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虫ん坊 2015年7月号
 オススメデゴンス!:『七色いんこ 仮名手本忠臣蔵』

今月のオススメデゴンスは、7月ということで「7」という数字にちなみ、『七色いんこ』をご紹介いたします。

代役専門でどんな役でも瞬時にしてなりきり、観客を魅了する稀代のエンターテイナーながら、裏では泥棒の顔を持つ七色いんこ。「仮名手本忠臣蔵」は、いんこの良き相棒、芸達者な酔いどれ犬の玉サブローがメインのお話になります。最後のオチまで二転三転する展開が見ものです。



解説:

(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『七色いんこ』7巻 あとがき より)

 

 (前略)

 それで、芝居に関するぼくのイメージとか、ぼくが芝居を好きだからこそこうした漫画を描いているんだ、ということをわかっていただくために始めたのが「七色いんこ」なのです。今までぼくの漫画には、芝居というものを直接描いたものは、ほとんどありませんでした。

 (中略)

 「七色いんこ」というのは、今までのぼくの作品系列からいうといったいどれにあたるかわからないほど変わった作品なので、「ブラック・ジャック」や「ドン・ドラキュラ」を見慣れた人にはとっつきにくいとよくいわれます。題名にしても、なぜ「七色いんこ」というのかわからないというんです。たまたま家でインコを飼っていたので「七色いんこ」ってつけたんですがね、ただそれだけのことです(笑)。

 (中略)

 ただぼくとしては少なくとも、ぼくのなつかしさを込めて、ぼくが現在描いている漫画の方式のルーツのようなものとして「七色いんこ」を取り上げたのです。つまりぼくの漫画にはいろんなスターがいるわけです。ヒゲオヤジをはじめとして、ランプとか、ハム・エッグとか、そういうのがいろんな役をするわけです。ヒゲオヤジなんか何回死んでも生き返ってくるんです。あれはつまり俳優と同じで、ランプという俳優を今度はこういう役で使ってやれとか、ぼくが楽しんで操っているわけです。俳優というのは、ひとつの作品でやった役でおしまいなわけではありませんからね。だからぼくは、自分の漫画で、そういうことを描きたかった。それがぼくのスター・システムです。…

 (後略)



読みどころ:


虫ん坊 2015年7月号
 オススメデゴンス!:『七色いんこ 仮名手本忠臣蔵』

 演劇の名作を題材にした数あるエピソードから、「仮名手本忠臣蔵」をご紹介します。「忠臣蔵」といえば、日本人なら誰でも知っている、有名な仇討ちの物語。手塚治虫はこの物語を、飼い主(いんこ)の仇討ちをする忠犬(?)・玉サブローのドタバタ劇に仕立て上げました。



虫ん坊 2015年7月号
 オススメデゴンス!:『七色いんこ 仮名手本忠臣蔵』

 『七色いんこ』のエピソードには、重いテーマを扱ったシリアスな回と、息抜きのような全編ギャグの回がありますが、この「仮名手本忠臣蔵」は後者のパターンで、ギャグパロディの見本のような作品です。
 冒頭、いきなりノラ猫の集団に襲われた七色いんこは、金を奪われた上に無理矢理"ネコイラズ"を飲まされて、辞世の句を詠みながら死んでしまいます(ナンセンス!)。あとに残された玉サブローは、飼い主の非業の死にもかかわらず、酒を飲んで遊んでばかり(つまり大石内蔵助のパロディ)。しかしそこは忠犬、猫たちのアジトに忍び込むと、見事敵を撃退して奪われた金を取り返します。



虫ん坊 2015年7月号
 オススメデゴンス!:『七色いんこ 仮名手本忠臣蔵』

 結局ラストで、これはある劇団が玉サブローの主演作品として、「忠臣蔵」を子供向けにアレンジした台本だったことがわかるのですが、それにしてもほとんど犬と猫の争いに終始するこのエピソード、手塚治虫も肩の力を抜いて描いたのではないでしょうか。笑えるオチも含めて、頭をカラッポにして読んだ方が楽しめそうです。



虫ん坊 2015年7月号
 オススメデゴンス!:『七色いんこ 仮名手本忠臣蔵』

 悪役のノラ猫たちが、元々は人間に捨てられた飼い猫だった…という社会派の一面もチラリとのぞかせてはいますが、あくまでこのナンセンスなエピソードをひきしめるスパイス程度にとらえた方がいいでしょう。そういった要素を作品に盛り込まずにいられないところが、いかにも手塚治虫らしいとは言えますが…。







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