(C)Tezuka Productions
 4月7日のアトムの誕生日にあわせて導入された、東京・新宿区高田馬場・早稲田の「アトム通貨」。導入当初は新聞やテレビ、インターネットなどの各メディアで取り上げられ、話題になったこの「アトム通貨」ですが、導入から1ヶ月経った現在、早稲田・高田馬場の地域社会にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。


←発足前日の4月6日に行われた記念式典では、アトムの着ぐるみも登場




↑通貨の種類は3種類。それぞれ左上から「10馬力」札、「100馬力」札、下が「200馬力」札
 地域通貨というのは、特定の地域だけで使える独自の通貨のこと。「円」や「ドル」などの普通のお金とは違い、使える範囲やお店、使える対象が限られています。
 アトム通貨も、使える商品やサービスが限られ、また、もらうには決められた条件を満たす必要があります。4月6日に行われたアトム通貨記念式典でも、10分清掃の時間が設けられ、参加した人全員にアトム通貨「10馬力札」が渡されました。
 他にも地域行事にスタッフとして協力したり、地域の子供達と一緒に遊んだりといったボランティア活動をすると、もらう事ができます。



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 ボランティア活動をするにはちょっと忙しくて…という方には、買い物の際にちょっと工夫をすることでもゲットする事ができます。
  ショップ「十万馬力」などで行っている、買い物の際に包装紙を断ると10馬力がもらえる「myエコバック」、また、「シャプラニール」さんなどが行っている、ショッピングをするだけで国際協力ができる「フェアトレードプロジェクト」などがそれ。
  いずれにしろ、地域や社会の役に立つ、「いいこと」をすることでもらえるというしくみです。

 どこに行けばもらえるの? どうするともらえるの? という疑問をお持ちの方のために、虫ん坊では、実際にアトム通貨を渡す「ピッチャーズプロジェクト」に参加されているお店から、「十万馬力」「立食信州そば はせ川」、またNPOの「シャプラニール」の三軒を訪ねてみました。
 「ピッチャーズプロジェクト」というのは、アトム通貨プロジェクトの1つで、アトム通貨を渡すプロジェクトのことをさします。他にもさまざまなお店や団体がこの「ピッチャーズプロジェクト」に参加しています。
 もっと詳しい情報をアトム通貨のホームページで確認して、まずはアトム通貨をゲットしてみましょう!


<当日はすごい反響>
 高田馬場・ビッグボックスに期間限定でオープン中の手塚治虫グッズショップ「十万馬力」でも"Myエコバックプロジェクト"を実施しています。
 "Myエコバックプロジェクト"とはお買い物の際、包装紙等を断って自分のバッグに商品を入れると10馬力がもらえる、というもので、他にもスーパー「稲毛屋」などで行われています。
↑「十万馬力」でお買い物。包装紙を断ると10馬力です。
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「初日はグランドオープンと重なっていたこともあり、行列ができるほどの沢山のお客様がいらっしゃいました」ということ。ほとんどのお客様が包装紙を断ったかわりに10馬力をゲットしたもよう。どうしたらもらえるのかが分からないけど、とりあえず来てみた、という方も多くいらっしゃったそうです。
「そういった方には、パンフレットをお渡しして、なるべく趣旨を理解していただくようにしました」
 「十万馬力」では現在でも一日にいらっしゃるお客様の約半数の方が、包装紙を断って10馬力をゲットされているようです。


立食信州そば はせ川
↑「はせ川」店主長谷川さん。アトム通貨を通じて、お客さんとお店が、ちょっとしたつながりを持てる、地域通貨ならではの現象です

<お客さんとのコミュニケーションも>
 お客様に自分の箸を持ってきてもらう"My箸プロジェクト"で参加されている「立食信州そば はせ川」さんは、アトム通貨を機にこのような取り組みをされるようになったそうです。
「割り箸は多い時で一日300繕ほどを捨ててしまいます。もったいないな、と思っていたんですよ」とは、店主の長谷川さんの談。洗って送ればパルプに再生してくれるという業者向けのサービスなどもあるそうですが、郵送代などを考慮に入れると、なかなか頭のいたいところ、ということです。
「現在では、一日7〜8人のお客様が自分の箸を持ってこられます。アトム通貨をきっかけに、この習慣がもっと一般的なものになればよいですね」
 「はせ川」さんでは、お店のホームページにMy箸を持ってきてアトム通貨をゲットされた方の写真を載せていらっしゃいます。
「お店が混み合っていないとき、お客様にお願いして、撮らせていただいています。アトム通貨の運用期間が終わっても、写真は何らかの形で残していきたいですね」。


NPO シャプラニール
↑お話しを伺ったシャプラニール・森田さん。手にお持ちの象のジュート(麻)製マスコットも、途上国の方が手作りしたもの。これがまた可愛いんです

<地域との結びつき>
  ネパールやバングラデシュなどの途上国の手工芸品などを買うことで気軽に国際協力ができる「クラフトリンク」や、読まなくなった本や書き損じのはがきを郵送してもらい、換金した資金で国際協力する、資源リサイクルと国際協力が一度にできる「ステナイ生活」など、さまざまな活動でピッチャーズプロジェクトに協力するNPO(非営利団体)「シャプラニール=市民による海外協力の会」さんでは、主に「ステナイ生活」への反響が多いということ。担当の森田さんにお話しを伺いました。
「アトム通貨がもらえる、ということで、お問合せも数件ありました。実際にお渡ししたのはまだ2枚ですが、子どもさんが通貨をくださいと、わざわざ届けにきて下さったりしました。県外からもお問い合せがあります。」
 他にも、「クラフトリンク」プロジェクトとしてはアトム仮装パレードと連動して、4月11日に行われた早稲田鶴巻町のフリーマーケットで、商品を購入した方に10馬力をお渡ししていました。
「クラフトリンクで扱っているのは、バングラデシュやネパールの女性達が生計向上のために作っている手工芸品です。このような製品には、もともとファンが多く、常連さんもいらっしゃいますので、アトム通貨がもらえるから買いたい、とおっしゃる方は少なかったです」
 他にも、「シャプラニール」さんが主催するボランティア入門講座の参加者にも、10馬力をお渡ししているそうです。
「アトム通貨の運営が始まってから、既に1回講座を開きましたが、通貨が目当て、というかたはいらっしゃいませんでした」



<趣旨を理解して>
 「普通のお金で買えますか? とか、もらえるものですか? と聞かれる方もたまにいらっしゃって、ちょっと困ってます」
 とは、「十万馬力」店長、及部の談。アトム通貨はあくまでも地域通貨。お金との交換や配布などは一切行っておりませんので注意が必要です。オークションで売るなんてもってのほか! また、現在の所は100馬力→10馬力といったかたちでの両替なども行っておりません。

 また「はせ川」さんでは、「たまに塗り箸でなくて割り箸を「My箸です」といって持ってくる人もいるんですが、それはちょっとねえ…。環境に優しいように、何度も使える塗箸を持ってきてもらっているのに、割り箸じゃ意味がありません」
 と言うお話も。

 「アトム通貨は、あくまで早稲田・高田馬場地域の中で循環しなければ意味のないものですから」とおっしゃるのは「シャプラニール」の森田さん。ただ、このプロジェクトをきっかけに国際協力に関心を持ってもらうのも目的のひとつとしてアトム通貨を広報しておられるそうです。
 「はせ川」さんでも同じような話題が出ました。
 「まだしわ一つなくてぴんとしていて、アトムのイラストがあしらわれているから、思わず手元に取っておきたくなっちゃう。でも、それでは意味がないんですよ。ちゃんと使われて、ぼろぼろにならないと」
 実はアトム通貨、徹底的に環境にこだわって、再生和紙を使用し、印刷にも環境に優しい大豆インクを使っています。コレクションしたい気持ちは分かりますが、ちゃんと使って、大いに活躍させてあげましょう!
 ところで、「はせ川」さんのお話しによると、早稲田商店街では、9月20日に行われるお祭り「地球感謝祭」で、大々的にアトム通貨を回収しようと計画されているそうです。
 地域通貨は、地域社会の経済を活性化させる意味も持っています。アトム通貨も、使われてはじめて、その真価が発揮されるもの、といっても良いでしょう。ゲットされた方、ぜひ高田馬場・早稲田の商店街でご活用ください!

関連情報:
■立ち食い信州そば はせ川  ホームページ
■NPO シャプラニール  ホームページ