ミッドナイト ACT.30(第3巻ACT.7)
解説:
(手塚治虫 秋田書店刊 少年チャンピオンコミックス『ミッドナイト』はしがき より)10年間、温めてきたタクシー・ドライバーの話です。この仕事は、毎日、色んな人間の色んな人生がのぞけて、うらやましいなと思いながら、ドライバーの気分で描いています。名前も、年齢も、素性もわからない深夜タクシーの一匹オオカミ・ミッドナイト、どうぞごいっしょに同乗してください。
読みどころ:




勇者ダン
解説:
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『勇者ダン』あとがき より)ぼくには動物を主人公にした物語がやたらにあります。「ジャングル大帝」のライオンをはじめ、犬、猫、ネズミ、兎、狐、象、イルカ、鳥、魚、虫にいたるまで。トラはこの「勇者ダン」と「タイガーランド」。それにテレビの「プルルくん」。
トラは陸上の猛獣ではいちばん強いのだそうです。インドにはかつてライオンが群棲していたのが、トラのために絶滅においやられたのだという説があります。トラは大好きですが、あの絵をかくのがやっかいなために、漫画、ことにアニメでは、あまり登場はしておりません。
「勇者ダン」はまた、アイヌを主人公にした物語です。ぼくはアイヌをきわめてロマンチックに北方の果敢勇壮な民族としてあこがれていたのです。しかし、あとで悲惨な歴史と現状を知り、深く反省をしました。だけどコロポックルをはじめとして、アイヌの神話や伝承は大好きです。
「勇者ダン」は、「白いパイロット」に続いて、「少年サンデー」に載ったのですが、最初から読者の反響が悪く、しかも締め切りが遅れっぱなしで、ついにこの作品のあと、しばらく干されるハメになりました。
ぼくは、何度も仕事のうえで好調のときとドン底のときとをくり返していますが、「勇者ダン」の頃はやはり全体に低調で、自分でも方向を模索していた時期です。その原因は、やはりラジカルな劇画の台頭のためでしょう。
読みどころ:

この作品はやはり"トラ"でしょう。「ジャングル大帝」のレオを例にあげるまでもなく、動物、そして猛獣の描写を得意とする手塚治虫ですが、「勇者ダン」におけるトラのキャラクター・ダンの力強さとボリューム感は、シンプルな線で描かれているとは思えないほど"トラ"のそれであり、体毛の柔らかさまで感じ取れます。ビデオもない当時のこと、当然資料も少なかったかと推測されますが、ここまでいきいきとした描写がどうやってできたのか、不思議です(作品冒頭でオリから放たれたダンの躍動感!)。


ストーリーの方は、悪の組織との財宝争奪戦がメインで、当時の少年漫画としては良く使われたパターンです。作品後半、財宝の隠し場所を発見したあたりからは、後のヒット作「三つ目がとおる」めいてくるのも興味深いところ。
設定については、コタンにトラ柄の帽子とマフラーを着けさせたり、ムチを持たせたりと、受ける要素をもりこもうとあがいた後もありますが、煮詰めきれていない感があるのは、やはり「模索していた時期」の作品という事なのでしょう。

初めて読む人も、再読の人も、手塚治虫の作品年譜を片手に読んでみると、新しい発見があるかも…?
鉄腕アトム ホットドッグ兵団
解説:
「鉄腕アトム ホットドッグ兵団の巻」は、月刊誌『少年』昭和36年3月号から10月号にかけて掲載されました。読みどころ:




冒険狂時代
解説:
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『冒険狂時代』あとがき より) この支離滅裂な漫画の原案は、じつはぼくが中学生のときかいた一千ページ近くにおよぶ習作です。題名を『おやじの宝島』というこの習作は、主人公の少年武士のかわりに、例のヒゲオヤジが役をつとめていたのです(もちろん現代の服装でした)。そしてこのガムシャラな私立探偵と、フランスのガニマール警部とシャーロック・ホームズが、宝島の地図をめぐって、怪盗アルセーヌ・ルパンとあらそうという大筋だったのです。
…(中略)…
ところが『おやじの宝島』は、どちらかというと劇画にちかいリアルな物語の上、恋愛までからんでいたので、かなり大幅に内容を変えないわけにはいきませんでした。
そして、なぜか主人公を西部へむかう日本の少年武士にしてしまったのです。
その名も、嵐風之助という、かっこいい名にきめました。ところが秋田書店の人が、これもなぜか“風”という字を“凧(タコ)”にまちがえて活字を組んでしまったのです。仕方なく、とんだまちがいのまま、嵐タコの助でとおすことにしました。
…(後略)…
読みどころ:





作者自らの元ネタ解説も作品中についておりますので、古い映画がお好きな方なら、お読みになって確かめて、ほくそえむのもまたひとつの楽しみ方かも知れません。
八角形の館
解説:
(以下手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『ザ・クレーター』3巻 あとがきより)
「ザ・クレーター」のタイトルは、別に意味はないのです。連載冒頭に、なんかしかつめらしいナレーションで解説していますが、そのときにはまだ一貫したテーマなんか決めていなかったのです。もちろん最後の「クレーターの男」なんかも、タイトルと関係はありません。
読み切り連作は、つまり短編の集合なのでどうしても出来不出来があるし、印象も散漫になりがちです。しかしこの「ザ・クレーター」はかいていて楽しく、「空気の底」や「ライオンブックス」「メタモルフォーゼ」などの連作ほど出来の差がはげしくなく、一応のレベルを保っていると思います。
オクチンという少年を登場させたり、読者に統一感を持たせようと苦心したものです。
読みどころ:


このマンガの主人公・熊隆一はその点恵まれていて、どちらの道に進んでも表向きは輝かしい成功が待っているのですが、売れっ子漫画家の道を歩んでいた熊隆一もまた、魔女のような老婆の言葉にそそのかされて八角形の館を訪れてしまうのですから、人生は難しいものです。もしあなたがこの物語の主人公だったら、果たして八角形の館を訪れぬまま、人生を全うできるでしょうか?






