「YAWARA!」や「MASTERキートン」などでおなじみの漫画家・浦沢直樹先生が、「鉄腕アトム・地上最大のロボット」のキャラクター設定をもとに、新たな作品を連載することになり、手塚ファンのみならず、漫画界でも大きな話題をよんでいます。
その作品のタイトルは、「PLUTO(プルートウ)」。

「鉄腕アトム」のファンであれば、「地上最大のロボット」が人気ナンバー1のエピソードであることはご存じでしょう。そして「プルートウ」と聞いただけで、あの2本の巨大な角とたくましい胸板を持った、独特なスタイルがすぐに思い浮かぶのではと思います。
 作品中に登場するや、その強大なパワーと、無骨さの中に優しさを秘めたハート、そしてボラーとの戦いにおける悲劇的な最期によって"悪役ロボット"以上の人気を獲得したロボット…それがプルートウでした。このプルートウの名前を冠した作品が、果たしてどのような構想の中で誕生することになったのか、読者としては非常に気になるところ。
 そこで今回、作者の浦沢先生に、特別に「虫ん坊」の読者の皆さんに向けてのコメントをお願いしたところ、快くいただくことができました!





「鉄腕アトム・地上最大のロボット」は、私の原初体験の漫画です。4〜5歳の頃、光文社カッパコミクス版の本が手元にあり、くりかえしくりかえし読んでいたものです。
 今年2003年は鉄腕アトム生誕の年。当初、アトム生誕にあわせた企画がたくさん予定されているが、何かできないだろうかというお話があったのですが、なにしろあのアトムに関することですので、軽々にすませてはいけないというのが私の最初の答えでした。
 そしてまるで他人事のように
「どうせやるなら、あの<地上最大のロボット>に今の時代に真っ向から挑んでみるとかね」と口走ってしまったのです。
 するとまわりの反応がすごい。異様に盛りあがるのです。私自身も気がついてみると気持ちが非常に高揚しており、
「あ・・・あの、これもしも実現するなら自分でやりたいな・・・」などと言い出してしまったのです。しかし、なにしろあの「鉄腕アトム」のあの<地上最大のロボット>ですから、そんな絵空事が実現するなどとはまったく思っていませんでした。
 ところがあの異様な盛りあがりはおさまるどころか、その熱気はプロデュースの長崎尚志氏、小学館の片寄聰氏に波及し、ついには手塚プロダクション、そして手塚眞氏に話を伝えるという事態になったのです。
 この企画をお話ししてからの手塚眞氏の熟考されている期間は、氏が父上の作品、「鉄腕アトム」というものをいかに大切にされているか心に伝わってくる期間でした。
そしてまさかのGOサインをいただいた時、漫画を描きはじめて以来、最高に身のしまる思いをしました。
 今回の「PLUTO」は、まさに手塚漫画で育ったアトムの子達が、今の時代めずらしいぐらいの純粋な気持ちで実現させた企画です。同じくアトムの子である読者の皆さんに満足いただけるよう、一生懸命描こうと思っておりますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

                                     2003年8月 浦沢直樹


 この「PLUTO」の連載は、小学館の「ビッグコミックオリジナル」の9月5日発売号よりスタートしますので、お見逃しなく!なお「ビッグコミックオリジナル」は隔週誌ですが、「PLUTO」の掲載は隔号なので、月1回の連載となります。
 果たして、あの原作が浦沢先生の手によってどのように料理されるのか・・・?とにかくすべてが謎めいているこの作品、今後の展開に期待して読み続けていきましょう!