『火の鳥』がエスペラント語に翻訳?!  兵庫県宝塚市で10月12日から14日まで開催される「第88回日本エスペラント大会」に合わせ、『火の鳥・未来編』のエスペラント版が限定出版されると聞いた「虫ん坊」スタッフは、さっそく大会の組織委員長である西尾務さんに取材を申し込みました。「エスペラントって何?」という人も、「その本、興味ある!」という人も、インタビューをじっくり読んで下さい!

     


【お話】西尾 務さん(第88回日本エスペラント大会組織委員長・宝塚エスペラント会書記)
「エスペラント」というと、「国際共通語」というイメージが最初に浮かぶのですが、全く知らない方のために、どのような言語であるのか説明していただけますか?
西尾:エスペラントは1887年にポーランド(当時はロシア領)の眼科医ザメンホフによって考案された国際共通語です。民族語の文法的な不規則を整理してつくった言葉ですが、暗号のような味気ない記号の体系ではありません。
28個のアルファベット文字と、16カ条の基本文法で構成された、学びやすく表現力豊かな、人間的な言葉です。もちろん日本語や英語と同じく、話し言葉としても実用されています。ユダヤ人として激しい民族間抗争と差別を体験したザメンホフは、言葉の壁や民族的偏見をのり越えて、人々が自由に、そして対等に交流するための中立言語の創造に生涯をかけました。
言語や文化の多様性は人類の宝です。エスペラントは民族語にとって代わろうとするものではなく、異なった母語を話す人どうしが意見を交換するための「橋わたしの言葉」です。それぞれの民族が,たがいに相手の言語,宗教,民族的文化を尊重しつつ意見を交換する。
これを可能にする手段のひとつが国際共通語エスペラントです。
世界中でどの程度使用されているのでしょうか?
西尾:発表から一世紀以上を経て、百十数ヵ国全世界で約百万の人々がエスペラントを用いて、旅行や文通、無線通信を楽しんでいます。年間数百点にのぼるエスペラント図書が出版され、定期刊行物も数十を数えます。毎年一度行われる世界エスペラント大会には、世界中から数千もの人々が集まり、さまざまなテーマについてこの言葉で語りあいます。
今回のエスペラント大会は第88回目ということで、かなり歴史があるイベントのようですが、毎年日本で開催されているのですか?
西尾:1906年、東京で第1回大会が開かれ、不定期の時期を経て、1916年からは1944年の大戦による休みを除き、毎年1回、日本の都市を巡回して開かれています。
平均の参加者は、ここ10年は約500人です。
ちなみに99年は長野県望月、2000年は熊本市で開かれました。来年は、福島市で開かれます。
具体的にはどのような目的で開催され、どのような事を行うのですか?
西尾:全国のエスペランチスト(エスペラント学習者、運動者)が参集し、研究発表、分科会、講演会、演芸会、活動展示などを行い、また市民向けに公開講演会、入門講習会などを行います。年1回、各地のエスペランチストが互いに交流し、情報交換する場でもあります。
今回の『エスペラント版火の鳥』はどのような経緯で出版されることになったのでしょう。なぜ『火の鳥』なのでしょうか?
西尾:日本大会では、毎年、記念品(本が多い)を作り、参加者に配布しているのですが、今回は会場として兵庫県宝塚市が決まり、地元にちなんだ記念品として手塚漫画を選ぶことになり、また、本格的な日本の漫画のエスペラント版での出版は最初のことであったので、その候補としては手塚治虫以外には考えられませんでした。
更に翻訳者の小西岳は、若い頃漫画家を志していて、その作品が手塚治虫の目にとまり、中学の3年頃から3年ほど、週に1回程度直接の指導を受けたという縁もありました。 また、手塚プロダクション社長の松谷孝征様が、1994年11月に宝塚市で開かれたミュージカルフォーラム「手塚治虫と宝塚歌劇」で、「また、手塚治虫には生前、『漫画記号論』といって、漫画は世界のエスペラント語になりうるという持論がありました。 風土や習慣の違いなどのために理解しあえることの少ない人たちが、国境を超えて、漫画を通じて話し合って理解を深められればこんなにいいことはないんじゃないかと申しておりましたので、手塚治虫記念館は、そういうことを率先してやっていく機関であってほしいなというふうに考えております」(「手塚治虫のふるさと・宝塚」河内厚郎編著・神戸新聞総合出版センター・1996年12月発行 所載)と話されており、エスペラント版作成へのご理解も得やすいと思われたこともあります。

次に、どの作品を翻訳するか、という問題があったのですが、これまで、手塚治虫の作品は多数海外へ紹介されておりますが、英語への翻訳を調べてみますと、残念ながら『火の鳥』は含まれておりません。しかしながら、手塚治虫のライフワーク、代表作というと、やはり『火の鳥』であろうというのが我々の結論でした。商業主義的には『ブラック・ジャック』の方が好ましかったのですが、「日本の代表となる作品」という点も考慮して、『火の鳥』と決まりました。
○数あるエピソードの中から「未来編」を選ばれたのには何か理由があるのでしょうか?
西尾:『火の鳥』には、大きく分けて、日本歴史から題材を採ったものと、未来を舞台とするSF的な物語があり、日本の読者には「歴史もの」の方が深みがあって面白い、という面もあるのですが、海外の読者も考えた場合には、民族を超えた内容である「未来もの」の方が適していると判断しました。その上で『火の鳥』の全編を貫く作者の宇宙観・生命観を伝えるには、この「未来編」が最も適していると思われました。
エスペラント大会には各地のエスペラント会の方達が参加されるようですが、一般の方も参加して、この本を購入することはできますか?
西尾:一般向けの公開番組のひとつとして、エスペラント関連の図書を販売する大会書店がある大会サロンを開放しており、ここで、ご希望なら『火の鳥・未来編』エスペラント版を買っていただけます。
今回の出版で、他の国の方達が『火の鳥』を楽しめるようになったのは素晴らしいことですね。
西尾:ご子息の手塚眞様からも、「『火の鳥』がエスペラント語に翻訳され、普遍的な物語がさらに普遍的な世界に紹介される素晴らしい機会になりました。ここから未来に向けた豊かな眼差しが生まれてゆくことを期待しています。(抜粋)」というお言葉をいただいております。

関連ホームページ

●日本大会公開番組 http://www.bongo.ne.jp/~teg/jap/jk88koukai.htm

プレゼント

今回ご紹介した、エスペラント版『火の鳥・未来編』を抽選で5名の方にプレゼントします。ご応募のメールには住所・氏名・電話番号を明記の上、件名に「エスペラント版火の鳥希望」と書いてお送り下さい。締切は10月20日必着です。

★この募集は終了いたしました! ありがとうございました★

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