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虫ん坊 2012年03月号 オススメデゴンス!:『W3』

 今月の「オススメデゴンス」は、特集1のインタビューで小松亮太さんも小学校のころ読んで、印象に残った、とおっしゃっていた「W3」をご紹介します!
 地球の動物に変身したW3のキャラクターの可愛らしさはさることながら、アクションあり、友情ありのダイナミックなストーリー展開といい、ラストのすばらしさといい、手塚ファンなら必ず読んでおきたい作品です。

解説:

(手塚治虫 講談社刊 手塚治虫漫画全集『ユニコ』第2巻 あとがきより)

 「W3」とかいて、「ワンダースリー」とよませるのがそもそも無理で、この作品はもともとテレビアニメシリーズ向きに企画されたものです。だから、タイトルもやや奇をてらったのでした。
(中略)
 このシリーズのキャラクターは、スタッフ全員で考えて、ひねりだしました。背景もわざと大きなセット的な絵をかいて、そのあちこちを写真にとってぼかしてつかうという新手法を用いました。トレス線を、りんかくだけを少し太めにアクセントをつけてかいたのもユニークでした。
(中略)
 「W3」もアメリカのローカル局に売れました。アメリカでは「アメージング=スリー」ともうしますが、「鉄腕アトム」ほど知られてはいません。
 アニメそのものも、やや中途半端でした。しかし、漫画のほうは、ラストのタイム=パラドックスの手法など、当時のぼくとしては、どんなもんだ、といってみたいのですが、どうでしょうか。


<Amazon: W(ワンダースリー)3(1) (手塚治虫漫画全集 (139))



読みどころ:

虫ん坊 2012年03月号 オススメデゴンス!:『W3』


虫ん坊 2012年03月号 オススメデゴンス!:『W3』

 手塚治虫のみならず、SF作家のような人々は、一度はどこか醒めた視点で地球を見るもののようで、いくら各国が驚異的な軍事力を持っていても、無力にひれ伏すしかない地球外文明が絶対に宇宙のどこかにある、と考えるようです。
 どこかにもっと文明の発達した世界があって、くだらない事に向きになっている地球人達を冷ややかに見下ろしているに違いない、あまり馬鹿な事ばかりをやっているといつか、――異次元からか宇宙の彼方からか、使者がやってきて、一瞬のうちに地球丸ごと、消し去ってしまう…という想像は、手塚作品によく登場する設定で、この『W3』のみならず、さまざまな短編・長編で繰り返し扱われてきたテーマもあります。

  『W3』のボッコ・プッコ・ノッコもまた、地球上の動物達に身をやつした宇宙屈指の優秀な調査員で、水爆実験や紛争に明け暮れる1960年代の地球の実態を調査するため、はるか彼方の宇宙から地球にやってきたのでした。


虫ん坊 2012年03月号 オススメデゴンス!:『W3』

 ところがW3がはじめに降り立ったのは、日本ののどかな田舎の村。行きずりのトラックにひどい目にあわされた三人は、即座に地球を爆破する決心を固めます。そのまま地球が爆破されず、何とかながらえているのにはわけがあり、三人がたまたま居合わせた少年、星真一に命を救われていたく感激し、もう少し調査をしてからでも爆破は遅くない、と思い直してくれたからで、今後何度も地球の危機を救う事になるその真一少年こそが全人類の命の恩人というわけです。

 物語はあくまでSFで、W3ら宇宙人と少年の心の交流が主軸かと思いきや、当時大流行していたスパイ映画『007』の影響か、国際的スパイ組織「フェニックス」の一員・星光一の活躍を描いた部分は、別のスパイ漫画として独立させても、と思わせる異質さで、さまざまに異なる要素を放り込みながら丸く収まっているのはさすが手塚治虫というところです。そもそもがSFと日本の田舎ほどミスマッチなものはないので、ありふれたのどかな村で、言葉を話す不思議なウサギと少年が反陽子爆弾の話をし、いかにも田舎くさい雑木林の中で声を潜めて、秘密組織フェニックスの話をするという場面にこそ、この作品のSFとしての妙味があるのだと思うのです。


虫ん坊 2012年03月号 オススメデゴンス!:『W3』


虫ん坊 2012年03月号 オススメデゴンス!:『W3』

 『W3』というと、ラストの意外なオチがやはり秀逸で、注目されがちですが、壮大なSFと日本の片田舎、星光一のような颯爽とした青年スパイと、馬場先生のような飄々とした田舎教師が同じく生き生きと活かされている懐の深さもまた、この作品の魅力の一つなのです。





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