七夕と言っても東京のような都会では、天の川はもちろん、ろくに星を見ることも不可能だったりする。沢山の建物が放つネオンライトが夜空を必要以上に照らしてしまう。
っていうか、都会のひどい大気汚染によって空気中のチリやホコリが照明を乱反射してしまうのが原因なんだそうだ。たまに郊外の方へ出かけていくと、頭上に驚くほど星がひしめき輝いているのを目の当たりにして、感無量になったりする。そしてあらためて自分が宇宙の中に存在する事を実感させられるのだ。田舎に住む人にとっては至極当たり前の光景ではある訳だけど、悲しいかな、都会生活の人間にはそんな星降る夜空なんてプラネタリウムで確認するしかなかったりするのだな。
 プラネタリウムといえば、父が幼い頃よく通っていたらしいが、実は私も中学生の頃には結構ハマって頻繁に足を運んだりしていた。渋谷にある五島プラネタリウム。先日、多くのファンに惜しまれつつ閉館してしまったが、私にとってもあのプラネタリウムは本当に格別の思いのある場所。それもそのはず、麗しきファーストキスをしたのがあの場所だったのだから。
 満点の星空(疑似だけど)の下でのファーストキッス。いま思い返せばムチャクチャこっぱずかしい体験だけど、まだまだウブだった中学生のカップルにとっては、プラネタリムほど非日常的で刺激的で、ロマンチックなデートスポットはなかったと思う。暗闇にまぎれてイチャつくカップルは多かったし、シートは隣接してて、しかも斜めに倒れるし(これがもうドキドキで…)。隣に座った相手をやたら意識しまくっては、ろくすっぽ星の解説なんて聴いちゃいられず緊張してた。だからあれだけマメに通ってたくせに、結局ほとんど星座なんて覚えてやしない。思い出は多くても、実に身にならなかったわけだ。ま、もとより動機が不純だったしね。
 そんなプラネタリウムデートを重ねていた、中学生時代の彼氏とのエピソードが、実は密かに父の漫画に描かれてしまっていたりする。あの『マコとルミとチイ』の中の一話だ。
  「その17」にルミ子が幼稚園のお友達から電話をもらい、えんえんとクダラナイ長電話をするというくだりがあるが、あれはまさに中学生だった私の日常茶飯事そのもの!しかも内容が友達の色恋沙汰ばっかというのも、また電話口でオイオイと泣いてしまったというのも、あらかた事実といえる。そしてなによりルミ子が電話でBFに告白されるというエピソード。あれこそまさにプラネタリムデートのきっかけとなる彼との“事の始まり”なのダ。(もちろん大幅に脚色もされているのだけど…) 父親からしてみれば、たかが中学生ごときの小娘が、愛だの、恋だの、別れるのだのといった会話に夢中になってるなんて、実にアホらしく思えたに違いない。物語では私の電話魔ぶり(いや、確かにそうだったけれど)が実に奇怪な状況として描かれてしまっているけれど、当時の私にしてみれば、あるいはそんな経験した人もいるだろうが、どんなにクダラナイ痴話電話でも、そりゃもうルミ子の言う通り「大大大事件なんよー」だったわけだし、ましてや恋の告白を受けてる電話ほど深刻で重大な事件はない。むしろそんな劇的タイミングに親が横から口を挟むなんてのはもっての外!気が利かないどころかお邪魔虫(死語?)そのものだったろう。だからたとえ父や母が聞き耳を立てていようとも、私は彼からのラブコール(ひゃー、これまたこっぱ恥ずかしい!)に堂々と臨んでいたもんだ。
  『マコとルミとチイ』に出てくる母の台詞で、「ルミ子って男好きらしいわ」というのがあるが、それに対して実際のところ私は何も言いかえせやしない。けれど「そう、男は顔なんてマンガ的でいい。問題は中身なのだ」という父の台詞に対しても、現実の私はいたって忠実であり、納得してるともいえる。「ヘンな顔だけど好き」そう結論づけたルミ子こそ現実の私そのものであるし、漫画家のうちに生まれたムスメの法則的ともいえる“男を見る目”のようなのだ。(あー、すっかり七夕と関係ない話になっちまったい…) /了


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