■虫ん坊 2006 年 12 月号でもご紹介した「手塚治虫Oマガジン」。 1月4日から本格始動、著名人編集によるバージョンの販売が始まっています。
  ところで皆さんは、雑誌や本がどのようにして作られているか、ご存知ですか? この「手塚治虫 O マガジン」は完全受注生産。しかも 4 月からはお客様ひとりひとりが編集可能となり、注文の数だけのバージョンの本を作ってゆきます。一冊一冊内容の違う「手塚治虫 O マガジン」が、いったいどのように作られるのか、取材してみました。

 

↑普通のビルの階段を上ります。

 ここは都内某所、出版社や印刷所が林立する町の一角に、目指す工場があります。

 普通のビル風のエントランスの中を緊張しながらあがってゆきます。
 一見地味な扉ですが、この先こそが「手塚治虫 O マガジン」の発行にご協力いただいているコンテンツワークス株式会社提携のプリントセンターのオフィスなのです。


 担当の加藤さんのご案内で、早速、工場の中を拝見。印刷は本文からはじめるということで、まずは本文印刷用の機械を拝見しました。


 ちょうど外見は、コンビニのコピー機やオフィスなどで使うプリンターを、大きくしたような感じ。手塚プロのオフィスにあるプリンターを 4 台横に並べたぐらいの大きさです!
↑編集室はとなりの部屋にあります。

 このプリンターが1つのフロアに 6 台稼動しており、 1 台当たりで一時間 1 万枚も印刷できるそうです。ちなみに一日稼働時間は 15 時間を越すということ。印刷物の内容にもよりますが、一日当たりなんと 50 万ページの印刷ができるということです。
 漫画データは、編集室で確認(まちがいがないかページをチェックすること)後、OK が出てからの印刷となります。
 なお、完全受注生産の「手塚治虫Oマガジン」の場合は、事前に漫画の元データを印刷用データに変換して保管しておき、
お客様から注文を受けたら、その情報に基づいて印刷システム内で自動的に編集、印刷されます。

 OK が出たデータは、まずプリンター用のパソコンで、プリンター専用データに変換されます。その後、データをプリンターへ送信。ここまではプリンター横のパソコンで行われます。
 データは綴じ側を寄せて 3 箇所の余白を作ります。余白部分はあとでカットされる部分となります。

 一方、プリンターのほうでは、印刷に使う本文用紙の設定を行います。間違いがないよう、プリンター側の情報と、プリンターにデータを送るパソコンとの情報が一致しないと、印刷が始まらないようになっています。


パソコン・プリンターの設定が終わったら、いよいよ印刷! 今回は「手塚治虫 O マガジン」の著名人編集版、「時東ぁみ編」「手塚眞編」「小松左京編」を刷ってもらいました。

 用紙はすべて重ねられますが、一冊ごとに仕分けがしやすいよう、区切り目に別の色の紙がヘッダとして挿入されます。

 出来上がった紙は、ベタ抜け等の不備がないかをチェックします。使う用紙によっては、ベタ抜けがでたりすることもあるそうですが、今回「手塚治虫Oマガジン」に使用する紙は、そのような印刷トラブルが少ない種類の紙を選んでいます。

 

 「本文用の機械が大きくて、表紙のラインはとなりのビルになります」ということで、今度はとなりのビルへ。
  先ほど本文用のプリンターを見てしまったせいか、思ったより小さい! と感じるカラー印刷機。こちらはほぼコンビニなどのコピー機と同じぐらいの大きさですが、データをためておくサーバーがついたタイプの機械です。もちろん、印刷はハイクオリティー。

 こちらも基本的な操作はモノクロのときと同じ。表紙用のデータをパソコンからプリンターに送信します。ただし、こちらのプリンターは用紙のデータを元データに持たないので、用紙の厚みの設定をプリンター側でする必要があります。
  フルカラー印刷された表紙は、熱による紙の圧縮率の関係で、刷り上り直後には反りがでますので、手で反りを軽く直し、汚れやミスプリントがないかどうかチェックします。表紙は本の顔となる部分。このチェックはとりわけ入念にされます。

  表紙がすべて刷り終わったら、いよいよ製本に入ります! 表紙と本文用紙は製本フロアに持ち込まれます。

  2タイプある製本機のうち、「手塚治虫 O マガジン」は一冊一冊の製本となるため、大量製本タイプではない機械が使われます。 1 冊 1 冊を手作業でセッティングするため、担当者の方は職人的スキルが求められるそう。


  機械にはなんと! メルモちゃんの絵が貼ってありました! 現場の和みアイテムになっているようです。


  表紙と本文が間違いなく対応するものになっているかどうかは、もちろん、伝票や本文用紙についているヘッダ用紙で確認されるのですが、オンデマンド受注を受ける際にはさらにバーコードによる確認を行われるそうです。

  きっちりそろえられた本文用紙は、専用の定規で厚みを測られ、その厚みが機械に入力されます。担当者の方はいかにも職人気質、といった風情の無口そうな雰囲気で、とても頼もしい感じです。


 その後、本文用紙と表紙がセットされ、機械内で糊付けが行われます。機械には窓が 4 つついていて、中でどのように本が流れていくかが分かります。
  使われる糊は 180 ℃に熱せられるということ。それでも、糊付けされ、のどを折られた本が取り出し口から出てくるころには、きちんと冷えて固まっています。ものの 3 秒で冷えるということで、すぐに触らなければ安全だそうです。

 製本を終えた本は、断裁機へ。こちらも一冊ずつ手作業で切っていきます。 こちらも非常に繊細な作業。少しでもずれて断ち切ると余白になったり、絵が切れてしまったりするので慎重を極めます。この作業にもやはり製本と同じく熟練が必要だそうです。


 最後に検品して終了です!

 さて、断裁が終わった本がこちら! 出来立てほやほや! 気のせいかあったかいような…。出来上がった本は、工場から直送で、みなさんのお手元に送られます。
 ご案内してくださったのは営業部主任の加藤さん。ありがとうございました!

●「手塚治虫Oマガジン」について、詳しくはこちらへ!

  現在著名人編集版「わたしが選んだ手塚治虫マンガエピソード」として、「森下千里編」「蝶野正洋編」「手塚眞編」「時東ぁみ編」「小松左京編」が発売中です。