5月号の虫ん坊インタビューでは、チケット販売も始まっていよいよ盛り上がってきた「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」で、脚本と演出を担当する演出家・木村信司さんにお話を伺いました。 宝塚のテイストを取り入れて描かれたという「リボンの騎士」を反対に舞台に持っていくと、いったいどんな面白みが出てくるのか? そのあたりの見どころも含めて、舞台への意気込みを語っていただきました。 |
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「リボンの騎士」をミュージカル化することになったきっかけをお聞かせ下さい。
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キャストはタカラジェンヌではなく、客演の宝塚歌劇団の箙かおるさんとマルシアさんを除きすべてモーニング娘。と美勇伝が演じる、いうことですが。 |
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そのとき思い出したのが『 R&J 』というオフ・ブロードウェイ作品でした。この作品では 4 人の男性俳優のみが、学生演劇の形を取りつつ、本気でシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を演じるのです。この作品をジャニーズのタレントが演じたら、きっとスリリングでしょう。今回の「リボンの騎士」発想の原点は、その逆ができないか、ということでした。 一例をあげます。本読み稽古の際、フランツ王子を演じる石川くんという出演者が、自分の声の高さを心配していました。しかし声が高くても、懸命に王子の心に成り代わることで、物語として充分に立ち上がってくるものがありました。また大臣とその息子も、親子の愛情そのものが、かえって壮年の俳優と子役の少年が演じるより伝わってきたのです。ここに突破口があります。 宝塚の歴史をいったん白紙に戻し、タカラジェンヌではないアイドル、つまり女の子が男性を演じることで、もう一度「異性を演じる」原点に戻ってみたいのです。これは大冒険です。しかし宝塚にとっても、出演者たちにとっても、必ず意義ある冒険になると信じています。 |
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脚本も木村さんが担当されるということですが、ストーリーはどのようなものになるのでしょうか? 手塚先生は作品を描くにあたり、何かしらテーマを念頭に置かれていたのではないでしょうか。「リボンの騎士」のテーマとは何か。「男性と女性の性差」です。その性差を超えた命の尊さです。原作は連載マンガということもあり、中盤以降はそのテーマが薄められてゆきます。しかし劇場作品ではテーマを明確に扱い、結論を出したいと思っています。 男の子と女の子の両方の魂を持った王子が生まれ、王位継承の問題のため権力闘争に巻き込まれていく、という前半のストーリーは原作に従いました。ただ、そこから結論への導き方はかなり変えています。最後はハッピーエンドですが、そこへ向かうまでは紆余曲折します。 シリアスな場面にコミカルな場面が入ってくるマンガらしさは、そのまま生かしました。ただしコミカルなところほどきっちり演出するつもりです。舞台はテレビと違い、笑い声の効果音をかぶせるわけにはゆきません。決して楽屋落ちなどではなく、誰が見ても楽しい作品に仕上げたいと願っています。 |
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先ほど、大臣とその息子(原作ではジュラルミン大公とプラスチック)のお話が出ましたが、悪役の位置づけというのはどんな形になるのでしょうか? ――
見終わった後、前向きでさわやかな気持ちになりそうですね。
――そのほか見どころを教えてください。 まだ稽古を始めたばかりですが、モーニング娘。たちは素晴らしい。声に広がりがあり、青葉が繁るような豊かさがあるのです。忙しいアイドルたちですが、充分な稽古時間をとってもらうよう所属事務所に配慮してもらいました。 ――
今後の日本の舞台芸術はどんなふうになっていくとお考えですか?
誰でも楽しめるミュージカルを目指します。子供から大人まで、さまざまな方々に、より多くの方々にご覧いただきたいと願っています。 ――
本日はお忙しい中、ありがとうございました。 |