当時のままを見ることができます。


森:
また、連載版だと、毎回 8 ページごとに「ぼくのそんごくう」というロゴが入っているんですよ。だいたい一ページの 3 分の 2 ぐらいをつかって、大きくロゴのコマがあって、そこからお話が始まっているのですが、すごいときだと見開きの 3 段抜きぐらいで大きなロゴがあって、続きのコマが下に2、3コマ入っているだけ、というページもあります。そういうコマはいわばお宝的な絵になっていて、登場人物がたくさん、勢ぞろいしていたりします。全集版では、こういうコマが完全には再現されていませんので、これも見どころのひとつです。
もうひとつ、これは単行本では初収録になると思いますが、「そんごくうの初飛行」という、手塚先生がセスナに乗って東京上空を遊覧する、というグラフ記事も復刻しています。これもかなり貴重なものだと思います。こういう記事などは、当時の雰囲気を伝えてくれて、面白いですよ。

――発行が大変楽しみです。今日はお忙しい中、ありがとうございました。

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