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虫ん坊 2015年5月号 特集1:6月5日待望の1巻発売!『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

カサハラテツローさん

『鉄腕アトム』の世界の30年ほど前を舞台に、若かりし頃の天馬博士とお茶の水博士が主人公という、手塚ファン大注目の漫画、『アトム ザ・ビギニング』(コンセプトワークス・ゆうきまさみ、漫画・カサハラテツロー、監修・手塚眞)。
 月刊『ヒーローズ』で連載中の本作品、待望の単行本第1巻の発売が6月5日に決定しました。
 今月の虫ん坊では、本作の漫画制作を手掛けるカサハラテツローさんにインタビューしました。


■関連情報:

『アトム ザ・ビギニング』連載開始!
月刊ヒーローズ 『アトム ザ・ビギニング』公式サイト



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『アトム ザ・ビギニング』第1巻を、カサハラテツローさんのサイン入りで3名様にプレゼント!!

アトム ザ・ビギニング1巻

待望の『アトム ザ・ビギニング』第1巻を、カサハラテツローさんのサイン入りで3名様にプレゼント!! 
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Tezukaosamu-net-guide@tezuka.co.jp

応募締切:2015/05/15(金)
※当選された方には、ご連絡いただいたメールアドレスまでご連絡をいたします。ふるってご応募ください!!



●コンペになっても勝ち取ってやる!


――今年の1月号から連載が開始された『アトム ザ・ビギニング』ですが、カサハラさんがかかわられることになったきっかけを教えてください。

カサハラテツローさん(以下、カサハラ): 『ヒーローズ』の編集部から、天馬博士とお茶の水博士を主人公に、『鉄腕アトム』の前史を描く漫画の企画があるんだけど、描いてみませんか? というお話をいただいたのが最初です。話を聞いた時には、もうぜひやりたい! と思って、二つ返事で引き受けました。プロジェクトの内容からすると、きっと、ほかの漫画家さんにも声をかけているだろうな、と思いましたが、その時はもう、コンペで戦ってでも勝ち取ってやる! と。
 しかし、企画のあまりの大きさに、ちょっと、私にできるのか? という不安もありました。

――カサハラさんの描かれるロボットには、すぐ近くで触れるようなリアリティがあります。アトムの世界を描くにはまさにぴったりと思います! でも、先生の描かれるロボットは、どちらかというと搭乗型のロボが多いように思いますが…。



カサハラ:学研で漫画を描いていたころ、はじめて連載を依頼されたときに描いた『メカキッド大作戦』(1993年『3年の科学』掲載)という作品があるのですが、そこでは、主人公デンジくんという天才少年が開発したお友達ロボットというのが出てくるんです。初めての連載作品で描いたロボットは実は、アトムと一緒の自律型だったんですよ。
 ロボットに限らず、とにかくメカを描きたいんです。それも、現実に存在するものではなくて、架空のものがいいですね。架空の存在というと、モンスターや妖怪だったり、あるいはファンタジーに出てくる鎧とかそういうものなどがあると思いますが、私は架空のものならメカが一番、わくわくするんです。人が作るもの、作れそうなもので、なおかつ架空のものを創造するのが大好きです。

――『鉄腕アトム』との出会いはいつごろでしたか?

カサハラ:小学校の頃だったと思います。父の本棚で見つけて、読み始めて、面白くてはまりました。手塚治虫の描くメカは、かっこよくて、わくわくするようなものがたくさん出てきますね!
 特に、『鉄腕アトム』に出てくるメカですと、「白い惑星号」なんかはかっこいいな、と思います。フォルムはつるっとしているけど、フロント部分に透けて見えているメカ部分は複雑になっていて。ロボット・カーらしさが一目でわかります。
 それから、『デッドクロス殿下』に出てくるロボット・カーもいいですね。カメレオンのような擬態機能がついているんですよ!! よく出てくる警察のパトカーも、犬の形にするという発想が面白いです。視界はどうやって確保しているんだろう、やっぱり、モニターなのかな、とか、いろいろ想像してしまいます。メカが全般的にかっこいいです。

虫ん坊 2015年5月号 特集1:『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

『鉄腕アトム』カサハラさんセレクトのグッドデザイン・カー。白い惑星号(白い惑星の巻)

虫ん坊 2015年5月号 特集1:『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

ラグ大統領の愛車(デッドクロス殿下の巻)

虫ん坊 2015年5月号 特集1:『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

「ワンワンパトカー」ことパトカー(登場多数)


●お茶の水製・ウランちゃん

――では、『鉄腕アトム』で登場するロボットで一番好きなロボットは誰ですか?

カサハラ: それはね、ウランちゃんなんです。だいたい、こういう質問にはみんな、「プルートゥです」とか、「プークです」です、って答えると思うんですが、いや、ウランちゃんでしょう! と。
 ウランちゃんって、お茶の水製なんですよね。わがままでお転婆で、でも、お兄ちゃんが大好き、っていう。なんだそりゃ? となるんだけど、いかにも手塚治虫の描く女の子キャラクターですよね。ピノコのようなキャラクターの元祖といってもいいかもしれないですね。
 でも、ウランって実はかなり性能のいいロボットで。


――はい。


カサハラ: アニメの設定では確か兄・アトムの半分の5万馬力だったかと思うのですが、漫画での設定では10万馬力で、ロボッティングというロボット格闘技でも優勝しちゃうぐらいの優秀なロボットなんですよ。

虫ん坊 2015年5月号 特集1:『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

お茶の水の妹、蘭。ちなみに猫はF14。アトムキャットそっくり、というわかる人にはわかる遊びも。


――妹キャラクター、といえば、『ビギニング』でも二人の妹キャラクターが登場しますね。ライバルの堤モリヤの妹のモトコはヒロインのポジションでしょうか。お茶の水博士の妹の蘭には、ウランの要素を感じます。


カサハラ: 初めに、ゆうきまさみさんから頂いたプロットでは、モトコは天馬の彼女、という設定だったんです。そこにちょっと内にこもった、太っちょのオタクキャラのお茶の水が、モトコに片思いしている、という三角関係だったんですが、監修の手塚眞さんから、「初めから彼女では、ヒロインとはいえないでしょう」というご意見をいただいて、今の設定になりました。実は、モトコの兄のモリヤも、初めはいない設定でした。
 蘭については、初回の巻頭カラーのラフを検討するときに、せっかくカラーなんだから、女性キャラクターを一人入れてよ、と言われて、アイコンの塊みたいな女の子を出そう、と急きょ、追加したキャラクターです。追加するなら妹キャラがいいな、と思って考えたのですが、ストーリー上天馬の妹じゃないだろう、と。そこでお茶の水の妹ということになりました。のちに、お茶の水がウランを作るときに参考にしたのかもしれない、というように、ウランの面影を入れています。

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ヒロイン・堤モトコ。


●天馬VSお茶の水 本当にマッドなサイエンティストは!?

――A106(エーテンシックス)は本当の自律型ロボットを目指して開発された、という試作ロボットですが、アトムの持っているヒーロー的な要素をたくさん持っています。あの無骨な見かけもとてもかっこよく見えますね。

カサハラ: そういっていただけると嬉しいです。プロット段階では、もっと小さいサイズで、『ガンダム』シリーズでいうところのハロのようなロボットの設定だったんです。そのキャラクターデザインも起こしていたのですが、編集担当さんから、「『ヒーローズ』はヒーロー雑誌なんです」という突っ込みが入って。
 ヒーローにするのなら、天馬やお茶の水はちょっと違いますよね。そこでA106を人間と同じくらいのサイズにして、アクションなどもできるようなスタイルにしました。結果的には、いかにも天馬が作るようなロボットになったので、よかったと思います。

――確かに、作中でもお茶の水が言いますが、天馬博士はアトムなどを作ったかんじからすると、強いもの好きというか。連載第1回の鼎談でもそういったお話をなさっていましたね。


カサハラ: 天馬博士の性格的に、小さくてかわいいロボットというのでもないだろう、と(笑)。彼は、本当に純粋な天才肌で、技術者らしい技術者ですよね。一方で、お茶の水博士という人は、なんというか、倒錯しているというか、自己矛盾を抱えている人なんです。
 実は、科学者として本当にマッドなのは、私はお茶の水博士じゃないか、と思っていて。

A106(エーテンシックス)。蘭を守る姿は男前!の一言。


――ええっ!? 『鉄腕アトム』ではまあ、良心の塊みたいな…。


カサハラ:よく考えてみてください。ロボットというのは本来、人の役に立つために作られるものでしょう? だって、人が何かの目的をもって開発するものですから…。そんなロボットに心という概念を持たせてしまった張本人ですよね。  ロボットたちに、「君たちには心があるんだ! 時には人間に逆らってもいいんだ」とか言い出しちゃうのが、お茶の水博士です。そのくせ、自分でも「ゆけ! アトム! 君ならできる!」みたいなことを言って危険な戦いに向かわせたりもしますよね。科学者としてはちょっと倒錯していますよ。  この、「ロボットの人権」のテーマは『アトム』の中でも繰り返し問題になっていて、『悪魔の風船の巻』みたいな事件も起こるわけで…。


――人間社会に、言ってみれば余計なトラブルを持ち込んだということですね。


カサハラ:そうなんですよ! なぜロボットを人間にしようとするのか、と思うんですよ。ロボットにとっても、かえってかわいそうじゃないのか、と。


――うーん。確かに。人間臭い面がありますよね。……そういえばお茶の水博士って、ちょっと権力に従順というか、案外と世間体を気にするというか、そういう面がちらほら見えるところもありますよね。


カサハラ:そうなんですよ! 他人には説教するのに(笑)。科学省長官の地位に意外と執着したりしていますよね。

虫ん坊 2015年5月号 特集1:『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

良識人に見えて本当はマッド!? お茶の水ヒロシ。


――天馬博士とお茶の水博士は、のちに決別すると思っているのですが、この『アトム ザ・ビギニング』で仲良しそうなところを見ると、ちょっと切ないですね。


カサハラ:いや、僕は実は、二人は別に決別もしてないんじゃないかな、と思ってるんですよ。原作でも、お茶の水博士のピンチになると、さっそうと天馬博士が現れて解決してくれて、去っていったりしませんか?


――確かにそうですね!


カサハラ:お茶の水博士も天馬博士を深く理解していて、「いかにも彼の考えそうなことじゃ」とか、「天馬くんらしい」とか言ったりするんですよね。昔からの親友で、一番の理解者という設定は、原作でも描かれていると思います。
 原作には描かれてないですが、案外二人は『鉄腕アトム』の時代になっても、ちょくちょく会っていると思いますよ。


虫ん坊 2015年5月号 特集1:『アトム ザ・ビギニング』 カサハラテツローさん インタビュー

自ら天才と自称して憚らないが、ほんとに天才。天馬午太郎。


●共鳴のちから

――『アトム ザ・ビギニング』では、いよいよ新展開という感じですね。A106が対戦相手のロボット・マルスに語りかけるシーンではとても「アトム的」なものを感じました。

カサハラ:A106は天馬・お茶の水が開発した「ベヴストザイン・システム」を搭載した、自我をもったロボットなんです。彼らはロボットのためのほんものの「心」を作ろうとしているんです。そこがまあ、マッドたるゆえんなのですが…。
 おそらく、作中の時代ぐらいに技術が発達した世の中では、ロボットに求めるものは、もっと精密な動作をさせるためのより複雑化したシステムといったものを開発していく方向に進んでいくものと思うのですが、天馬とお茶の水のアプローチは根本的に違っていて、「心を持たせてしまえば、あとは勝手に学習する」という理論なんです。そのせいで、ストーリーを考えるときに、人間のもっている「心」というのはなんだろう? というところから問うていかなければならなくて、描くほうでも意外なところで苦心しました。
 私の仮説としては、おそらく「自我」というものが心の本質で、普通イメージする、自ら意思を持って行動することだとか、感情を持っている、というのは表層に過ぎないと思っています。逆に感情に訴えかけることによって、人間がロボットのように操作されてしまうような側面もありますよね。自我の本質って、「他者と自己との境界線を持っていること」なのではないか、と。

 世界と自分の間に境界線がなかったら、自分=世界ですから、思いやりのような思考は生まれてきません。自他の区別が明確になることで、初めて他者を思いやる心が生まれてきます。一方で、自我をもった瞬間から、孤独も生まれてきます。似た存在を求めたり、対話を試みようとしたりするのも、そういうところから生まれてくるんじゃないでしょうか。


 アトムの強さは、七つの力や10万馬力にあるんじゃなくって、本当はこの対話にあるんじゃないかな、と思っています。たとえばプルートゥって、開発段階では戦うことを目的として作られていて、アトムが持っているような心はなかったはずです。それが、アトムと対話することで自我に目覚めて、力を合わせて火山の爆発を止めますよね。アトムは、どこかに他のロボットのAIに共振作用というか、共鳴を与えるような能力があるのではないか、と思っていて、その力こそがアトムのすごい力だと思っています。


――共鳴力ですか。


カサハラ:共鳴といえば、手塚先生の絵にも、そんなものを感じます。見ていると、どこか「僕にも描けるんじゃないかな?」と思わせてくれて、自分でも漫画を描いてみようかな、という気持ちになります。実際に描いてみるととても緻密ですごい絵なんだけれども、なんだか自然にそうやって共鳴して、絵をかきたくなってくるんですよね。そうやって、手塚先生に続く少年たちが多く表れたことで、トキワ荘時代ができんじゃないか、と思っています。
「僕にも描けるんじゃないかな?」って皆さんが思うような絵にしたい、ということで、この『アトム ザ・ビギニング』も、できるだけアナログに、手描きで描いているんです。
 最近はデジタルの技術を使えば、ものすごい精密な絵が描けるんですが、そうやって描いた絵って、なかなか子供が「僕も描いてみよう」とはならないじゃないですか。


――すごい技術がないと描けないように見えてしまいますね。


カサハラ:藤子不二雄A先生の『まんが道』なんか読むと、東京で一人暮らしをしてれば、なんか漫画家になれそうな気がしてきたりしますよね(笑)。「紙とペンさえあれば描ける」っていう気軽な感じで、「漫画描いてみようかな」って思ってもらえるのってすごくいい。そうして、自分で描いてみてこその漫画の楽しさっていうのもあると思うんですよね。『アトム ザ・ビギニング』の絵は、そういうのを目指してあえて手描きにしています。



――「この漫画を読んで、ロボット工学を勉強したい、と思ってもらえると嬉しい」ともおっしゃられていましたね。やはり、作品は子供たちに読んでもらいたいとお考えですか?


カサハラ:子供たちにも読んでもらえるような内容にしたいな、と思っていますが、もちろん、大人も面白いと感じてもらいたいです。それこそアトムファン第1世代のような、仕事を定年したような方々が、僕の作品を見たことをきっかけに、「漫画でも描いてみよう」と思ってくれたらうれしいです。


――孫とおじいちゃんが同じ作品の絵を真似して描けるって、素敵ですよね。


カサハラ:そうなんです! もちろん、プロになるのはどんな道でも大変だとは思いますが、漫画を描くテクニックばかりがフォーカスされてしまうと、これから描いてみよう、という人の意欲の芽を摘んでしまうと思うんです。そうじゃなくて、「これなら描けそう」「描いてみたい!」と共鳴してもらいたいんですよね。


●読者の方へのメッセージ

――いろいろなメッセージが込められた作品ですが、『アトム ザ・ビギニング』の読者の方々に向けて、あえてここを強調したい、というようなメッセージがありましたら、教えてください。


カサハラ:アトムの兄弟作品ともいえるアニメ『ジェッタ―マルス』の主題歌に、「ときは2015年~」というフレーズがありますよね。去年ぐらいから、ロボット工学の世界も人工知能分野が目覚ましい発展をしているところなんですよね。それこそ、つい最近も、ロボット・カーが開発されたニュースが報道されました。今年は、現実の人工知能開発にとってもエポックメイキングな年だ、と言われています。まさに、手塚先生の予言通りになっているんですよね。
 そういう今の時代、2015年にこの作品の第1巻が発売されるというのは、とても感慨深いです。もしかしたら、偶然じゃないのかも…? ぜひ、現実のロボット工学・人工知能開発の動向も気にしながら、作品を楽しんでいただけると嬉しいです。

――本日はありがとうございました!



 関連情報:

『アトム ザ・ビギニング』公式サイト(作品最新情報はこちら!)

月刊『ヒーローズ』公式サイト


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