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虫ん坊 2018年1月号 特集1:手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー 第2回 大塚明夫さん

虫ん坊 2018年1月号 特集1:手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー 第2回 大塚明夫さん

大塚明夫さん


 主役か否かに関わらず、作品のテーマを背負って挑む――

 手塚治虫生誕90周年記念企画の第2弾は、ブラック・ジャックの声でお馴染み、大塚明夫さんが登場!
 アニメやゲームをはじめ、吹き替え、ナレーションと多岐にわたり第一線でご活躍されている大塚さんが、ブラック・ジャックという役をどのように捉えどんな思いで演じていたのか。
 また、声優という道を選んだきっかけやお仕事に対するポリシー、演技についてなど、ざっくばらんに胸の内を語っていただきました!



虫ん坊 2018年1月号 特集1:手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー 第2回 大塚明夫さん

僕は芝居以外何も出来ないんだから、この場所でちゃんと生きていかねばと、
ただひたすら目の前の役を演じることを考えながら、
一本一本勝負のつもりで挑んでいました

―――著書『声優魂』*1を読ませていただきましたが、帯に「声優だけはやめておけ。」と書かれているように、夢を持つ若者への強いメッセージを感じました。


大塚明夫さん :(以下、大塚)

帯にはそう書いてあるけど、実は僕が言った言葉じゃなくて、編集の方が煽りで付けたものなんですよ(笑)。
 声優というお仕事は、非日常の世界を常に浮遊しているようなもので、現実とだけ向き合って生きていくよりは楽しいのかもしれませんけどね。

*1 『声優魂』……声優という職業についてはもちろん、大塚さんの人生・演技論についても深く掘り下げて綴られている。2015年に星海社新書から発売された自伝本。


―――実際に夢とアルバイトの2足のわらじで頑張っている若者が多くいると思いますが、夢を仕事にできる人とそうじゃない人の差というのは、大塚さんはどこにあるとお考えでしょうか?


大塚 :

一番は運かな。基本的に売れるか売れないかは運次第で、そこから生き残れるか生き残れないかというのは、本人の精進とか、才能とか、そういったものが関わってくるんじゃないでしょうか。いくら才能があって日々精進していても、運のない人はパッとそこから出て行くことができず、認知もされない。たとえ、うまくパッと出て行けたとしても、実力も伴わないとあとに続かない。
 それでは僕は、いま楽になったかというとまったくそんなことはなくて、駆け出しの頃と違って“大塚明夫を呼ぼう”と期待されて呼ばれるわけです。そこでダメだなと思われたら次からは仕事がないわけだから、その期待値をいかに良い意味で裏切るかという戦いは常にあって、役とちゃんと向き合って勝負していく覚悟がないと厳しい。「本当に好きじゃないとつとまらないよ」ということをあの本で言わせてもらいました。


―――本の中では若い頃の苦労した思い出なども語っておられましたが、いろいろなアルバイトをされていたんですね。


大塚 :

迷走していましたからね。打開するにはどうしたらいいんだろうと日々気力を持て余していました。
 20代後半の頃かな。声の仕事もしながら、リフォーム工事の仕事を請け負う会社の「手元」(工事・施工関係の職人の補助作業員を表す専門用語)をしていたのですが、あるとき、工事ができないからと、夜逃げした人の家財道具一式を全部外に出して撤収しなきゃいけなくなりまして(笑)。水道も止められているものだから、トイレも流れない状態で臭いもすごいわけです。そんなアルバイトをしていたときもありましたね。
 ですから、空調の効いたスタジオで、声の仕事をしてそのアルバイトと同じくらいのお金がもらえるなんて、こんな良い仕事はないな、と身に沁みて思うわけですよ。僕は芝居以外何も出来ないんだから、この場所でちゃんと生きていかねばと、ただひたすら目の前の役を演じることを考えながら、一本一本勝負のつもりで挑んでいましたね。


―――途中、夢を諦めそうになったり、心が折れそうになったこともあったのではないでしょうか。


大塚 :

それはなかったですね。「“まだ”売れてねえだけだ、“今は”売れてねえだけだ」と。自分が俳優で飯が食えないという状況を想定していなかったんです。
 母親とも30歳までに目処が立たなかったら、俳優は辞めなさいと約束をさせられていました。
 幸い僕は声の仕事で食えるようになったから、30歳を過ぎたくらいでギリギリアルバイトを辞めることができましたけど。
 歳を取れば取るほど、他の道に行くことは難しくなっていきますからね。


―――声の仕事で自分はやっていける! と確信を持った一番のポイントはなんですか。


大塚 :

最初から、声優になりたいと思っていたわけではなく、役者として一本立ちしたいという思いで、ただひたすら役を演じることを一生懸命考えていたら、「声の仕事」というジャンルが突出して転がり始めたんです。
 その頃はいまよりもまだ自分は俳優なんだ、という意識が強くてね。声の仕事ばかりは嫌だ、自分の肉体をさらして演じる仕事がしたいともがきながら、ふと気付いたんです。
 声の仕事がどんどん廻り始めているということは、僕の能力をグラフにしたときに、そこが一番抜きんでていることになるわけで、ああ、俺はこの仕事に向いているんだな、と自分で腑に落ちましたね。
 技術的な面でも、たくさん仕事をこなせばこなすほど、修練を積んでいるのと同じことになるから、余計に仕事が増えていくんですよ。
 似たような歳の人たちがテレビや映画で活躍しているのを見ると、どこかでそっちもやってみたいな、と思うことはたまにありますけどね。


―――いまは吹き替えやナレーション、舞台や映画などにも出演されるなど多岐に渡ってご活躍されている大塚さんですが、それぞれのジャンルで演じ分けるときに大切にされていることはあるのでしょうか。


大塚 :

ナレーションはナレーション、吹き替えは吹き替え、と自分のなかにそれぞれベクトルがあって、自然にスイッチが切り変わりますね。
 例えば、ナレーションは不特定多数の人々に言葉を伝えることを意識して、より明瞭に声をあてるようにしています。
 吹き替えの場合は、すでに生身の人間が完璧に演じているわけですから、その人の芝居を逸脱しないようにやっていかないと、映像に馴染まなくなってしまう。そこを意識しながら、映像から出てくる音が本人以上に本人っぽく聴こえるような話し方を心掛けています。
 アニメーションの場合は絵ですから、役を完成させる上で、僕が芝居で担う余白の部分が大きいので、その余白をどううずめて……「埋めていく」というより「うずめていく」という方がしっくりきますね……うずめていくために、二次元のキャラクターなんだけど、探したらこういう人って本当にいるんじゃないか、と思えるような立体感を持たせるようにしています。


―――吹き替えを担当されている、ニコラス・ケイジの映画『オレの獲物はビンラディン』では、「声優魂に火がついた」とコメントされていましたが、火が付くスイッチはどういったときに入りますか。


大塚 :

ニコラス・ケイジの吹き替えは、だいぶ長いことやっているので、一方的に僕は友人のような気がしているんですよ。彼の呼吸を自分に写しとって芝居をしているものだから、親しみ深い気がしてきましてね。そんな彼が、映画のなかでコミカルな演技をしようと一生懸命もがいている姿を観て、よし、これは僕もやんなきゃなって。


―――友達が頑張っているから自分も頑張らなきゃ、と(笑)。ニコラス・ケイジとは実際にお会いしたことがあるんですか?


大塚 :

残念ながら一度もないんですよ。同様に、長年吹き替えをしているスティーブン・セガールともお会いしたことがなくて。
 よく海外のドラマの吹き替えなんかやっている他のみなさんは、来日したときにお会いして、握手をしたり一緒に写真を撮ったりしているのに、僕は揉め事を起こすと思われているのか(笑)、そういう話が来ないんですよ。


―――こちらをお読みになった関係者のみなさま、夢の競演企画をお待ちしております。


虫ん坊 2018年1月号 特集1:手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー 第2回 大塚明夫さん

「医者はなんのためにあるんだ!」ともがいて、
懸命に自分の人生と戦っている姿が人を、僕を惹きつける

―――声優としてのキャリアを深めていくなか、ブラック・ジャック・間黒男役のオファーをもらった時の心境はどうでしたか。


大塚 :

大変嬉しかったですね。当時、アニメーションでの代表作というのがほとんどなかったので。
 僕はどちらかというとアニメよりも吹き替え畑出身なので、吹き替えでは主人公の声をやらせていただいたことがありますが、アニメの声優業界ではまだまだ知名度が低かったんです。
 ところが、「ブラック・ジャックの声をやっています」と言うと、普段、アニメを観ない方にすらわかってもらえる。流行っているアニメーションの主役を演じるよりも、みんなが知っているブラック・ジャックですからね。この差は非常に大きいですし、遂に僕にも名刺ができたぞ、といっそう嬉しかったです。


―――ブラック・ジャックというキャラクターの声を演じるにあたり、どのように捉え、向き合っていったのでしょうか。プロセスや参考にしたことなどをお聞かせください。


大塚 :

僕が初めてブラック・ジャックの声をあてたのは、故・出崎統監督のOVA版『ブラック・ジャック』で、手塚先生の絵とはだいぶタッチは違っていましたけど、出崎さんが作品と向き合って突き詰めた結果、より格好良く人間の生身の部分が強く出たデザインを採用したと思うんです。
 僕の場合は、僕のなかのブラック・ジャックに似ている部分をなるべく引き出して増幅させていきます。そうするとイメージが形になっていくんですよね。


―――ご自身のどういったところがブラック・ジャックに似ていると思いましたか。


大塚 :

青臭い未熟な部分と反骨精神ですね。権威というものに逆らいたくなるところにすごく気持ちが通じ合うものを感じました。
 だからといって、ただ感情にまかせて動くのではなく、あくまでも自分のなかの確固たるルールに基づいてやっている。ほうぼうで衝突が起きるけれど、そのことは意に介さない、というブラック・ジャックの骨格が作品と向き合ううちにだんだんと見えてきて。
 ブラック・ジャックに限らずですが、このキャラクターのこういうところはすごいんだけど、こういうところはダメ、というところを探すんです。そこを意識することで良いところとの落差が演技に表れて、より格好良くみえたりするんですよ。
 僕が演じた『Fate/Zero』*2のライダーというキャラクターに関しても、さっきまで寝っ転がりながらおせんべいをボリボリ食べていた人が、戦うシーンでは戦車で颯爽と戦場を駆け抜けて、マスターである青年のウェイバーに「お前はこんなものに心を汚されちゃいけない」と諭すからこそ、余計に引き立つわけじゃないですか。法則みたいなものですよね。

*2 『Fate/Zero』……TYPE-MOONから発売された伝奇小説をもとに2011年1月にテレビアニメ化。原作:虚淵玄(ニトロプラス) / TYPE-MOON、監督:あおきえい、アニメーション制作:ufotable。2012年の「ニュータイプ アニメアワード」では、男性声優賞と大塚さんが演じた『Fate/Zero』のライダーが男性キャラクター賞を受賞。


―――ブラック・ジャックを演じられて、印象深いエピソード、登場人物、セリフなどはありますか。


大塚 :

『ブラック・ジャック』OVA版のカルテI「流氷、キマイラの男」ですね。
 最後、クロスワード氏(CV:大塚周夫)の亡骸を抱えて部屋を出ていくところで、「道を開けろ! この人を奥さんが待っている」とぞろぞろいる周りに怒鳴りつけるんですが、セリフを言いながら心の中で、「うわっ、スゴイ音(声)が出たぞ」って、自分で自分にビックリしました。そのシーンはいまでもすごく印象に残っています。

大塚さんがブラック・ジャックを演じていて、一番印象に残っているシーン。熱量がこもったスゴイ音(声)をどうぞ聴いてみてください!


―――大塚さんからみた、ブラック・ジャックというキャラクターの最大の魅力を教えてください。


大塚 :

人によると思うけど、僕は未完成なところだと思いますね。キリコほど非情に徹せられないし、「医者はなんのためにあるんだ!」ともがいて、懸命に自分の人生と戦っている姿が人を、僕を惹きつける。
 完璧な人間なんていないんだから未完成でいいじゃないか、と言っているのではなく、正解がない部分とどこまでも懸命に戦おうとしている横顔が素敵なんだろうと思います。そういう姿って、応援したくなるじゃないですか。


―――懸命に自分の中の答えを探し求めて戦う姿勢が心を打つ部分だと。


大塚 :

この仕事には、100点満点はないんです。そうなると、彼と同じようにもがき続けるしかない。常に終わったあとで、もうちょっとこうできたんじゃないかとか考えているのでよく分かるんですよ。そういう気持ちを忘れずに、この先も「わあ、こんな風になったんだ、すげえ」って言ってもらえるような芝居をしていきたいですね。


虫ん坊 2018年1月号 特集1:手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー 第2回 大塚明夫さん

主役か否かに関わらず、テーマを背負ったキャラクターを演じる経験が多ければ多いほど、役者として厚みも深みも出てくる。
テーマをいかに多く背負うか、いかに背負う機会があるか、それが役者を育てる大きな要素だと思うんです。

―――手塚作品は以前から読まれていましたか。また、手塚キャラで好きなキャラクター、演じてみたいキャラクターはいますか。


大塚 :

手塚作品は、友人宅や床屋なんかのマガジンラックに置いてあったのをよく読んでいました。
 『雨ふり小僧』なんかは、大のおとなが読んでも号泣するお話じゃないですか。いま、思い出しただけで泣けてきてしまう。少年の頃は厳しいので(笑)、是非、主人公のモウ太が大人になってからを演じてみたいです。
 あとは、『火の鳥』の猿田彦ですね。やりたいですねえ、猿田彦。また、小村哲生さんが(アニメで)演じた猿田彦がいいんだな、これが。


―――猿田彦のどういったところに惹かれて、そう思われたのでしょうか。


大塚 :

だって、『火の鳥』という作品のテーマを背負っているキャラクターじゃないですか。主役か否かに関わらず、テーマを背負ったキャラクターを演じる経験が多ければ多いほど、役者として厚みも深みも出てくる。テーマをいかに多く背負うか、いかに背負う機会があるか、それが役者を育てる大きな要素だと思うんです。
 若い人を見ていても、主役をよくやっている人の方がのびしろが大きいですよね。若い時から、モブや脇役ばかりだと、責任を背負わない分その練習ができないので、やる以上はどんどん主役を目指した方が先行きが良いと思います。
 作品というのは、こんなに格好良い声が出ました、こんなにかわいい声がでます、ということを発表する場ではないので。
 TVアニメの『ブラック・ジャック』を演じているときに、「あんなのブラック・ジャックじゃない」という批判的な声を多数聞きましてね。主人公を演じるということは、プラスなものもマイナスなものも全部背負う覚悟がまずなきゃいけないということを学びました。


―――覚悟を決めて、最初から主役を目指していけっていう。


大塚 :

ただ主役を演じる上で難しいのは、キャラクターがブレるような演技をやっちゃいけないんです。普通、自分はこれもできるしあれもできる、こう思うからこうやりたいって、やれることを全部やりたくなっちゃうけど、それはテーマを背負っていたらできないことであって。できることをやらずに我慢できるかどうかなんです。
 なにもしないでいても存在感を出せるのが役者だと思うし、そこにいてくれればいいんですよって言われることが一番大切なことなのかなって思いますね。


―――声優というご職業に限らず、どんなポジションだろうとテーマをもって挑むというのは、いろんなことに言えることかも知れませんね。


大塚 :

僕が『宇宙兄弟』*3という作品で、ブライアン・Jという宇宙飛行士の役をやったときに、あるシーンで、主人公の弟・南波日々人が飼っていたハムスターが死んだときに、両親がきちんと喪服を着て正装をして弔った、という話をブライアンにするんですね。元の演出では、彼は原作でもいつもふざけて飄々としているキャラクターなので、その話を聞いて、笑いながら「スゲエな」って答えるはずだったのですが、どうしてもそういう風に言いたくなくて、本当に心からそう思っている「スゲエな」っていう演技をしたんです。そうしたら、音響監督に「絵は笑っているので、絵に合わせてやってください」って言われてね、逆らいたくなっちゃってさ(笑)。
 そのとき、丁度、作者の小山宙哉先生が録音の現場に来ていて、「変えていいですよ」と後押ししてくれたんです。演技に合わせてあとから絵も変更せざるを得なくなってしまったから、スタッフさんには大変申し訳なかったんだけど、僕が思う“ブライアン・J像”を曲げないで良かったなあって思いましたね。

*3 『宇宙兄弟』……『モーニング』(講談社)で連載中のマンガ作品で2012年にアニメ化された。原作:小山宙哉、監督:渡辺歩、アニメーション制作:A-1 Pictures。


虫ん坊 2018年1月号 特集1:手塚治虫生誕90周年企画 スペシャルインタビュー 第2回 大塚明夫さん

僕ね、『ばるぼら』が好きなんですよ。
実体験をもとにして描いたのか、あくまでも先生の想像の上で描いたのか。
そのあたりの真相について、突っ込んだ話をしてみたかったですね。

―――まだ、手塚作品を読んだことのない若い子たちにオススメするとしたらどの作品を選びますか。


大塚 :

『ブラック・ジャック』ですね(即答)。


―――笑。


大塚 :

『ブラック・ジャック』は、本当に大事なものはなんなのか、どこにあるのか、命とはなにかと人間の本質を考えさせられる究極の作品だと思うんですよ。すべてのエピソードに通底するテーマを持っている。
 あるときは、あなたにとって、お金とお母さんの命とどちらが大切なのかと突きつけるわけですよね。こうするべきだということは言わず、読み手に答えを委ねるわけですから、説教臭くない説教という、説教の理想形ですよ。
 手塚先生のマンガのすごさというのは比類がないもので、作品がハリウッド映画の宝庫かというくらい、振り幅が広い。
 あと、すごいなと思うのが、手塚先生は声優さんとはほとんど交流がなかったと伺っているんですけど、だいたい、ご自身でアニメーションも作っていて、誰かが声をあてるとなれば、どうしても気になりますし、なにかしら交流って生まれるものじゃないですか。先生の場合は違う。


―――それはどうしてだと思われますか。


大塚 :

先生のなかでは作品としてすでに完成してしまっているから、役者に委ねられるんでしょうね。
 “手塚治虫”という人間に対する興味がすごく湧きましたね。


―――実際にお会いできるとしたら、どんな話をしたいと思いますか。


大塚 :

手塚先生が天国にお引越ししたのが、60歳でしょう。僕はあと2年で同じ歳になるんですけど、 もしご存命なら直接聞いてみたかったなあと思うことがあってね。
 僕ね、『ばるぼら』が好きなんですよ。分厚いタイプのものを1冊持っているんですけど、『ばるぼら』の主人公、小説家・美倉洋介の真に迫る描写に、彼のような人物が実際にいるように感じたんです。
 表現者という意味で同じ立場にある手塚先生は、実際に美倉と同じような経験をされたんじゃないか、と。実体験をもとにして描いたのか、あくまでも先生の想像の上で描いたのか。そのあたりの真相について、突っ込んだ話をしてみたかったですね。


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