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虫ん坊 2015年11月号 オススメデゴンス!:『ユフラテの樹』


 秋は柿や梨など実りの多い季節です。今回のオススメデゴンス!では、不思議な果実「ユフラテの実」を口にしたことにより、超能力に目覚めてしまう高校生を描いた『ユフラテの樹』をご紹介!
 もし、自分の欲しい能力が突然手に入ってしまったら…!
 特異な能力を持つということは、一見刺激的で楽しいことのように思えても、実際は、とても恐ろしく、苦悩の始まりでもある、ということをそこかしこに盛り込んだ作品です。

解説:

 (手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『ユフラテの樹』あとがき より)

 (前略)
 "ユフラテ"ということばの意味は、当時はなにかあったのでしょうが、今は思い出せません。
 大矢、鎌、シイ子の三人の名でオヤカマシイなどとふざけたり、この物語はずいぶんいいかげんです。それもそのはずで、全体の構想などまったくないままに連載を始めたのです。よくやる手段で、描いていくうちになんとかなるわいと思いつつ進めていくやりかたですが、そのうちに主人公たちが勝手に行動をはじめて、なんとかまとまってしまいます。
 ESPのことは、その当時ソ連とか数か国で政府機関が積極的にESP開発に乗り出したりして、新聞雑誌を賑わしたものです。それを創世記のアダムとイブのリンゴの木と結びつけたのも、苦肉の策でしょう。
 いずれにせよ高い次元で描いた作品ではありません。
 



読みどころ:


虫ん坊 2015年11月号 オススメデゴンス!:『ユフラテの樹』

 普通の高校生が、未熟な精神のまま突然おそろしい超能力を身につけたとしたら――『ユフラテの樹』は、そんな学園SFの佳作です。


虫ん坊 2015年11月号 オススメデゴンス!:『ユフラテの樹』

 生物研究会のレポートを作りに"恵法場島"へやってきた、大矢、鎌、シイ子の高校生3人組は、島に生えていた"ユフラテの樹"の果実を食べ、超能力を身につける事になります。大矢は知能が高くなり、鎌は念力、シイ子はピアノの演奏でそれぞれ超能力を発揮。最初は順調に思えた超人生活も、鎌が、時には自分でも制御できないほど強大になった念力を使い、世界独裁を計画し始めた頃から、歯車が狂い始めるのです…。
 


虫ん坊 2015年11月号 オススメデゴンス!:『ユフラテの樹』

 誰でも1度は考えた事がある「超能力を手に入れたい」という願い。そこには当然、目的があります。大矢はテスト、シイ子はピアノの発表会を乗りきるために超能力を手に入れる事になりますが、それは同時にこの作品が連載された『高1コース』の読者の等身大の悩みでもあり、作家・手塚治虫がそれを意識した事は間違いありません。そして手塚治虫は、独裁によって人を裁く事が招く悲劇も、忘れずにテーマとして盛り込んでいます。もしかすると、それこそがこの作品で読者に一番伝えたかったメッセージかもしれません。


虫ん坊 2015年11月号 オススメデゴンス!:『ユフラテの樹』

 手塚治虫自身はこの作品をあまり評価していないようですが、サスペンス仕立ての前半から、超能力により3人の運命が暴走を始める後半〜大団円まで、「全体の構想などまったくないままに連載を始めた」とは思えないほど、読者を飽きさせない見事な構成だと思うのですが…皆さんはどう感じるでしょうか。
 





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