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オススメデゴンス!:2010年3月号「そよ風さん」

 いよいよ3月! だんだん暖かくなって、外にあそびにいくのも楽しくなってきました!

虫ん坊3月号の「オススメデゴンス」では、春風をイメージしたヒロインの活躍ものをひとつ。戦直後の混乱する東京で悪人にさらわれたり、不良に絡まれたりと大冒険する美少女のお話は、今読むとずいぶん新鮮かつ、意外に山あり谷ありで面白い! たくましく生きる二人のヒロインは、この春から上京する新・東京人たちの心のささえにもなる…かも?

 

解説

そよ風さんが連れ去られるシーンに出てくる、「本数が変わる煙突」は東京都北千住に当時実在した。『リボンの騎士』に登場したナイロン卿がそよ風さんが上京する電車の中のシーンでエキストラ出演している。



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読みどころ:

 緑豊かな山の奥にある源町に住む少女、千代子ことそよ風さんは、八百年来の犬猿の仲の平町の少年、三太と友達になるのですが、回りの人々はそんな彼らを引き離そうとします(『そよ風さん』)。
  東京に出て、日由子ことひまわりさんと同じ学校へ行くことになったそよ風さんは、悪人の計略にはまり、連れ去られてしまいます。進学のために上京していた三太は、ひまわりさんと一緒に連れ去られたそよ風さんを探します(『ひまわりさん』)。

 

オススメデゴンス!:2010年3月号「そよ風さん」

オススメデゴンス!:2010年3月号「そよ風さん」


 終戦直後の日本を舞台に、様々な災難に巻き込まれていくそよ風さんのお話もまた、ハラハラドキドキしどうしの大冒険には違いありません。この作品で戦う女の子はもう一人の主人公、柔道の得意なひまわりさんです。主人公のそよ風さんは、ねたまれても憎まれても敵と対決せず、あくまで不抵抗、不服従。挙句どんな悪人でも改心させてしまいます。

 

オススメデゴンス!:2010年3月号「そよ風さん」


 優しさに勝る武器はなし。この「強さ」は、ある意味無敵かもしれません。とはいえ、この作品の悪人たちは一様に切なく、終戦直後の厳しさゆえに悪人に身を落とした悲哀が感じられます。そよ風さんが彼らを「ほんとはいい人よ」と言うのは、ただ真実を見抜いているだけなのかも知れません。

 

オススメデゴンス!:2010年3月号「そよ風さん」

 ところでこのそよ風さんが子どもたちや動物を集めてお話を語り聞かせるシーン、なんとも心が癒されます。小さなかえるを手のひらにちょこんと乗せ、「ねえかえるさん、何かいいお話してよ」と話しかけるそよ風さんの優しい横顔は、どんなに心がすさんでいても癒されること間違いなし。この優しさにひまわりさんや三太も惹きつけられるのでしょう。


 ごく短い作品ですが、不幸な境遇にもめげずに強く生き抜く優しく清らかな少女の物語『そよ風さん』は、読めばきっと優しい心になれる、そんな作品です。

 

 

オススメデゴンス!:2010年3月号「そよ風さん」






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