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ストーリー

終戦を迎えたとはいえ、まだ戦争の記憶も新しかったであろう1954年の10月に発表されたこの作品には、戦時下にある未来の日本が描かれています。
戦闘機に乗っていた兄の正太を亡くした一ノ谷良一は、自らも航空兵学校を卒業、空軍に入ります。兄を撃墜した優秀な敵機「アンタレス」を撃って兄の敵を討とうと志す良一は、丹下という隻腕の上官に戦闘機の操縦を教え込まれ、ついに「アンタレス」と互角に戦えるまでになります。
航空兵を主人公にし、戦争をテーマにしたこの作品にも、手塚治虫がさまざまな作品で一貫して訴え続けていた反戦のテーマが色濃く表れています。主人公の一ノ谷良一一飛曹、そのライバルの「アンタレス」を操縦するルノー中尉、一ノ谷の上官である丹下もまた、兵隊でありながら戦いを厭い、平和を望む人間の一人として描かれています。
国同士が戦争をしているという、ただそれだけのために、殺しあわなければならない…そんな運命がどれほど理不尽か。これほどの重いテーマをきわめて平易に、親しみやすく、時には息抜きのギャグもはさんで描き出したこの作品は、そのテーマ性だけでも充分に味わい深いのですが、主人公の一ノ谷良一をあのアトムが演じていることもひとつの見どころです。戦いを厭いながらも、その中に身を投じなければならない青年を演じるには、まさにぴったりの役どころともいえるでしょう。

解説

1954/10 「冒険王」付録(秋田書店) 掲載

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