ぼくは70年代おわりから80年アタマのテクノ・ミュージックで育った男です。 もちろん世界最初のテクノバンド、クラフトワーク大好き。 クラフトワークの『人間解体』というアルバムに「メトロポリス」というのがあって、もちろんそれはドイツの古典映画『メトロポリス』からインスパイアされた曲だと思いますけど、けっこう今でも聴いてます。(同じアルバムに「ロボット」という曲もある) 手塚治虫も同じ映画からインスパイアされて漫画を描きました。 といっても、本人の話ですと、映画そのものは当時観ていなくて、題名と登場する女性型のロボットの写真を雑誌で見て、思い付いたストーリーだそうです。 これをパクリとか猿真似とか呼んではいけません。映画の歴史は先達の作品からのインスパイアで成り立っているのです。 だから『ライオンキング』も『ジャングル大帝』にインスパイアされているといって、マネだのなんのというのは子供じみている。とぼくは思うわけです。 『メトロポリス』の映画の方は、80年代にジョルジォ・モロダーによる新しい音楽がつけ直されてリバイバルしましたが、ぼくはやっぱりオリジナルのサイレント版が好き。(ぼくは実はモノクロのサイレント映画が大好きなんです!) 手塚版『メトロポリス』の人造人間ミッチーは可愛らしい女の子の姿でしたが、ぼくは原典に登場するマリアという女性ロボットがやっぱり好きですね。 最初はロボットの姿で登場するのですが、生命が吹き込まれると、なまめかしい女性の姿に変身するのです。 それがヴァンプっぽい、男を惑わす妖艶(ようえん)な感じで、とてもカッコいい。 彼女が色っぽく踊る場面は、いまでもぞくっと来るイメージです。 ぼくの映画『白痴』に登場する銀河というキャラクターにも、このマリアのイメージが少し重なっています。彼女のショーの場面では、CGの映像を使いましたが、そこはかなり『メトロポリス』っぽいのです。 親子で同じ映画が好きで、同じ映画からインスパイアされて作品を作ってるって、ちょっと面白いでしょう? でもそれだけオリジナルの映画のイメージが強いということなんですね。 オリジナル『メトロポリス』はその後、たくさんのSF映画に影響を与えてきました。 今度は手塚治虫の『メトロポリス』にインスパイアされて、現代のアーティストが新しいアニメ映画を作る。それも素敵なことではありませんか。 どれほど原作に忠実とか、原作と違うとか、そんなことはどうでもいいのです。 人に歴史があるように、作品にも歴史があるものです。 |
|