イラスト:沙村広明

 いよいよ発売が間近に迫った、 PS 2版の3Dアクションゲーム『どろろ』。
手塚マンガ時代劇の代表作として、根強い人気のある『どろろ』のゲーム化とあって、首を長くしてこの日を待っていた、という方も多いのではないでしょうか。

 今回は、そんな「発売まで待てない!」という方々のために、この PS 2版『どろろ』を大特集します!

 発売日: 2004/09/09  (予定)
 価格: 7,140 円(税込)
 アドレス: http://dororo.sega.jp/

    今回のゲーム版『どろろ』は、原作の世界観を保ちつつ、ゲームとして楽しめる工夫が凝らされています。プレイヤーは百鬼丸、あるいはどろろとなって、襲いかかる妖怪たちを次々と倒していきます(画面は全て、開発中のものです)。


↑百鬼丸の生い立ちもプロローグで紹介されます。(イラスト:沙村広明)


↑プレイヤーは百鬼丸、時にはどろろとなり、妖怪達と戦います。

↑倒した妖怪から百鬼丸の失われた「体」をとりもどす、という原作の設定ももちろん健在。こちらは左足を取り戻すシーン。義足が外れています。

  また、キャラクターや舞台のデザインには、現在活躍するアーティストが参加。キャラクターデザインは『無限の住人』を「月刊アフタヌーン」にて連載中の沙村広明氏、独特の雰囲気のある魔神や妖怪のデザインに『アニマトリックス』などで活躍するアニメーター・前田真宏氏、そして題字、美術設定にはデザイナー・監督の雨宮慶太氏が、手塚版とはまた違った魅力に満ちた『どろろ』を創り出しています。


↑原作にも登場した九尾の狐。他にも「金小僧」「四化入道」「百面不動」等、『どろろ』独特の妖怪達を前田氏がデザインしています。

↑沙村氏のキャラクターデザインによる「賽の目の三郎太」。ゲームの中ではこんな感じに。

↑雨宮氏による美術設定・題字設定。建物や小道具の独特の雰囲気を創り出しています。こちらのシーンに見える「掛け軸」の文字も雨宮氏によるもの。

  ゲームの中に登場するキャラクターたちは、アニメーションなどとも違った、とてもリアルな動きで活躍しています。こういった動きには、「モーションキャプチャー」という技術が使われています。今回はそのモーションキャプチャーの撮影現場を取材しました(モーションキャプチャースタジオ 株式会社スタジオイブキ)。

  モーションキャプチャーとは、もともと、医療用に開発され、関節などを治療する際に、動き方を見てどこが悪いのかを診断するためのシステムだったのですが、人間の動作などをとてもリアルにデジタルデータにする事ができることから、エンターテインメントに応用され、現在では広くゲームを中心に CG アニメーションなどに活用されています。医療用と言うことで、動作だけをみて、知っている人が見れば、動きの癖などからその人が誰なのかが分かるぐらいに精密に、デジタルのデータにする事ができます。

←モーションキャプチャーでは、関節ごとの動きを精密にデータにします。
写真では骨組みだけですが、動きを見るととてもリアルです。こんな緑の線だけでも人間に見えてくるから、不思議。

  モーションキャプチャーの技術が日本に導入されたのは、 1995 年ごろ。システム自体はもっと前からあったのですが、日本に導入され、ゲームなどのキャラクターの動きに応用されたのはごく最近だそうです。

  始めに専用のビデオで、数パターンのポーズを撮影してから、白い舞台のような場所で、役者さんが実際に一つ一つのシーンを演じていきます。それを複数のカメラで取り、モニターでスタッフがチェック。このあたりはテレビドラマの収録などのイメージとあまり変わりませんが、一つ奇妙なのは、役者さんが皆、白い小さなボールの付いた服を着ていること。また、舞台にはセットなどはなにも置かれず、照明も赤い光のみが使われています。

←舞台は白いバックに赤い照明のみのシンプルなもの。その中で白いボールを付けた役者さん達が演技をしていきます。

 この白いボールは、「マーカー」と呼ばれ、役者さんの関節ごとにつけられており、全身で約48個が使われています。この白いボールが、舞台に設置された赤い照明の光を反射して光り、その光の点の動きや位置を読み取ることによって、役者さんの動きをデータ化していきます。

 面白いのは、馬に乗ったり、扉を開けたりするシーン。扉などは本物を使わずに、枠組みだけの専用のセットを作って演技をします。また、槍や刀などもおもちゃの刀やただの棒でもかまわないそうです。動きのみをデータにしていくので、衣装や小道具はいたってシンプルで大丈夫なのです。

 なお、扉や槍などにも「マーカー」がつけられ、位置や動きを収集できるようにしてあります。


↑ 靴などにも白いボールが付いています。

↑画面奥の黒い枠が、扉になります。他にも床や陣笠など、面のデータも拾えます。面の場合は、役者さんの動きが隠れてしまわないよう、荒い網目状のものを使います。

 こうして収集した点のデータから、関節の位置を計算し、実際に人間がどうやって動いていたのかというデータを作ります。あらかじめ撮影しておいた色々なポーズから、役者さんの身長などのデータを設定しておき、それにあわせて点のデータを流し込むと、役者さんの身長にあわせた動きだけのデータが出来上がります。

 このデータを元に、CGキャラクターをつけていき、ゲームの画面が完成するのです。役者さんの身長と、キャラクターの身長が違う場合、この過程で調整していきますが、これがなかなかに難しく、場面によっては、役者さんの視線や動き、位置などを、キャラクターの身長データにあわせて変更したりもするそうです。


↑先ほどの緑のラインに、簡単に肉付けをしたデータ(左)と、元となった画像データ(右)

  リアルな演技を付けられたCGの映像に、声や音が吹き込まれると、ゲーム内のムービーシーンが出来上がります。ちょっとしたシーンの動きにも、実際の役者さんの演技するリアルな動きが使われていますので、ゲームをやる際には是非、ちょっと注目して見てみてくださいね。