現在、宝塚市立手塚治虫記念館で開催中の「鉄人28号VS.鉄腕アトム展」は、タイトルどおり、『鉄人28号』と『鉄腕アトム』の強力タッグ! これにちなみ、今月は「横山光輝クラブ」代表幹事・江口健一さんに、現在の活動についてのお話をお聞きしました。「横山光輝クラブ」は、横山作品の出版をはじめ、商品化などの企画にも深くかかわっている公認のファン組織です。


――「横山光輝クラブ」の組織と活動内容について教えていただけますか?


↑会誌「オックス」(上)と 「Bacchus」(下)


江口:「横山光輝クラブ」は、昭和61年に私と友人の2人で結成して、横山先生から直接公認をいただきました。会員制を敷いていませんが、中心メンバーとしては私を代表に、全国各地に数名の幹事がいます。この方々にはクラブで発行しているファン雑誌『オックス』と『バッカス』の編集にも携わってもらっています。この雑誌は不定期ですが、一年に一冊は出したいと思っています。
それから、横山先生の作品には単行本化されていないものが多々ありますので、出版社へ刊行の提案をしています。しかし、原稿が散逸している場合も多いので、その復元・修整をどのようにするか、そういう方法論も考えながら出版社にアプローチしています。そんな中で決まったものの一つが、今回潮出版社から出た『鉄人28号 原作完全版』なんです。
また、フィギュアなどの立体物や、映像の世界でも横山作品は展開していますが、われわれも力になれればという事でご協力させていただいています。こちらから企画を持ち込むケースもあるし、逆に企業から意見をきかれるケースもあります。

基本的には、 まんが文化の大きな財産である横山光輝ワールドを後世へきちんとした形で残したい、その思いで活動しております。


――先日『鉄人28号 原作完全版』の1・2巻が発売され、ファンの間で話題ですが、「横山光輝クラブ」および江口さんも企画段階から深く関わっていると伺いました。この『完全版』を企画された経緯について教えて下さい。


江口:『鉄人』については、過去に様々な単行本が出ていますけど、ファンが満足するような物が一度も出ていないんです。『アトム』の方は100%ではないにせよ、ほぼ完全な形で出ていますよね。それに比べると・・・という思いが鉄人ファンの間にはあったんです。
さらに、私達『鉄人』を愛した世代がこれから60歳を越えて、果たしてマンガへの情熱を持ち続けられるだろうか、と考えた時に、今やっておかなければいけないと思ったんですね。そこで昨年から出版社に復刻の提案をしていたんですが、最終的に潮出版社から全24巻で出すということで決定しました。
原稿がかなり散逸しているのは残念ですが、(印刷物からの修整によって)きれいな絵で刊行され、多くのファンの方が喜んでいるそうです。

――クラブの中で手塚治虫についての話題が出るようなことはありますか?


江口:今回『鉄人』と『アトム』が宝塚で一緒に展示されたみたいに、手塚先生や、横山先生、そして石ノ森先生のような、今のマンガ文化を創った巨匠の作品が点在しないで一箇所で見られるといいね、という話はよく出ます。やはり私達は横山ファンですけど『アトム』も好きですし、『サイボーグ009』も好きですし。「横山」対「手塚」みたいな感じにはならないですよ(笑)。

――ずっとリアルタイムで読まれてきた方達は、やはり手塚マンガにも思い入れがありそうですね。
江口:そうですね。私は『白いパイロット』とか好きですし、『アトム』だとやはり「地上最大のロボット」とか。あと『ピロンの秘密』も好きですね。あれはTVになりましたけど、出てくる女性のコスチュームが子供心に色っぽくてね(笑)。

――ファン同士の交流なども行なわれていますか?


江口:コアなファンが全国にいますので、時間とお金がある限りは私達も地方の方達にはできるだけ直接会い、懇親を深めようと努めております。行く時は貴重な作品などの手土産を持参して、より深いファンになってもらおうとしています(笑)。昨年3月には「ファンのつどい」というのを初めてやったんですが、参加者の中には沖縄やシンガポール在住のファンの方も参加しました。その時は光プロさんから「みなさんへプレゼントして下さい」とたくさんの商品をいただきました。

――ファンと作家(プロダクション)が親密な関係なのですね。今回の『鉄人』の復刻でも江口さんがかなり原稿の整理をされたとか…
江口:原稿の整理については、「作品に詳しい」ということで以前からご協力はしていたのですが、特に『鉄人』は過去に単行本にする際に加工されてバラバラになっている原稿がかなりあって、それを年代別に分類したりして、整理したんです。これは他の作品でも同じで、今後単行本化する場合には原稿がどういう状態になっているのか整理が必要ですから、要請があればいつでもご協力するつもりです。

――最後になりますが、今後の復刻予定などありますか?
江口:横山先生もアマチュアの頃は雑誌に作品を投稿されていて、掲載されたものがずいぶんあるんですけど、それについて光プロさんの方から復刻のOKが出ましたので、来年発行する『オックス』8号から随時掲載していく予定です。

――ありがとうございました。今後の活動もがんばって下さい。

●『鉄人28号 原作完全版』についてはこちら
http://www.usio.co.jp/html/books/shosai.php?book_cd=842