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虫ん坊 2010年1月号 トップ特集1特集2オススメデゴンス!コラム投稿編集後記

特集1:わらび座ミュージカル『アトム』始まる!その2 わらび座・アトム稽古場に密着取材してきた!

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特集1:わらび座ミュージカル『アトム』始まる!その2 わらび座・アトム稽古場に密着取材してきた!

 秋田でついに幕があがったわらび座ミュージカル「アトム」! 虫ん坊では、全面的に「アトム」の舞台を応援しようと、前月に引き続き再びわらび座を取材しました。
 今回はなんと秋田に本拠地のあるわらび座に潜入、「アトム」の立ち稽古を見せていただくことに。「昨日からお稽古に入りました。ぜひ一度秋田にいらしてください」と、わらび座広報・三上さんからご連絡を受け、3月某日、期待と緊張を胸に秋田新幹線で一路「角館かくのだて」駅を目指します。



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わらび座ミュージカル『アトム』公演決定!


わらび劇場到着!

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寒い! 角館駅に到着です


 PM 0:00 角館の駅からシャトルバスで10分ほどで、「たざわこ芸術村」に到着しました。
 当日、3月だというのに角館は雪! まだ駐車場には数十センチの雪が積もっています。

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 こちらが、わらび劇場。席数710席と、かなり広い感じです。
 ご案内いただいた広報宣伝室 木内麻水きのうちまみさんによると、地方公演で回る劇場より随分大きな劇場で、「新宿文化センターで使うセットをフルセットとしても、それに匹敵する大きさのセットを組む必要があります」ということです。


  舞台上では、大道具の一部が組み立てられていました。「ネオンサインになる予定です」という木の枠組みと、大きな地球の絵。…どんなシーンに登場するのでしょうか。

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  舞台裏には、すでに組みあがったセットの部品が。「このあたりはすべて、アトムのセット」。鉄のように色を塗られた、木のパイプや、レンガなどなど…。未来都市の雰囲気が垣間見えます。


大道具工房

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巡業用トラックまであります

 PM 1:00 ひととおりわらび劇場を案内していただいた後、今度は大道具の工房へお邪魔。「アトム」の舞台が急ピッチで作られています。

 工房の壁には、神棚や絵など、いろいろなものが飾ってありました。舞台のたびに作ったものを、そのままおいてあるそうです。ごくたまに使いまわしもしますが、ほとんどがひとつの舞台で使ったらそのままお払い箱にしてしまうとのこと。なんともったいない!

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  スタッフの数は11人。人の入れ替わりは激しく、その都度舞台に必要な技術を持った人を採用するそう。それでも、わらび座のように劇団内に大道具の工房を持っているところは珍しく、前回の火の鳥では、その技術力に舞台美術の妹尾河童せのおかっぱさんが舌を巻いたそうです。高じて、たざわこ芸術村には、家具工房まであるのだとか。
 取材時には何かの建物の木枠を並べる作業中。大きな木枠は工房の天井に届きそうな高さがあります。


お稽古場に潜入!

 PM 3:00 本格的な全員そろってのお稽古が二日目という当日、PM 1:00から始まっていた立ち稽古現場についに潜入! 
 「アトム」の立ち稽古は第5稽古場で行われており、PM 3:00ごろはちょうど休憩時間。稽古場いっぱいをつかって行われる練習ということで、全体が見渡しやすい場所に案内していただきました。
 写真撮影はOK、でも集中力を要するお稽古を邪魔しないように、フラッシュは焚かないように、…とのこと、真剣な雰囲気に思わず緊張です。

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  「アトム」は「鉄腕アトム」のストーリーをなぞる作品ではなく、全く新しいキャラクター、ストーリーで「鉄腕アトム」のテーマを描く挑戦作。いったいどんな作品になっているのか、期待でわくわくしながら、カメラを構えていました。

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  演出・脚本を担当する横内謙介よこうちけんすけさんをはじめ、音楽を担当する甲斐正人かいまさとさんらメインスタッフの見守るなか、お稽古が再開します。事前にいただいた脚本に寄れば、ロボットたちがダンスパーティーを開いているシーン。ロボットを務める役者が勢ぞろいする見ごたえのある場面です。

 マリアたち人間の叫びを歌うナンバー。この歌がきっかけで、ロボットたちと人間が心打ち解ける重要なシーンです。ヒロイン・マリアを演じるのは、碓井涼子うすいりようこさん。彼女に恋するロボット、アズリは上野哲也うえのてつやさんが、主人公・トキオは三重野葵みえのあおいさんが演じます。


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間近に迫る役者さんたちと、生で聞くハーモニーに圧倒されます。

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左:トキオ(三重野葵みえのあおいさん)、右:アズリ(上野哲也うえのてつやさん)


 「歌に入るきっかけはどうしようか?」 演出の横内謙介さんから、細部の演出が指示されます。アズリとトキオ、仲良しの二人は一緒に音楽を作っているという設定。アズリからトキオに何らかの「ロックに入る」きっかけがほしい、と横内さん。いろいろな検討の末、どうなったのか? はぜひ舞台で!

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 トキオとアズリが二人で作った、という曲を歌う一同。「二人は歌の輪に入ったほうがいい? 入らないほうがいい?」「エミもここで誰かロボットと仲良しになって」……この出会いがきっかけで恋に落ちるマリアとアズリ。ほかのキャラクターにもそれぞれドラマがあります。


 ロボットたちに反乱を起こさせようと企む科学者・スーラ(右・岡村雄三おかむらゆうぞうさん)と、そのスーラに強化改造を施され、人間をしのぐ腕力を持つロボット・ダッタン(左・宮本昌明みやもとまさあきさん)。スーラはこのパーティーを見学しに来た、といいますが、なにやら胡散臭うさんくさいようす。ダッタンはこわもてのロボットながら、どこかお茶目。スーラを紹介するまじめなシーンでも、細かいお茶目な演出が入ります。

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マリアとアズリ

 

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タケ

 

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エミ


 マリアと一緒にこの倉庫に逃げ込んだ人間、エミ(鳥潟知沙とりがたちささん)とタケ(劇団扉座の岩本達郎いわもとたつろうさん)。タケを演じる岩本さんは、横内さんの率いる扉座からの客演です。


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 「もう時間だ!」の合図に使われるのはなんと…! 小道具さん苦心の作、というこの目覚まし時計、実はこの時代のアトムの立場の象徴。ロボットたちの憧れのヒーローながら、その存在はすでに神話、という設定です。

 休憩時間にも、役者さんたちはそれぞれにストレッチをしたり、せりふをおさらいしたり、のどをいたわるためにうがいをしたり、とそれぞれの課題に取り組みます。ムードは和やかながら、みなさんそれぞれに真剣。


 この後、数度の短い休憩を挟みながらも、お稽古はPM 8:00まで続きます…!

 お稽古の後の貴重な時間をいただいて、主要キャストの中から、3人の方々にお話を伺いました。


役者さんにインタビュー

神楽坂町子かぐらざかまちこ役 椿千代つばきちよさん

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Q:神楽坂町子って、どんな役なのでしょう?
 神楽坂町子は、心に信念を秘めてるんですが、外見はクールな女性だと思っています。でも、言ってみれば怪人で、科学庁長官を務めるほどの人物なのに、身の回りに人間をおかず、ロボットばかりと暮らしている、変人です。お茶の水博士の最後の弟子、という設定ですよね。博士のことももちろん、尊敬していて、ロボットたちをものすごく愛していて…。アトムから抜き取った心について、秘密を抱えていますし…。自分のお屋敷に、実はたいへんなものを隠している。この劇のキー・パーソンじゃないかな。

Q:主人公・トキオとのかかわりは?
 主人公のトキオについては、息子のような思いで、愛していますが、ベタベタした関係ではなく、一定の距離はおいている、と思います。

Q:ご自身のキャリアの中で、特殊な役どころだと思いますが…
 今までのキャリアでは、姫やヒロインの役どころが多かったのですが、今回は少しテンションを抑えた、声を張らずに出す役です。初めて挑戦するタイプの役で、どきどきしています。手塚治虫の原作などを参考にしようにも、この舞台のために作られた役ですし…。横内先生に言われたヒントをたよりに、役作りをしていくしかないですね。甲斐先生の音楽に導かれてもいます。
 多少偏屈なところもある役ですが、ロボットたちを愛していて、また、暴力では絶対に問題が解決しない、という信念を持っている人物です。彼女の歌である、「傷つけあう人々に、許しあうことを思い出させて」というメッセージをこめた歌は、この作品のメインの歌ともいえます。聴きどころでもあるので、がんばらないと、と思っています。


●アズリ役 上野哲也さん

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Q:アズリは一言で言うと、どんなロボットでしょうか。
 とにかく優しいロボット、かな。人間も、ロボットも、周りの人々すべてを信じているキャラクターです。アズリは、信じることで、いろいろな問題を乗り越えていくんです。
 アズリのせりふに、病院の先生たちの仕事について、「すばらしい仕事だ!」っていうせりふがあるのですが、それが大好きです。人間を尊敬して、信頼しているアズリらしいせりふですね。
 役を演じることって、演じながら自分自身と向き合うことでもあると思っています。自分の中にも、アズリのような部分があって、そこを前面に出していくような形です。自分では、夢を思う時の気持ちが、アズリらしいかな、と思っています。夢を思うって、ちょっと恥ずかしいですけど…。自分が夢について考えるときのテンションや気持ちを思い出して、それを出していくようにしています。

Q:原作「鉄腕アトム」は参考にしましたか?
 「鉄腕アトム」には、アトムの葛藤かっとうがよく描かれますよね。人間に誤解されて、涙を流したり。そういう場面を見ると、人間って残酷だなあ、と思いますね。アトムのような、純粋な存在って、人間の社会に生きていこうとすると、どうしても葛藤があると思います。

Q:ほかのロボットたちからも友達として慕われているアズリですが、ダッタンやトキオとは、どんな風に出会ったんだと思いますか?
 僕の中の想像ですが、ダッタンはあのとおり、不器用なロボットなんです。元は病院の警備員ロボットだったんだけど、病院に来る人とトラブルもあったかもしれないですよね。それで落ち込んでいたダッタンに、アズリのほうから声をかけたんじゃないかな。はじめは仲良く出来ないんだけど、アズリは放っておけなくて、なんどか声をかけて。トキオは音楽が好きなロボットですから、歌でも歌いながらああいう明るい感じで自転車か何かに乗っていて、道で出会ったりして。アズリは、どちらかというと哲学的なロボットで、考えることが得意ですから、トキオのような行動力のあるロボットと出会って、意気投合できたんじゃないでしょうか。

Q:劇の中で、人間のマリアに恋をする役ですが。
 人間であるマリアが自分のことを「哀れなロボット!」と叫んだのが、衝撃だったんでしょうね。アズリにとって、人間は立場が一段高い存在。そんな人間も、自分たちと同じ悩みを抱えているんだな、って思って。その驚きが恋のきっかけではないでしょうか。

Q:今回の舞台への意気込みを。
 前回の『火の鳥』に引き続き、手塚治虫先生の思いに乗り、それを表現することが出来るのは、とっても幸せだと思っています。


●トキオ役 三重野葵さん

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Q:『火の鳥』では我王がおうを演じられましたね。トキオと我王を比べて、どうですか?
  どちらも難しい役だと思います。我王は、確かに大変偏屈なキャラクターですが、キャラクターがはっきりしているので、入りやすかったです。いろいろなことを想像して、膨らませていくことが出来ました。トキオは、決して特殊なキャラクターじゃない分、それが難しい。自分と似ていたり、自分の心情は沿わせやすいのですが、あまり素の自分が見えてもだめですよね。そのバランスが難しいです。

Q:立ち稽古中、休憩の時にもムードメーカーのように動かれていた三重野さんが印象的でした。
  主役、という立場もあるけれど、やっぱりトキオという役だから、そのように振舞ってしまうところもあると思います。トキオもそんなやつですし。
  我王の時も、主役としてその場をまとめなくてはいけない立場ではあったのですが、ああいうキャラクターだから、なんとなく心のガードが高くなっていたような気がします。一方でトキオであれば、ノーガードで稽古場に来ることができます。
  ただ、悩みがあったりするときも、トキオの役をやっているときはテンションをあげていかなくてはいけないので、そこはつらいですね。悩みを見せられなくて。我王はかえって、それも役作りに生かせるのですが。
  トキオにはある秘密があって、それがトキオの心を決めているところがあります。彼自身、「なぜ、こんな気持ちになるのだろう?」と自問するんです。彼の心の秘密がよく現れているせりふで、僕が好きなせりふに、「話せばわかるよ」というせりふがあるんです。さりげなく言われるんだけど、とっても重要ですよね。ダッタンのような人間に拒否感をもったロボットとは違って、人間とも「話せばわかる」と思っている。そんなトキオの性格をよく現していると思います。
  でも、彼自身はどうして自分がそう思うのか、よく分からないでいるのですが、ある出来事があることで、「これか!」と悟る。

Q:トキオの持つその「心」って、どんなものだと考えますか?
  僕の想像では、人間誰もが生まれたときに持っている心だと思っています。人間が決して忘れてはいけない、本質というか。それが自分にも備わっていると知ったトキオは、とっても嬉しかったのではないでしょうか。これは、間違いのない心だ、って。
  劇中で、トキオは友人を失うのですが、彼はそれをも乗り越えて、この物語の後も幸せに生きていくんだろうな、と思います。『火の鳥』の我王の心に速魚(はやめ)が残ったように、彼の心にも、失った友人たちがちゃんと残っていくんだろうな、と思います。
  ラストでみなで歌う歌に、そんなメッセージがこめられていますので、ぜひ聞いてください。この歌がどう響くかで、この劇全体がハッピーエンドだったのか、そうでなくなるのかがかかっている、ともいえる曲です。



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