火の鳥 未来編
解説:
「火の鳥 未来編」は、雑誌「COM」1967年12月号〜1968年9月号に、「火の鳥 第二部」として連載された(第一部は黎明編)。西暦3404年の未来を舞台に、人類の滅亡と、その後の新人類の誕生と進化を、何十億年にもおよぶ時間の流れとともに描いた、壮大なSF作品。読みどころ:




シュマリ
解説:
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『シュマリ』あとがき より抜粋)ぼくには「勇者ダン」という、アイヌの少年を扱ったSF作品があります。
再び青年誌でアイヌ問題を扱おうと考えたのは、「北海道開拓誌」という本で、上川地方のアイヌ大集落の悲惨な歴史を読んだからでした。それもあくまでも内地人の立場から一方的にかいたもので、逆にアイヌ側からかけば、およそちがった内容のものになるだろうと思いました。それで明治初期に、堂々と侵略者である内地人と対決した架空のアイヌのヒーローをえがいてみたい気持ちになりました。
だから、主人公のシュマリは、はじめの構想ではアイヌと内地人の混血の青年だったのです。
それが、どたん場で急に幕府のもと旗本になってしまったのは、アイヌ問題は、かるがるしく漫画やフィクショナブルな物語では取り扱えない、複雑で、重大な問題を含んでいて、しかも征服者である内地人であるぼくが、被害者であるアイヌの心情などわかるはずがないと悟ったからです。
もちろん、この物語の予告を読んだアイヌのかたがたから、内容はきわめて注意をするように、と忠告されたことにもよります。
それまでにたてていた構想をすっかりひっくり返し、白紙に戻して、タイトルだけ残してあらたに筋立てをするのは、おそろしくやっかいなことでした。そして、まずそれはもとの構想よりも上等な作品に生まれるはずがありません。
そのうえ、連載をしつつも、編集部で何度もセリフの変更をされるのでした(編集部にも、アイヌのかたから注意があったそうです)。
で、結局完成した作品がこれです。シュマリはたいへんあいまいな性格の、ぼく自身乗らないヒーローになりました。
ウエスタン調の、この開拓裏面史は、中央政府が薩長によって確立される前後の、余震のような出来事といえます。
じつは、この物語をかく前は、ぼくはたった一回、それも漫画集団のサイン会のために北海道へ行ったきりなのです。ことに、石狩平野の一部である千歳あたりさえ、まっくらな夜中に通っただけでした。だから、画面はほとんど全部頭の中でデッチあげた当時の北海道です。(後略)
読みどころ:

主人公は、野生的でありながら剣の腕も立つ男・シュマリ。彼はもともと内地人ですが、先住民のアイヌ人に敬意を持ち、親しく交流していました。ちなみに「シュマリ」とは、「キツネ」を意味するアイヌ語です。彼が北海道へ渡ってきた目的は、逃げた妻・妙(たえ)と、相手の男を探し出すこと。




W3
解説:
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『ユニコ』第2巻 あとがきより) 「W3」とかいて、「ワンダースリー」とよませるのがそもそも無理で、この作品はもともとテレビアニメシリーズ向きに企画されたものです。だから、タイトルもやや奇をてらったのでした。(中略)
このシリーズのキャラクターは、スタッフ全員で考えて、ひねりだしました。背景もわざと大きなセット的な絵をかいて、そのあちこちを写真にとってぼかしてつかうという新手法を用いました。トレス線を、りんかくだけを少し太めにアクセントをつけてかいたのもユニークでした。
(中略)
「W3」もアメリカのローカル局に売れました。アメリカでは「アメージング=スリー」ともうしますが、「鉄腕アトム」ほど知られてはいません。
アニメそのものも、やや中途半端でした。しかし、漫画のほうは、ラストのタイム=パラドックスの手法など、当時のぼくとしては、どんなもんだ、といってみたいのですが、どうでしょうか。
読みどころ:


どこかにもっと文明の発達した世界があって、くだらない事に向きになっている地球人達を冷ややかに見下ろしているに違いない、あまり馬鹿な事ばかりをやっているといつか、——異次元からか宇宙の彼方からか、使者がやってきて、一瞬のうちに地球丸ごと、消し去ってしまう…という想像は、手塚作品によく登場する設定で、この『W3』のみならず、さまざまな短編・長編で繰り返し扱われてきたテーマもあります。 『W3』のボッコ・プッコ・ノッコもまた、地球上の動物達に身をやつした宇宙屈指の優秀な調査員で、水爆実験や紛争に明け暮れる1960年代の地球の実態を調査するため、はるか彼方の宇宙から地球にやってきたのでした。



大洪水時代(地球の悪魔所収)
解説:
(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『地球の悪魔』あとがき より)(前略)
「大洪水時代」は短い作品で、「おもしろブック」の別冊付録についたものです。ぼくはノアの箱舟伝説が好きで、どうもいろんな作品に出したがるのですが、これにも箱舟が出てきます。「日本沈没」の洪水版のようなストーリーは、その頃読んだ何かの記事に、「もし北極の氷が全部解けると、何十メートルか水位が上がって、東京一帯は水の下に沈没する」というのがあって、それをヒントにしたのでした。
読みどころ:
どんなに怖いもの知らずの
日本軍の技師を務める


大災害という、だれにも逆らえない状況において、切羽詰った人間はどんな行動を、そしてどんな心の動きを見せるだろう? この作品はそんな問題にも一つの答えを見せていて、特に脱獄囚たちの心の動きの変化はなかなかに興味深いものがあります。意外な人物が意外な面を見せたりしているので、そんなところにもご注目ください。
そしてやはり、じんとくるラストシーンは必見。サスペンスとすがすがしい感動の両方を味わえる名作です。
人間昆虫記
解説:
(以下手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『人間昆虫記』あとがきより)
その陰と陽の不条理な時代に、マキャベリアンとしてたくましく生きていく一人の女をえがいてみたいと思ったのです。これをかく以前に、プレイコミックには「空気の底」という短編を載せていましたが、思い切って長編を試みました。
登場人物の名前は、どれにも昆虫をもじってつけてあります。これをかきながら、ぼくはカレル・チャペックの「虫の生活」を思い浮かべていました。
昆虫の世界は、人間社会のカリカチュアだと思います。
読みどころ:



なお余談ながら、解説にでてくるカレル・チャペックは、手塚治虫お気に入りのSF作家で、「ロボット」という言葉を考え出したことでも有名。手塚治虫初期の代表作『ロック冒険記』も、チャペックの『






