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今回のインタビューは年末号ということで、今年手塚治虫文化賞を受賞されました、漫画家・岡野玲子さんの元へインタビューに伺いました。

Q:手塚治虫文化賞受賞作品の「陰陽師」ですが、この作品に惹かれたものはなんでしたか?原作の夢枕獏さんも漫画化するなら岡野玲子さんがいいとおっしゃっていたそうですが。
A:最初に私の方が獏さんの陰陽師を発見してしまったんですね。文章の流れと読んでいるうちに映像というか、ビジョンがどんどん見えてきてしまって、是非漫画化したいと思ったんです。詩的な文章がとても美しく、また私の想像しえない場面展開がとても魅力に感じたんです。
Q:陰陽師を拝見させて頂いて「絵」の魅力にとても惹かれたのですが、漫画化にあたり、どのようなこだわりをお持ちになって作品に取り組まれたのですか?
A:原作として素晴らしい作品なので、漫画化するには、漫画として最大限その魅力を発揮できる表現をしたいと思いました。色々と試してみようと思って実験的なことやっています。
Q:また、作品を手がけるにあたって、何度も京都に足を運ばれたとお聞きしましたが。
A:えぇ、行きましたね。私は季節のいい春とか紅葉のシーズンに、あまり人がいないところによく行くのですが、一人探索して、まずいい光景に出会うとそこに晴明を立たせることを考えて、写真を撮ってきて、参考にしたりするんです。
Q:では、晴明と博雅の関係についてご自身ではどう捉えられていらっしゃいますか?
A:すごくいい友人関係というか、余計なことは言わずに通じ合っているいい関係だと思っています。ただどちらかというとやはり晴明の方がちゃんとわかっていて、博雅の方が後から理由がわかって驚くような役割になっていますよね。そしてまた、博雅も晴明を保護しているような、貢献しているような。
Q:登場する鬼や妖怪は怖いというイメージより愛らしさを感じるのですが、岡野さんの中でどのように表現されたかったのですか?
A:基本的に鬼とか妖怪は怖いと思ってないんですね、かといって、好きなわけでもないんですけれども。どういうのだったら好きかな?と思って考えるとコミカルな存在な方が愛せるかなと思って。いたずらな存在なんですよね、鬼や妖怪って。
Q:では、岡野さんご自身についてお聞きしたいのですが・・・今の岡野さんからご覧になってどのようなお子さんでしたか?
A:まったく別人かなぁ(笑)子供の時の方が大人っぽかったですね。いたずらな大人って感じ(笑)
Q:小説や映画の方がお好きだったとお聞きしましたが、漫画家になろうと思われたのはいつ頃からですか?
A:高校ぐらいだったかな・・・漫画家になろうと思ったのは。
私はどんどん自分の中でビジョンが見えてきてしまうので、漫画はその漫画家さんのビジョンというものがあって、まずそれを受け入れなくてはいけないので、私としては漫画を読むというのは実は苦痛だったんです。それに比べるとやはり小説の方は私が読んできた時代は緻密であって、自由なんですよね、想像するのが。特に私は推理小説や冒険小説、海洋小説が好きで、自分自身でも小説を書いていたんですよ。映画というのは、やはり映像そのものがリアルなので、そのまま何の苦痛もなく観れてしまうんですね。サム・ペキンパーという映画監督がいらして、その方はバイオレンス映画を撮られるんですが、彼の初めて試みた編集方法で、2箇所で起こっていることを3コマぐらいのカットで交互に表現して、同時進行しているものをみせるという手法を観たんです。その時に小説ではできない・・・と思いまして、やっぱり漫画の方がビジョンを表すにしても、同時に走行しているものを描くにしても自在だなということに気がついて漫画家になってしまいました。
Q:絵は小さい頃からお好きだったんですか?
A:絵は好きでしたね。ただ、音楽も好きだったものですから、学校の時代に選択科目があると音楽の方が楽に点が取れるからと思って、美術をサボっていたんですよ。結局最終的には美術の方に進んで徹夜してでも漫画描いているという人になってしまいましたね(笑)
Q:ビジョンが見えてこない時の気分転換の方法などありますか?
A:出てこないときはチャンスだと思って寝ますね。これは寝ろって言ってくれてるのだ!と思って寝ます(笑)
Q:「絵」で表現できることの楽しさとは?
A:近頃、本当に思いもよらないことが起こるんですよね、描いていてどんどん変わっていったりするんで、面白いなぁと思ってます。それに対して抵抗しないんですよね、私。思い浮かばない時は浮かばないで抵抗しないし、カラーとか描いていると筆が勝手に動いちゃって、そんなはずでは、そんなはずでは・・・って考えていても抵抗しないんです。これじゃ私は変態だと思われちゃう・・なんて思ってもね(笑)。でも抵抗しないで、進むがままにいくと、それが思いがけずいい感じ!っていうことがあるんですよ。だから抵抗しないで、手が動くままにするんです。私自身も作者だけれども、描きながら読者でもある感じですね。
Q:お仕事以外にハマっていることがありましたら教えて下さい。
A:仕事以外っていうよりは、全て何だか仕事と繋がってしまっていて、逃げても逃げても繋がっちゃうんですよねぇ〜。あらゆることに興味を持つのが好きですね。
Q:岡野さんが思う手塚治虫とは?
A:限界にチャレンジする人。良質の冒険家なんだなと思いますね。自分でここまできてやっと、やっぱり物を作る人たちというのは冒険家でなくてはならない、という思いがあって、結果がわかっていることとか、こうやればこうなるだろうっていう無難なことをやっていては新しいものは何も生み出せないし、今までなかったことっていうのを作りだすことが出来ないじゃないですか。だから常に挑戦するということが必要だなと思っていて、それをやりつづけた方が手塚治虫さんだと思いますね。
Q:今後挑戦してみたいものは?
A:毎日挑戦しているみたいなもんなんですよ(笑)。机に向かうと毎回新しい課題というか超えないといけないハードルが出てくるので、新しいことを考える暇はなく、とりあえず前にきてしまったことから超えていくって感じですね。でも遠くには想像もつかないことが次に待っているんだろうなぁ〜と思ってワクワクして待ってるんです。
Q:最後にファンのみなさんへ一言お願いします。
A:作家だけでなく、生活そのものが冒険であるから、楽しいことややってみたいことには果敢に挑戦してほしいと思うんです。そうすると、道が色々開けてくるし、視界も広がって新しい視点でみることができるんですね。せっかくの人生なので、みなさんもいろんなものに挑戦してみたり、色んなところに行ってみたり、色んな人に会って吸収してほしいですね。そして、自分自身が持っている固定概念というのを捨てて、素になって相手と対峙するというのが一番得られるものがマックスで入ってくるので、そういうところを意識して生きてみるとかなり楽しいんじゃないかな?と思います。是非そうして下さい!(笑)

イベント開催の準備でお忙しい中、楽しいお話から勉強になることまで、お話して下さいました。本当にありがとうございました。今回取材にお邪魔した所は写真撮影が禁止ということで、インタビュー時の写真がなく、ごめんなさい。本当にお見せしたかった・・・。

そして、取材が終わってから、岡野さんから 「ちなみにうちの仕事場では、チャッカマンと呼ばれているんですよ、あちこちの色々なキャラクターを着火して歩いて。本領を発揮させようとしているから、着火マンなんです(笑)」と晴明の別名まで教えて下さいました。

11月21日に発売された、岡野玲子さんプロデュースのCD「eyemoon」(Victor Entertainment, Inc.)

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