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イラスト/手塚 眞 ぼくが生まれたのは、ちょうど最初の『鉄腕アトム』のアニメが作られ出したころ。 だもので、父親の周囲にいた人々は、誰しもぼくのことを「アトム」と呼んだわけです。子供心にも、これは恥ずかしかった。 なにしろ相手は百万馬力の正義の味方ですよ。そんなものと比べられた日には、思わず「すみません」ってあやまっちゃいますよ。しかも、ぼくは身体がちっちゃくて、虚弱体質ぎみときていた。パワーなんてまるでナシ。 ところがおかしなモノで、イヤだと思いながらも言われ続けていると、いつしかアトムが血を分けた兄弟のように感じられてくるからフシギです。アニキはデキが良くて、いつもみんなの人気者でいいよなぁって感じ。苦手なんだけれども、本当にキライにはなれない、というより本当はスゴク好きなはず…。 一番好きな手塚治虫作品は?って聞かれて、一度も「アトム」って答えたことはないんですけどね。それこそ兄弟のひがみなのかな? 実は手塚治虫自身にも、アトムは宿敵だったようです。 つまり手塚マンガ・イコール・鉄腕アトムって思われるのがしゃくだったんですね。 人気が出すぎてしまったことに対する反動でしょうか。 作家にはこんな矛盾する気持ちがあって、評価されたいのだけれど、いつまでも自分の作品を引きずりたくない、って思うんです。だから手塚治虫もアンチ・アトムの作品をずいぶんがんばってかいたと思います。 そんな父の姿勢にも、微笑ましさを感じますね。 あれ、まてよ。 すると「ぼく」もアンチ・アトムの作品なのかい? そういえば思い当たるフシが…。 まぁ、いいか。 もちろん、代表作にはほかにも名作がたくさんあります。 でも申し訳ないことに、やっぱり手塚マンガといえば、まず「アトム」なんですね。 ぼくはそれでもいいんじゃないかな、って思いますが。 最近はロボットがよく話題になっていますね。 ぼくはアトムの兄弟だから、インタヴューされる機会も多いのですが、本当にアトムは誕生しますか?って尋ねられると、ちょっと答えに困ります。 パワーはともかく、やさしい心を持ったロボットは生み出せるとぼくは信じています。でもそれを生み出せるのは、天馬博士のようなおっかない科学者ではなくて、やっぱりやさしく美しい心を持った研究者の手によってなのでしょう。 そんな科学者が出現するかと問われると、ちょっと自信は揺らぐのですけれど…。 |
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